空家等対策特別措置法(空き家特措法)

概要

空家等対策の推進に関する特別措置法(一般に空き家特措法と略称)は、管理不全な空き家が周辺に悪影響を及ぼすことを防ぐための法律です。2015年5月に全面施行され、適切に管理されていない危険な空き家を「特定空家等」に指定し、所有者への指導・勧告や強制撤去など行政による措置を可能にしました。この法律により放置空き家に対する監視と是正が強化され、倒壊や衛生被害の恐れがある住宅に対して自治体が積極的に対策を講じられるようになっています。

空き家増加の背景と法律制定の目的

老朽化した空き家の玄関先。適切に管理されず放置された空き家は景観を損ね、防犯上も問題となる。さらに倒壊や害虫発生のリスクが高まるため、行政による是正の対象となりうる。
日本では少子高齢化や人口減少に伴い、住宅が使われないまま残される空き家が年々増加してきました。総務省の統計では2018年時点で全国の空き家率は13.6%と過去最高を記録し、今後も上昇が予想されています。適切に管理された空き家であれば大きな問題はありませんが、所有者が放置したまま老朽化が進んだ廃墟同然の空き家が各地で社会問題化しました。放置空き家は倒壊・火災など安全面の危険や、雑草繁茂・害虫発生・不法投棄・悪臭の発生といった衛生面・環境面の問題を引き起こし、近隣住民に深刻な被害を与えるケースがあります。そうした背景から、国は空き家問題に対処するための法律整備に乗り出し、2015年に施行されたのが空家等対策特別措置法です。この法律の目的は、放置空き家への適切な対策を推進し、良好な生活環境を守ることにあります。自治体(市区町村)が主体となって地域の空き家実態を把握し、必要に応じて所有者に対し措置を講じる権限が与えられました。

特定空家等の指定と行政による措置

空家等対策特別措置法では、行政が対処すべき危険な空き家を**「特定空家等」として定義しています。それは「放置すれば倒壊など保安上危険となる恐れがある状態」「著しく衛生上有害となる恐れがある状態」「適切な管理が行われず著しく景観を損なっている状態」「その他周辺の生活環境保全上放置不適切な状態」にある空き家等を指します。要するに、壊れかけていたりゴミだらけで不衛生だったりといった深刻な放置空き家が指定の対象です。自治体は調査のうえ空き家が特定空家等に該当すると認めた場合、所有者に対して助言や指導を行い、自主的な改善(修繕・撤去・清掃など)を促します。それでも改善されない場合は勧告**・命令と段階を踏んで強制力を強め、最終的には行政代執行による強制撤去も可能となっています。
特定空家に認定され勧告が出されると、その空き家が建っている土地について適用されていた固定資産税の住宅用地特例(更地に比べ税額が1/6に軽減される措置)が解除されます。その結果、翌年度から固定資産税が最大で6倍(都市計画税も最大3倍)に跳ね上がるため、放置を続けることの経済的負担が大きくなります。これは所有者に対する強力なペナルティであり、税負担の面からも撤去・活用を促す仕組みです。命令に違反した場合は50万円以下の過料(罰金)が科される規定もあり、行政の是正命令を無視し続けると財産面でも法的にも大きなリスクを負うことになります。実際に特定空家として強制的に解体された事例も各地で報告されており、空き家所有者にとって他人事ではありません。
なお2023年には本法の改正が行われ、特定空家に至らないまでも管理不全な状態(今後放置すれば特定空家になり得る状態)の空き家を**「管理不全空家」**と新たに位置付け、早期に行政指導できるようにする動きもあります。これにより、これまで以上に早い段階から自治体が空き家対策に乗り出せるよう調整が進められています。総じて、空家等対策特措法は放置空き家への対応を強化することで、地域住民の安全安心な生活環境を守る役割を果たしています。

空き家所有者の責務とフィリアコーポレーションの視点

空き家特措法の施行により、空き家所有者には単に所有しているだけでなく適切に管理する責任が事実上求められるようになりました。法そのものは「管理義務」を直接規定してはいませんが、放置すれば行政介入を受けて不利益を被るため、所有者自らが倒壊等の恐れがないよう維持管理するインセンティブが生まれています。具体的には、定期的な通風・清掃や、劣化箇所の補修、庭木の剪定、防犯対策(人が住んでいないと悟られないよう郵便物の整理や照明の工夫)などが望まれます。遠方に住んで管理が難しい場合は管理代行サービスを利用するなど、なんらかの対応を取ることが大切です。
フィリアコーポレーションでは、空き家の売却相談や活用提案にも力を入れています。実際、当社にご相談いただくお客様の中には「実家を相続したが遠方で管理できず放置してしまっている」といったケースが少なくありません。そのような場合、早めにご相談いただければ空き家が特定空家に指定される前に買取や管理方法のご提案が可能です。特定空家に指定されてしまうと前述の通り固定資産税の優遇がなくなり負担が急増しますし、近隣との関係も悪化しかねません。当社はこれまで、老朽化した空き家でも買取後に解体・更地化して土地として再生するプロジェクトを手掛けてきました。訳あり物件の再生を得意とする当社のノウハウを活かし、空き家問題の解決に貢献できるよう努めています。空き家をお持ちの方は「使わない家だから…」と放置せず、法規制も念頭に入れて活用策を検討されることをおすすめします。

よくある質問

Q

空き家が「特定空家等」に指定されるとどうなりますか?

A

行政から問題視される特定空家等に指定されると、まず所有者は市区町村からその空き家の除却(解体)や修繕、清掃などについて勧告や命令を受ける場合があります。命令に従わず放置すれば、自治体が代執行(強制撤去)して建物を解体し、後から所有者に費用請求することも可能です。また、勧告を受けるとその土地に適用されていた住宅用地の固定資産税軽減(1/6課税)**が解除され、翌年以降の税金が大幅増額(最大で6倍)されます。さらに命令違反時には50万円以下の過料という罰則も科されることがあります。このように特定空家に指定されると経済的負担や法的ペナルティが非常に大きく、早急な対策が必要です。自治体の担当者は所有者と直接連絡を取り合い改善を促しますので、もし通知を受けたら真摯に対応し、必要なら専門業者に相談して速やかに措置を講じるべきです。

Q

空き家を放置すると法律違反になりますか?

A

空き家を所有しているだけで直ちに罰せられるわけではありません。空家特措法でも「空き家を適切に管理せよ」と直接義務付けている条文はありません。しかし、放置が度を越して周囲に悪影響を及ぼす状態(倒壊の危険や衛生被害など)になると行政介入の対象となり、結果的に所有者は法的な制裁を受ける可能性があります。具体的には、特定空家に指定されれば行政から勧告・命令が下り、従わなければ過料(罰金)や強制撤去の措置が取られます。これは実質的に違法状態とみなされるのと同じです。また各自治体では空き家の適正管理に関する条例を定め、所有者の責務を明記している場合もあります。そのため、空き家を長期間放置することは社会的にも法的にも問題があると言えるでしょう。適切な維持管理や利活用の努力を怠ると結果的に違法状態**に陥るリスクが高まるため、空き家を所有する場合は管理を含めた計画を立てることが重要です。

無料査定 LINEで相談する