代償分割

概要

代償分割(だいしょうぶんかつ)とは、共有状態にある不動産などの財産(共有物)を、共有者のうちの特定の者(または複数人)が単独で取得する代わりに、その取得者が他の共有者に対して、自己の取得分を超える価値に応じて金銭(代償金)を支払うことで、共有関係を解消する方法です。特に相続財産に不動産が含まれる場合に、不動産を売却することなく特定の相続人が単独で引き継ぎたいと考える場合に用いられることが多い分割方法です。

代償分割とはどのような方法か

代償分割は、共有物分割請求における分割方法の一つであり、相続財産に不動産が含まれるケースで特に有効な手段です。相続人の中に「この実家だけは残したい」「事業に必要な土地だから手放したくない」といった希望がある場合、その特定の相続人が不動産を単独で取得し、その代わりに他の相続人に対して、自身の法定相続分や遺産分割協議で定めた取り分を超える部分について金銭を支払うことで、公平な分割を実現します。


代償分割の主な流れは以下の通りです。

1.不動産の評価:まず、対象となる不動産の客観的な価値を評価します。不動産鑑定士に依頼したり、不動産会社の査定額を参考にしたりすることが一般的です。この評価額が、代償金を算出する基礎となります。

2.相続分の決定と代償金の算出:各相続人の法定相続分や、遺産分割協議で合意した具体的な取得割合に基づき、不動産を取得する相続人が他の相続人に支払うべき代償金の額を算出します。
◯例:評価額6,000万円の不動産を長男が単独で取得し、次男と三男にそれぞれ2,000万円ずつ(合計4,000万円)の代償金を支払う、といった形です。

3.遺産分割協議書の作成:代償分割を行う場合、その内容(誰がどの不動産を取得し、誰にいくらの代償金を支払うか)を明記した遺産分割協議書を作成します。この協議書は、不動産の名義変更(相続登記)の際に法務局に提出する重要な書類となります。

4.代償金の支払いと登記:不動産を取得する相続人が、合意した代償金を他の相続人に支払い、その後、不動産の所有権移転登記を行います。


代償分割の大きなメリットは、不動産を売却することなく、特定の相続人が引き継げる点です。これにより、先祖代々の土地や、家族の思い出が詰まった実家など、売却したくない不動産を残すことができます。また、不動産を売却する手間や費用、売却時の譲渡所得税を回避できる場合もあります。

ただし、代償金を支払う側にまとまった資金が必要となる点が最大のデメリットです。資金が不足する場合は、金融機関からの融資を検討することになります。

代償分割が困難な「訳アリ不動産」の問題

代償分割は、不動産を残したい場合に非常に有効な方法ですが、現実にはその実施が難しく、結果的に不動産を「訳アリ不動産」にしてしまうケースが多々あります。

最も典型的な問題は、代償金を支払う側の資金不足です。不動産の評価額が高額な場合、代償金も高額になり、不動産を取得したい相続人にその資金を準備する能力がないことがあります。金融機関からの融資も、個人の返済能力や不動産の担保価値によって上限があるため、希望通りの金額を借りられないこともあります。資金が用意できなければ、代償分割は実現できません。

また、不動産の評価額をめぐる共有者(相続人)間の対立も大きな障害となります。例えば、不動産を取得したい側は評価額を低く見積もりたいと考え、代償金を受け取る側は高く見積もりたいと考えるため、意見がまとまらないことがあります。特に、不動産鑑定士による鑑定費用を負担したくない、あるいは鑑定結果に不満があるといった理由で、話し合いが膠着状態に陥るケースも少なくありません。

さらに、共有者(相続人)の人数が多い場合や、一部の共有者と連絡が取れない、あるいは協力が得られない場合も、代償分割は困難になります。遺産分割協議は原則として相続人全員の合意が必要なため、一人でも反対したり、連絡が取れなかったりすると、手続きを進めることができません。このような状況では、最終的に共有物分割請求訴訟に発展し、競売という形になることもあります。当社フィリアコーポレーションが取り扱う空き家の中には、このような代償分割が難しい複雑な共有関係の問題を抱え、一般の市場では売買が難しいとされているものが多数あります。

