コラム記事
再建築不可を再建築可能にする方法はある?接道義務クリアの裏ワザ
公開日 2025年8月27日
最終更新日 2025年8月23日
親から受け継いだ大切な実家。しかし、いざという時に「再建築不可」だと知り、途方に暮れていませんか?「売るに売れず、建て替えもできない。このまま負の遺産になってしまうのか…」そんなやるせない不安を抱えている方も多いでしょう。諦めるのはまだ早いです。この記事では、その閉ざされた道を開くための具体的な方法を、専門家の視点から解説します。
目次
そもそもなぜ再建築不可に?すべての基本となる接道義務の2大要件
この章で解説する主なポイントは以下のとおりです。
- 要件①:幅員4m以上の「建築基準法上の道路」に
- 要件②:敷地が2m以上接していること
- 【あなたの土地は?】道路の種類を市役所で確認する方法
再建築不可となる原因のほとんどは、建築基準法で定められたこの「接道義務」を満たしていないことに集約されます。一見、難解に思える法律の要件ですが、この2つの基本さえ押さえれば、ご自身の物件がなぜ再建築不可なのかを客観的に把握することが可能です。まずは、問題の根本原因を正しく理解することから始めましょう。
要件①:幅員4m以上の「建築基準法上の道路」に
建物を新しく建てるには、その敷地が幅員4.0メートル以上の「建築基準法上の道路」に接していることが大前提となります。これは、日々の安全な通行はもちろん、火災や救急といった緊急時に消防車や救急車がスムーズに進入できる経路を確保するために定められた重要なルールです。
しかし、注意したいのが「見た目が道路でも、法律上は道路と認められていない」ケースです。例えば、昔からの慣習で使われている通路(赤道など)や、個人の所有地を許可なく道路状に整備した土地は、建築基準法上の道路に該当しない場合があります。ご実家の前の道が公道か私道かということとは別に、この「建築基準法上の道路」に該当するかどうかが、再建築の可否を分ける最初の関門なのです。
要件②:敷地が2m以上接していること
もう一つの重要な要件が、敷地が建築基準法上の道路に2.0メートル以上接していることです。この接している部分の長さを「接道間口」と呼びます。なぜ2.0メートル以上必要かというと、人の出入りや災害時の避難経路として、最低限確保すべき幅だと考えられているからです。
よくあるのが、いわゆる「旗竿地」などで、道路から奥まった敷地へ向かう通路部分の幅が2.0メートルに満たない(例えば1.8メートルしかない)ケースです。この場合、たとえ敷地の奥が広くても接道義務違反となり、原則として再建築はできません。敷地と道路が接しているかだけでなく、「どれくらいの幅で接しているか」も極めて重要なポイントになります。
【あなたの土地は?】道路の種類を市役所で確認する方法
ご自身の土地が接している道路が建築基準法上の道路に該当するか、また幅員が何メートルあるかは、見た目だけでは正確に判断できません。これらの情報は、市区町村の役所(建築指導課や道路管理課など)で必ず確認する必要があります。
役所の窓口で「指定道路図(または道路査定図)を閲覧したい」と伝え、該当地の地図を提示すれば、道路の種別や幅員を教えてもらえます。例えば「法42条1項1号道路(いわゆる公道)」なのか、「法42条2項道路(みなし道路)」なのかといった公式な情報を把握することが可能です。まずはこの公的な調査によって現状を正確に把握することが、再建築へ向けた具体的な検討の第一歩となります。
接道義務をクリアする3つの裏ワザ的アプローチ
この章で解説する主なポイントは以下のとおりです。
- 方法①【セットバック】:敷地後退で道路幅を確保する
- 方法②【隣地取得】:隣地の一部購入で接道間口を確保する
- 方法③【43条但し書き許可】:私道所有者の承諾を得て特例許可を目指す
接道義務を満たしていないからといって、すぐに諦める必要はありません。この章でご紹介する上記3つのアプローチは、再建築不可という状況を打開するための代表的な「裏ワザ」です。それぞれに特徴と適用できる条件がありますが、ご自身の土地にどの方法が使える可能性があるかを知ることが重要です。ここからは、それぞれの方法について具体的に見ていきましょう。
方法①【セットバック】:敷地後退で道路幅を確保する
目の前の道路の幅員が4.0メートル未満の場合、「セットバック」によって再建築が可能になるケースがあります。これは、道路の中心線から2.0メートルのラインまで自分の敷地を後退させ、道路として利用できるように提供することです。
例えば、幅3.0メートルの道路に面している場合、中心線から2.0メートル後退するには、敷地側に50センチメートル下がる必要があります。この後退させた部分(セットバック部分)は、固定資産税の課税対象から外れることが多いですが、自分の敷地でありながら建物を建てたり、塀や門を設置したりすることはできません。この方法は、主に「42条2項道路(みなし道路)」に指定されている場合に適用され、将来的に周辺の家が建て替わることで、徐々に広い道路が形成されていく仕組みです。
