積算価格
概要
積算価格とは、不動産鑑定評価手法の一つである原価法によって算出される価格で、対象不動産を再調達した場合にかかる費用(再調達原価)から、時間の経過による減価(減価修正)を差し引いて算出される価格です。主に土地の評価と建物の評価を別々に行い、合算して求められます。
積算価格の基本概念と計算方法
積算価格は、不動産を「もし今、同じものを新しく作るとしたらいくら費用がかかるか」という視点からその価値を評価する手法です。具体的には、以下の手順で算出されます。
1.土地の評価:土地については、更地を対象とし、その土地が持つ潜在的な価値(周辺の類似土地の取引事例や、路線価などを参考にします)を評価します。
2.建物の評価:建物については、同じ建物を新築した場合にかかる費用(再調達原価)を算出します。この再調達原価には、建物の建築費だけでなく、設計費、付帯工事費(外構など)、利息、事業者の適正な利益なども含まれます。
3.減価修正:算出された建物の再調達原価から、時間の経過に伴う価値の減少(減価)を差し引きます。減価には、物理的な老朽化(経年劣化)、機能的な陳腐化(設計や設備の古さ)、経済的な減価(周辺環境の変化による価値の低下)などが考慮されます。
◯積算価格=土地の価格+(建物の再調達原価-減価修正額)
この積算価格は、不動産の担保価値を評価する際によく用いられる手法です。特に金融機関が融資を行う際に、万が一、債務不履行が発生した場合に物件を売却して資金を回収できるかという観点から、この積算価格を重視する傾向があります。
積算価格と収益性評価の違い
積算価格は、建物の構造や築年数、設備といった物理的な側面や再調達コストに焦点を当てた評価であり、その不動産が将来どれくらいの収益を生み出すかという収益性は直接考慮されません。この点が、収益還元法との大きな違いです。
例えば、築年数が経過し老朽化したアパートであっても、立地が良く賃貸需要が高いエリアであれば、収益還元法では高い評価になる可能性があります。しかし、積算価格で評価すると、建物の減価修正が大きく、低い価格となる傾向があります。逆に、新築で高コストな建物であっても、賃貸需要が見込めない立地であれば、積算価格は高くても、収益還元法では低い評価となるでしょう。
当社フィリアコーポレーションが扱う空き家や訳アリ不動産(再建築不可、共有持分、長屋・連棟など)の場合、積算価格と収益還元法の両面から価値を判断することが重要です。例えば、長屋の切り離しが困難で単独での利用が難しい物件や、再建築が難しい土地にある物件は、積算価格が低く評価されがちです。しかし、当社のような専門業者は、そうした物件でも独自の再生ノウハウや出口戦略(例えば、複数の物件を一体的に再生する、特殊な賃貸ニーズに対応するなど)を持つことで、収益性を引き出し、通常の市場では評価されにくい物件でも買取を可能にしています。
実務での積算価格の活用と留意点
積算価格は、特に土地の価値が高い場合や、建物がまだ新しく減価が少ない場合に、その評価がより重視される傾向があります。また、金融機関が融資の際に担保評価として重視するため、不動産投資家がローンを組む上で、積算価格が高い物件は融資を受けやすいというメリットがあります。
しかし、積算価格だけで不動産の価値を判断するのは危険です。特に、老朽化した空き家や、法的・物理的な制約を抱える不動産(再建築不可、接道義務違反など)の場合、積算価格が非常に低い、あるいはほとんど価値がないと判断されることもあります。これは、建物の減価修正が大きく、さらに再建築の制約があるために土地の利用価値も限定されるためです。
当社がお客様から空き家を買い取る際、積算価格が市場価値を反映していないケースも多々あります。例えば、相続登記未了で放置された空き家や、境界非明示で隣地とのトラブルを抱えている物件など、一般的な積算価格では評価しきれない「負の側面」が存在します。当社は、そうした複雑な背景を持つ不動産に対しても、1000件以上の相談実績と現場の知見に基づき、適正な買取価格を提示しています。
売主様にとっては、積算価格だけでは判断できない、複雑な不動産の問題を解決したいというニーズがあるものです。当社は、契約不適合責任の免除、残置物の処理不要、隣人交渉不要といった形で、売主様の負担を軽減し、スムーズな売却をサポートします。
よくある質問
Q
積算価格と担保評価額は同じですか?
Q
積算価格が低いと、不動産投資は不利になりますか?
Q
積算価格は自分で計算できますか?