収益還元法

概要

収益還元法とは、不動産が将来生み出すと期待される収益に基づいて、その不動産の現在の価値を算出する評価手法です。特に投資用不動産や賃貸物件の価格を評価する際に広く用いられ、不動産の収益性に着目してその価値を判断する点が大きな特徴です。この方法で算出された価格は「収益価格」と呼ばれます。

収益還元法の基本的な考え方

収益還元法は、不動産の価格を「その不動産が将来にわたってどれくらいの収益(賃料収入など)を生み出すか」という視点から算出するアプローチです。一般的な住宅の売買などで用いられる「取引事例比較法」(類似物件の取引事例から価格を算出)や「原価法」(再調達費用から減価を考慮して価格を算出)とは異なり、不動産の収益能力に直接焦点を当てるため、投資家が物件の真の価値を見極める上で非常に重要な手法とされています。

この手法では、将来得られるであろう収益を現在の価値に「還元(割引)」して、不動産の価格を求めます。例えば、年間100万円の純収益を生み出す物件が、投資家にとってどれくらいの価値があるかを判断する際に用いられます。収益還元法は、大きく分けて以下の2つの計算方法があります。

収益還元法の2つの計算方法:直接還元法とDCF法

収益還元法には、「直接還元法」と「DCF法(DiscountedCashFlow法)」という、性質の異なる2つの計算方法があります。


1.直接還元法
直接還元法は、比較的短期間の純収益を基に、還元利回りを用いて不動産価格を算出する簡易的な方法です。不動産価格=1年間の純収益÷還元利回り

純収益:年間の家賃収入から、管理費、固定資産税、修繕費など、不動産の運営にかかる経費を差し引いた、実質的な利益を指します(NOIとほぼ同じ概念です)。

還元利回り:不動産の種類や立地、築年数などに応じて、市場で期待される収益率(利回り)を指します。これは類似物件の取引事例や、投資家の期待利回りなどから設定されます。

計算例:年間純収益が300万円、還元利回りが5%の場合不動産価格=300万円÷0.05=6,000万円

直接還元法のメリットは、計算が非常にシンプルで分かりやすいことです。素早く大まかな評価額を知りたい場合や、多数の物件を比較検討する際の初期段階で有効です。ただし、将来の収益変動や売却時の価値を考慮しないため、長期的な視点での詳細な分析には不向きな側面があります。


2.DCF法(DiscountedCashFlow法)
DCF法は、「割引キャッシュフロー法」とも呼ばれ、不動産の保有期間中に得られる将来の各期間の純収益と、期間終了後の売却によって得られると予測される価格(復帰価格)を、それぞれ現在の価値に割引いて合計する方法です。不動産価格=各期の純収益の現在価値の合計+期間終了後の復帰価格の現在価値

割引率:将来の収益を現在の価値に換算する際に用いる利率です。投資家の期待収益率や、リスクを考慮した率が設定されます。

復帰価格:保有期間終了後に不動産を売却すると仮定した場合の売却価格です。これも将来の価値を現在価値に割り引いて計算します。

計算例:(複雑なためここでは詳細な計算式は割愛しますが、具体的には年ごとの純収益と最終売却価格をそれぞれ割引率で現在価値に換算して合計します。)

DCF法のメリットは、将来の収益変動や売却価格まで細かく考慮できるため、より精度の高い評価が可能な点です。特に大規模な不動産投資や、長期的な運用計画を立てる際に適しており、不動産鑑定士による鑑定評価や、不動産投資信託(REIT)の評価など、専門的な分野で多用されます。しかし、計算が複雑であり、将来の収益や割引率、復帰価格の予測が難しいため、設定する前提条件によって結果が大きく変動するリスクもあります。

収益還元法と「訳アリ不動産」の評価

収益還元法は、不動産がどれだけの収益を生み出せるかという点に焦点を当てるため、賃料収入が期待できない、あるいは維持管理費用が収益を上回るような「訳アリ不動産」の場合、収益価格が非常に低くなる、あるいは評価できないといった状況に直面することが多々あります。

