ホームインスペクション
概要
ホームインスペクションとは、専門家である「建物状況調査士」などが、住宅の劣化状況や不具合の有無、欠陥の可能性などを客観的に調査することです。住宅診断やインスペクションとも呼ばれ、主に中古住宅の売買時において、買主が安心して物件を購入できるよう、また売主が物件の状況を正確に把握してトラブルを未然に防ぐ目的で行われます。
ホームインスペクションの目的と調査内容
ホームインスペクションは、不動産取引、特に中古住宅の売買において、売主と買主の双方にとって非常に重要な役割を果たします。
ホームインスペクションの主な目的
・買主のリスク軽減:中古住宅は新築と異なり、見た目だけではわからない劣化や不具合を抱えていることがあります。ホームインスペクションを行うことで、購入前に建物の状態を把握し、隠れた瑕疵(欠陥)によるリスク(購入後の多額の修繕費用発生など)を軽減できます。これにより、安心して購入判断を下せるようになります。
・売主のトラブル回避:売主は、ホームインスペクションの結果を基に物件の状況を正確に買主に説明できます。これにより、売却後の契約不適合責任(引き渡し後に物件の不具合が見つかった場合の売主の責任)のリスクを低減し、買主とのトラブルを未然に防ぐことができます。
・適正価格の判断:調査結果から、必要な修繕箇所やその費用が明らかになるため、売買価格の交渉材料となったり、物件の適正価格を判断する上での客観的な根拠となります。
・既存住宅売買瑕疵保険の利用:ホームインスペクションの結果、一定の基準を満たせば「既存住宅売買瑕疵保険」に加入できます。この保険は、引き渡し後に発見された欠陥に対する補修費用などをカバーするもので、買主の安心感を高めます。
ホームインスペクションの主な調査内容
ホームインスペクションでは、建物状況調査士(一級建築士や二級建築士の資格を持ち、講習を修了した者)が、目視や簡易な計測機器を用いて、建物の主要な部分を調査します。
・構造躯体:基礎、柱、梁などの構造耐力上主要な部分に、傾き、ひび割れ、腐食、シロアリ被害などがないかを確認します。
・雨水の浸入を防止する部分:屋根、外壁、開口部(窓やドア)などに、雨漏りやひび割れ、シーリングの劣化などがないかを確認します。
・設備:給排水管、電気設備、換気設備などに、機能上の問題がないかを確認します。
・その他:必要に応じて、断熱材の状況、建物の傾き、床下の状況、屋根裏の状況なども調査します。
ただし、ホームインスペクションは非破壊検査が基本であり、壁を剥がしたり床下を深く掘ったりするような詳細な調査は行いません。また、すべての不具合を発見できるわけではないため、あくまで「現時点での建物の状態を客観的に把握する」ためのものと理解しておくことが重要です。
ホームインスペクションの義務化と活用
ホームインスペクションは、その重要性から国土交通省によって制度が整備され、不動産取引における位置づけが強化されています。
宅地建物取引業法による義務化(2018年4月)
2018年4月1日からは、宅地建物取引業法が改正され、不動産会社は中古住宅の売買仲介において、以下の義務を負うことになりました。
1.売主・買主への説明義務:宅地建物取引業者は、売主・買主の双方に対し、ホームインスペクション業者(建物状況調査を行う者)の斡旋の可否について説明する義務があります。
2.重要事項説明:買主に対して、ホームインスペクションの実施状況や結果の概要について、重要事項説明書に記載して説明する義務があります。
3.売買契約時の確認:売買契約を締結する際に、ホームインスペクションの結果を売主と買主が確認したかどうかを記載する義務があります。
これにより、不動産取引の際にはホームインスペクションの実施が積極的に促されるようになり、中古住宅市場の透明性向上と、買主の保護が図られるようになりました。ただし、これらの義務はあくまで「説明すること」であり、ホームインスペクションの実施自体が義務化されているわけではありません。実施するかどうかは、売主と買主の判断に委ねられています。
ホームインスペクション活用のメリット
・売主:建物状況を事前に把握し、買主に正確に伝えることで、引き渡し後のトラブルリスクを低減できます。また、必要な修繕を事前に施しておくことで、買主の安心感を高め、スムーズな売却につながる可能性もあります。
・買主:物件購入前に建物の状態を客観的に把握できるため、安心して購入判断ができます。将来の修繕費用の予測も立てやすくなり、購入後の予期せぬ出費を防ぐことにもつながります。
・不動産会社:ホームインスペクションを斡旋し、その結果を説明することで、顧客への信頼性を高め、安心・安全な取引を促進できます。
ホームインスペクションと「訳アリ不動産」の現実
当社フィリアコーポレーションが専門とする「訳アリ不動産」は、ホームインスペクションの実施が困難であったり、その結果が売買に大きな障壁となったりするケースが少なくありません。
例えば、以下のような物件です。
・老朽化が著しい空き家:長期間放置され、雨漏りや構造躯体の腐食、シロアリ被害などが進行している空き家は、ホームインスペクションで多数の不具合が指摘され、高額な修繕費用が見込まれるため、一般の買主は購入をためらいます。
・再建築不可物件:建物自体に大きな瑕疵がなくても、建築基準法上の問題で建て替えができない物件は、そもそもホームインスペクションの対象とはなりにくいですが、仮に行ったとしてもその根本的な価値(建て替え不可)が問題視されます。
・共有持分物件:複数人が共有する物件の場合、共有者全員の同意がないとホームインスペクションの実施自体が難しいことがあります。
・長屋・連棟式建物:隣家と構造がつながっているため、ホームインスペクションで不具合が発見されても、隣家との協力なしに修繕が困難な場合があり、買主は敬遠しがちです。
・境界非明示の土地:土地の境界が不明確な場合、建物の正確な位置特定が難しく、ホームインスペクションの前提となる情報が不足することがあります。
これらの物件は、ホームインスペクションを行うことで、その「訳アリ」な部分がより明確になり、一般の不動産市場ではさらに買い手が見つかりにくくなります。また、売主様はホームインスペクションの費用負担に加え、不具合が判明した場合の修繕費用や、売却価格の大幅な下落を受け入れざるを得なくなる可能性があります。
当社フィリアコーポレーションは、このようなホームインスペクションの結果が売買の障壁となるような「訳アリ不動産」の買取を専門としています。私たちは、1,000件以上の相談・査定実績から得た実務に基づいたリアルな知見を活かし、ホームインスペクションで指摘されるような既存の不具合も含めて、現状有姿で物件を買い取ることが可能です。
当社は、契約不適合責任の免除、残置物の処理不要、隣人交渉不要といった形で、売主様の心理的・実務的負担を大幅に軽減することを強みとしています。ホームインスペクションで問題が見つかり、売却を諦めていた場合でも、ぜひ当社にご相談ください。机上の理論だけでなく、現場で培った対応力と解決事例に基づいて、最適な解決策をご提案いたします。
よくある質問
Q
ホームインスペクションの費用は誰が負担するのですか?
Q
ホームインスペクションで指摘された不具合は、必ず修理しないと売却できませんか?
Q
ホームインスペクションは中古住宅購入の必須条件ですか?
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