減価償却
概要
減価償却とは、建物や機械設備などの時間の経過とともに価値が減少していく固定資産の取得費用を、一度に経費として計上するのではなく、耐用年数に応じて毎年少しずつ経費として配分していく会計処理のことです。これにより、正確な期間損益を計算し、適切な税額を算出することが可能になります。特に不動産投資においては、節税対策として非常に重要な概念です。
減価償却の基本的な考え方と目的
減価償却は、企業の会計や個人の確定申告において、固定資産の費用を適切に配分するための会計上の概念です。例えば、1億円のオフィスビルを購入した場合、その1億円を初年度に全額経費として計上してしまうと、その年の利益が大幅に減少し、翌年以降の利益が不自然に多くなってしまいます。これでは、毎年の正確な収益状況を把握できません。
そこで、減価償却という考え方が導入されます。建物などの固定資産は、長期間にわたって使用され、その間ずっと収益を生み出すと考えられます。そのため、取得にかかった費用も、その収益を生み出す期間(耐用年数)にわたって、少しずつ費用として計上していくのが妥当であるという考え方に基づいています。
減価償却の主な目的は以下の通りです。
・期間損益の適正化:毎年少しずつ費用を計上することで、その年の収益と費用を正確に対応させ、企業の経営成績をより実態に即して把握できるようになります。
・課税の公平性:固定資産の取得費用を一度に計上することを認めると、初年度の税負担が極端に軽くなるなど、会計期間ごとの課税に不公平が生じる可能性があります。減価償却により、税負担を耐用年数にわたって平準化し、公平な課税を実現します。
・節税効果:特に不動産投資においては、減価償却費は実際に現金が出ていかない「非資金費用」であるにもかかわらず、所得から差し引くことができるため、所得税や住民税などの税負担を軽減する効果があります。
減価償却の対象となる資産と計算方法
減価償却の対象となる資産は、時間の経過とともに価値が減少する「減価償却資産」です。具体的には、建物、建物付属設備(電気設備、給排水設備など)、構築物(庭園設備、駐車場など)、機械装置、車両運搬具、工具器具備品などが該当します。土地は時間の経過によって価値が減少するという考え方をしないため、減価償却の対象にはなりません。
減価償却費の計算方法には、「定額法」と「定率法」の2種類があります。
・定額法:毎年一定額を減価償却費として計上する方法です。資産の取得価格に償却率(耐用年数に応じて定められた割合)を乗じて計算します。毎年同じ金額を償却するため、計算がシンプルで、安定した減価償却費を計上できます。減価償却費=取得価格×定額法の償却率
・定率法:未償却残高(取得価格からこれまでの減価償却費を差し引いた残りの金額)に一定率を乗じて計算する方法です。取得当初は多額の減価償却費が計上され、年数が経つにつれて償却費が減少していく特徴があります。早期に多額の経費を計上したい場合に有利な方法です。減価償却費=未償却残高×定率法の償却率
一般的に、個人事業主の建物については定額法が適用され、建物付属設備や事業用の構築物などには定率法も選択可能です。法人の場合は、基本的に建物は定額法、それ以外の資産は定率法が原則となります。
不動産投資における減価償却の重要性
不動産投資において、減価償却は「最大かつ現金支出を伴わない経費」として非常に重要な役割を果たします。
例えば、賃貸マンションを購入して家賃収入を得ている場合、得られた家賃収入から管理費、修繕費、固定資産税、ローンの金利などの費用を差し引いて、不動産所得を計算します。この際に、減価償却費も経費として計上できるため、課税対象となる所得を圧縮し、結果として所得税や住民税の負担を軽減する効果があるのです。
特に、法定耐用年数が短い木造アパートなどは、短期間で多額の減価償却費を計上できるため、築古の木造アパートに投資し、購入後数年間で集中的に減価償却費を計上して節税効果を狙うという戦略も存在します。これにより、家賃収入は現金で得ながらも、税務上は赤字(あるいは低い黒字)となり、他の所得(給与所得など)と合算して課税所得全体を減らす損益通算のメリットも享受できる場合があります。
しかし、減価償却費はあくまで会計上の費用であり、実際のキャッシュフローを伴わないため、見かけ上の利益と手元に残る現金が異なる点には注意が必要です。また、減価償却が進むと、将来的に売却する際に譲渡所得の計算において、取得費が低く評価されるため、売却益に対する税金が高くなる可能性もあります(減価償却の逆効果)。
当社フィリアコーポレーションは、築古の空き家や再建築不可、共有持分といった権利関係に課題のある不動産の買取を専門としています。これらの物件は、一般的に市場での売却が難しく、減価償却が終わっている、あるいは減価償却が進んでいるものも少なくありません。当社は、机上の理論だけでなく、1,000件以上の相談・査定実績から得た実務に基づいたリアルな知見を活かし、そうした物件の価値を適正に評価し、売主様の負担を軽減しながらスムーズな売却を支援しています。例えば、減価償却が終わり、簿価が低い物件でも、現状有姿での買取や、残置物処理不要、隣人交渉不要といった売主様に寄り添う形で、最適な解決策を提案しています。
よくある質問
Q
減価償却費の計算に必要な耐用年数とは何ですか?
Q
減価償却が終わった不動産は売却しにくくなりますか?
Q
減価償却費が多いほど税金が安くなるというのは本当ですか?