例えば、以下のようなケースです。


空き家:長期間空室で賃料収入がゼロの場合、純収益が算出できず、収益還元法での評価が困難になります。

老朽化が著しい物件:大規模な修繕が必要で、その費用が将来の賃料収入を大きく圧迫する場合、純収益が低くなり、収益価格も低くなります。

法的制約のある物件:再建築不可物件や接道義務違反の土地に建つ物件など、賃貸募集自体が難しい、または将来的な活用に大きな制約がある場合、収益性が低く評価されます。

共有持分:権利関係が複雑な共有持分物件の場合、他の共有者との合意がなければ賃貸に出すことも困難なため、収益を生み出せず、収益還元法では評価がつきにくいです。


このような物件は、通常の不動産市場では買い手が見つかりにくく、金融機関の融資も得られにくいため、売却が困難になりがちです。しかし、当社フィリアコーポレーションは、まさにこうした収益還元法では低い評価しか得られない、あるいは評価自体が難しい「権利関係に課題のある不動産」の買取を専門としています。

当社は、単に収益性だけでなく、その物件が持つ潜在的な価値や、権利関係の整理、リノベーションによる再生といった「不動産の再生能力」を重視して査定を行います。これまでの1,000件以上の相談・査定実績から得た実務に基づいたリアルな知見を活かし、他社では断られるような物件でも積極的に買取を行っています。売主様が抱える契約不適合責任の免除、残置物処理不要、隣人交渉不要といった心理的・実務的負担を軽減しながら、最適な解決策を提案し、円滑な取引を支援することが当社の強みです。

よくある質問

Q

収益還元法はどのような不動産評価に適していますか?

A

収益還元法は、主に投資用不動産や賃貸物件など、継続的に収益を生み出すことを目的とした不動産の評価に最も適しています。具体的には、アパート、マンション、オフィスビル、商業施設、ホテル、物流施設などが挙げられます。これらの物件は、将来の賃料収入が明確に想定できるため、その収益性を基準に現在の価値を判断することが合理的だからです。反対に、自分が住むための戸建て住宅や、収益性の低い土地など、収益を直接生み出さない不動産については、収益還元法はあまり適していません。そうした不動産の評価には、取引事例比較法や原価法が主に用いられます。

Q

収益還元法で重要な「還元利回り」はどうやって決まりますか?

A

還元利回りは、収益還元法、特に直接還元法において不動産価格を算出する上で非常に重要な要素ですが、これを決めるのは容易ではありません。主な決定方法には以下のようなものがあります。


1.類似物件の取引事例から求める:対象不動産と似た条件(立地、築年数、構造、用途など)の取引事例から、実際の純収益と取引価格を基に逆算して還元利回りを求めます。

2.市場の期待利回り:不動産の種類やエリアごとの一般的な投資家の期待利回りや、金融機関の融資基準などを参考に設定します。

3.借入金と自己資金の比率から求める:借入金と自己資金の各還元利回り(自己資金利回りは期待するリターン)を、その構成割合で加重平均して求める方法もあります。還元利回りが1%変わるだけでも、算出される不動産価格は大きく変動するため、適切な還元利回りの設定には、専門的な知識と経験が求められます。不動産鑑定士は、これらの要素を総合的に判断して、適切な還元利回りを設定します。

Q

収益還元法で計算された価格が、自分の希望売却価格より低い場合はどうすればいいですか?

A

収益還元法で算出された価格がご自身の希望売却価格より低い場合でも、すぐに諦める必要はありません。まず、なぜその価格になったのか、その理由を不動産の専門家に詳しく確認することが重要です。収益還元法は収益性に着目するため、現在の空室状況や賃料水準、物件の維持管理費用などが価格に大きく影響します。対策としては、物件の収益性を改善することが考えられます。例えば、空室対策としてリフォームを行ったり、適切な賃料設定を見直したり、管理費などの費用を削減したりすることです。ただし、物件の状態によっては多額の費用や手間がかかり、現実的ではない場合もあります。そのような場合は、当社フィリアコーポレーションのような訳アリ不動産の専門買取業者に相談するのも一つの選択肢です。当社は、収益還元法では評価がつきにくい物件や、市場での売却が難しいとされる物件でも、その物件の持つ潜在的な価値を見極め、現状有姿での買取や残置物処理不要など、売主様の負担を軽減する形で対応が可能です。まずは現在の状況を詳細にお聞かせください。

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