根抵当権
概要
根抵当権とは、特定の借入金(債務)を担保する通常の「抵当権」とは異なり、一定の範囲内(極度額)であれば、将来発生する不特定の債権を担保できる特殊な抵当権です。主に、企業が金融機関と継続的に資金の貸し借りを行う事業融資などで利用され、一度設定すればその都度担保設定や抹消の手続きが不要になるというメリットがあります。しかし、不動産を売却する際には、抹消が難航するケースがあるため注意が必要です。
根抵当権とは何か?普通抵当権との違い
根抵当権(ねていとうけん)は、不動産を担保にする「担保物権」の一種であり、通常の「抵当権」とよく比較されます。この二つの最も大きな違いは、担保する債権の「特定性」と「継続性」にあります。
・普通抵当権:
◯特定の債権を担保:例えば、住宅ローンなど、「いつ」「いくら」借りて「いつまでに」「いくら」返済するかが明確に特定された一つの債権(借入金)のみを担保します。
◯付従性がある:債務を完済すれば、その抵当権は自動的に消滅します。つまり、債務と抵当権が一体となっており、債務が消滅すれば抵当権も消滅するという「付従性」があります。
◯その都度設定・抹消:新たな借入れのたびに抵当権を設定し、完済するたびに抹消登記を行う手間と費用が発生します。
・根抵当権:
◯不特定の債権を担保:将来発生しうる不特定の債権(例えば、当座貸越や手形割引など、継続的な取引で生じる借入れの総体)を、あらかじめ定めた「極度額(きょくどがく)」の範囲内で担保します。極度額とは、担保できる債務の最大限度額を指します。
◯付従性がない:一度設定すれば、たとえ一時的に借入残高がゼロになったとしても、根抵当権は消滅せず、極度額の範囲内であれば何度でも借り入れや返済を繰り返すことが可能です。
◯手続きの簡便性:継続的な取引において、その都度抵当権を設定・抹消する手間や登記費用を省くことができます。
このように、根抵当権は、反復して資金の借り入れを行う事業者や個人事業主にとって、非常に柔軟性の高い資金調達手段として活用されています。例えば、会社の運転資金として、極度額1億円の根抵当権を設定しておけば、その枠内で必要に応じて借り入れ、返済を繰り返すことができ、その都度登記手続きをする必要がありません。
根抵当権のメリットとデメリット
根抵当権は、その性質上、資金調達の柔軟性という大きなメリットがある一方で、不動産を処分する際には特有のデメリットも存在します。
メリット
・資金調達の柔軟性:極度額の範囲内であれば、借り入れと返済を自由に繰り返すことができるため、企業の資金繰りに合わせた柔軟な資金調達が可能です。
・登記費用の削減:借入のたびに抵当権を設定・抹消する手間と、それに伴う登記費用や司法書士費用を省くことができます。継続的な取引がある事業者にとっては、コスト削減につながります。
・担保提供の手間軽減:一度不動産を担保に入れれば、新たな借入のたびに担保提供の手続きをする必要がありません。
・返済状況が外部から見えにくい:普通抵当権と異なり、根抵当権では個々の借入額が登記簿に記載されないため、外部からは具体的な債務額が把握しにくいという側面があります。
デメリット
・元本確定までの不安定性:根抵当権は、設定時は債務額が確定していません。そのため、元本が確定するまでは、債務の範囲が不透明であり、債権者(金融機関)にとってはリスクとなり得ます。
・不動産売却の難しさ:不動産を売却する際、買主は担保権が付いた状態では購入しないため、根抵当権を抹消する必要があります。しかし、普通抵当権のように完済すれば自動で消滅するわけではなく、債権者(金融機関)との合意形成と「元本確定」の手続きが必要となるため、抹消に手間や時間がかかることがあります。
・他の融資を受けにくくなる可能性:根抵当権が設定された不動産は、すでに高額な極度額で担保されていると見なされるため、他の金融機関から追加融資を受けようとした場合、審査が厳しくなることがあります。
・債務者の把握が困難な場合:不動産の所有者と債務者が異なる場合(物上保証人)、所有者が現在の借入残高を正確に把握しにくく、売却時にトラブルになる可能性があります。
・抹消が困難なケース:債務を完済している場合でも、金融機関が融資先(債務者)との関係を維持したいがために、根抵当権の抹消にすぐには応じてくれないケースも存在します。その場合、交渉が長引いたり、高額な違約金を求められたりする可能性もあります。
根抵当権が設定された「訳アリ不動産」の解決
当社フィリアコーポレーションが専門とする「訳アリ不動産」の中には、根抵当権が設定されたままになっている物件が少なくありません。特に、事業を営んでいた個人や法人が所有していた不動産が、事業廃止後も根抵当権が残ったままになっていたり、所有者が認知症などで判断能力を失い、手続きが進められないといったケースが典型です。
根抵当権が設定されている不動産は、買主が通常の住宅ローンなどを利用して購入することが難しく、また、上記デメリットで挙げたように抹消に手間がかかるため、一般の市場での売却は非常に困難になりがちです。
当社フィリアコーポレーションは、このような根抵当権が付いたままの「訳アリ不動産」の買取を専門としています。私たちは、これまでの1,000件以上の相談・査定実績から得た実務に基づいたリアルな知見を活かし、根抵当権の抹消に向けた金融機関との交渉、元本確定手続き、そして最終的な不動産の買取まで、一貫してサポートすることが可能です。
例えば、以下のような状況でお困りの売主様に対して、当社は最適な解決策をご提案します。
・事業を廃止したが、銀行との根抵当権が残ったままになっている不動産を売却したい。
・親が認知症になり、根抵当権付きの不動産を売却しようにも手続きが進まない。
・根抵当権が付いているため、一般の不動産会社では買い手が見つからない。
当社は、契約不適合責任の免除、残置物の処理不要、隣人交渉不要など、売主様の心理的・実務的負担を大幅に軽減する形で、複雑な根抵当権付き不動産の売却を円滑に進めます。机上の理論だけでなく、現場で培った交渉力と解決事例に基づいて、他の不動産会社では対応が難しい根抵当権付き不動産の売却をサポートすることが当社の強みです。
よくある質問
Q
不動産を売却する際に根抵当権はどうすれば良いですか?
Q
元本確定とは何ですか?
Q
根抵当権が付いている不動産は売れにくいと聞きましたが、本当ですか?
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