代償分割が困難な不動産の解決と当社の専門性

代償分割が困難な不動産の問題解決には、不動産評価に関する知識、金融機関との連携、そして何よりも共有者(相続人)間の調整を行う実務的なノウハウが不可欠です。当社フィリアコーポレーションは、まさにこのような権利関係に課題のある不動産、特に代償分割が難しい共有不動産(空き家)の買取と問題解決に特化しています。

当社が提供する解決策の一つは、代償分割が困難な共有物件の「共有持分」を、共有者のうちの一人(または複数人)から直接買い取ることです。これにより、売主様は、代償金を準備する負担や、他の共有者との複雑な交渉、そして共有物分割訴訟に発展するリスクといった多岐にわたる問題から解放され、速やかに自身の共有持分を現金化することができます。一般の不動産会社では、共有持分のみの買取は敬遠されることがほとんどですが、当社は豊富な経験とノウハウを活かし、積極的に買取を検討します。

具体的には、当社が共有持分を取得した後、新たな共有者として残りの共有者と交渉し、任意売却による共有関係の解消や、他の共有者の持分も順次買い取って単独所有化を図るなど、柔軟な解決策を提案します。売主様が代償分割を希望しながらも資金面で難しい状況であれば、当社が共有持分を取得することで、他の共有者との関係を整理し、改めて物件全体を一般市場で売却できるよう調整することも可能です。

売主様にとっては、残置物の処理が不要であったり、契約不適合責任を免除したりするなど、売却における心理的・実務的な負担を大幅に軽減する提案が可能です。当社は、1000件以上の相談・査定実績を通じて培った実務に基づいたリアルな知見を強みとしています。単なる法律の説明に終わらず、「どんな場面で問題になるのか」「売主にとっての影響」「どう解決してきたか」を明確に示しながら、売主様に寄り添った最適な解決策をご提案いたします。

よくある質問

Q

代償分割のメリットとデメリットは何ですか?

A

代償分割の最大のメリットは、共有不動産を売却することなく、特定の相続人(共有者)が引き継ぐことができる点です。これにより、思い出の詰まった実家を残したり、事業用不動産を引き継いだりすることが可能になります。また、売却にかかる仲介手数料や譲渡所得税の発生を避けることができる場合もあります。一方のデメリットは、不動産を取得する相続人(共有者)に、他の相続人(共有者)へ支払うためのまとまった代償金が必要となる点です。この資金の準備ができない場合、代償分割は実現できません。また、不動産の評価額をめぐる相続人間の意見対立が生じやすいという点もデメリットとして挙げられます。

Q

代償分割で代償金を支払う場合、贈与税はかかりませんか?

A

適正な代償分割が行われた場合、原則として贈与税はかかりません。遺産分割協議に基づいて、特定の相続人が自分の法定相続分や遺産分割協議で決定した取得分を超えて不動産を取得し、その超過分に対して他の相続人へ金銭を支払う行為は、贈与とは見なされないためです。しかし、不動産の評価額が不当に低く設定されたり、代償金が適正額よりも著しく低かったりする(贈与とみなされるような)場合は、贈与税の課税対象となるリスクがあります。このようなリスクを避けるためにも、遺産分割協議書に代償分割の内容を明確に記載し、不動産の評価も適正に行うことが非常に重要です。税務面で不安がある場合は、必ず税理士に相談することをお勧めします。

Q

代償分割をしたいのですが、代償金を支払う資金がありません。どうすればいいですか?

A

代償分割を希望しながらも代償金を支払う資金が不足している場合、いくつかの選択肢が考えられます。一つは、金融機関から不動産担保ローンなどを利用して資金を借り入れる方法です。もう一つは、代償分割を断念し、不動産全体を売却する換価分割を検討することです。あるいは、ご自身の共有持分のみを当社フィリアコーポレーションのような専門の不動産買取会社に売却することで、共有関係から脱退し、現金化するという方法もあります。当社にご相談いただければ、お客様の状況に合わせた最適な解決策をご提案し、複雑な手続きや交渉のサポートをいたします。

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