方法②【隣地取得】:隣地の一部購入で接道間口を確保する
敷地が道路に接している幅(接道間口)が2.0メートルに満たない場合は、隣地の一部を取得(購入または借地)することで解決を図るアプローチがあります。例えば、通路状の土地の幅が1.8メートルしかない旗竿地の場合、隣地所有者にお願いして、通路に沿って幅20センチメートル分の土地を譲ってもらう、といった方法です。
これが実現すれば、接道間口は2.0メートルとなり、建築が可能になります。しかし、この方法は隣地所有者の協力がなければ絶対に成立しません。相手にとっては土地が削られるデメリットしかなく、価格交渉や感情的な問題も絡むため、個人間で話を進めるのは極めて難しいのが実情です。後々のトラブルを避けるためにも、専門家を介した慎重な交渉が不可欠と言えるでしょう。
方法③【43条但し書き許可】:私道所有者の承諾を得て特例許可を目指す
接している道が建築基準法上の道路ではない場合でも、最終手段として「建築基準法第43条第2項第2号の許可」(旧:43条但し書き許可)を得ることで、特例的に建築が認められる可能性があります。これは、敷地の周囲に公園などの広い空地があったり、避難や通行の安全上支障がなかったりする場合に、特定行政庁が個別に判断して許可を出す制度です。
この許可を得るためには、その通路が私道であれば、所有者全員から「今後の建築確認申請に際し、異議なく承諾する」といった内容の承諾書(印鑑証明書付き)を取り付けることが求められるケースがほとんどです。行政との事前協議や専門的な申請書類の作成も必要となるため、個人で進めるのは非常にハードルの高い方法です。
再建築を諦めても道はある!プロが明かす2つのリアルな結末
この章でご紹介する主なポイントは以下のとおりです。
- ケース①【練馬区の事例】:隣地購入に成功し、再建築可能になったケース
- ケース②【板橋区の事例】:再建築不可のまま弊社が直接買取したケース
- なぜ再建築不可のまま買い取れるのか?その後の活用方法とは
これまで再建築を可能にするアプローチをご紹介しましたが、これらは時間や費用がかかり、必ず成功するとは限りません。では、実際に所有者の方々はどのような結末を迎えているのでしょうか。ここでは私、越川が実際に手がけた事例を基に、理想と現実、両方のケースをご紹介します。ご自身にとっての最善の道がきっと見えてくるはずです。
ケース①【練馬区の事例】:隣地購入に成功し、再建築可能になったケース
「再建築は無理だろう」と諦めかけていた状況が、一転して解決に至るケースももちろんあります。練馬区にお住まいのA様(50代)からご相談いただいた実家は、接道間口が1.9メートルと、わずか10センチメートル足りないために再建築不可となっていました。
当初、A様ご自身で隣地の方に購入を打診しようとしたものの、長年のご近所付き合いを壊したくないと躊躇され、弊社にご依頼いただきました。私たちが中立的な専門家として間に入り、測量士と連携して正確な測量図を作成。その上で、隣地の方へ10センチ幅の土地の購入について、メリット・デメリットを丁寧にご説明しました。粘り強い交渉の結果、最終的に円満にご納得いただき売買契約が成立。A様の実家は、無事に再建築可能な価値ある資産へと生まれ変わりました。
ケース②【板橋区の事例】:再建築不可のまま弊社が直接買取したケース
一方で、再建築への道が事実上閉ざされているケースも少なくありません。弊社がございます板橋区のB様(60代)が相続されたご実家は、建築基準法上の道路に一切接しておらず、通路の権利関係も複雑で、43条但し書き許可の取得は絶望的な状況でした。
B様は複数の不動産会社に相談するも全て断られ、まさに八方塞がりで弊社の扉を叩かれました。私たちは現地を詳細に調査し、再建築は困難と判断しましたが、建物自体の状態や立地を評価。リフォームによる活用を見据え、再建築不可という状況を何ら変更することなく、そのままの状態で直接買取させていただきました。B様からは「もう諦めるしかなかった実家を現金化でき、肩の荷が下りた」と大変お喜びいただけました。
なぜ再建築不可のまま買い取れるのか?その後の活用方法とは
「なぜ、他の不動産屋が断るような物件を買い取れるのか?」とよくご質問をいただきます。それは、私たちのような専門業者が、再建築以外の活用ノウハウを豊富に持っているからです。例えば、大規模なリフォームを施して魅力的な賃貸物件として再生したり、隣地も併せて取得し、より大きな土地として開発したりする道筋を描けます。
また、弊社が直接の買主となるため、売主様の契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)は一切免除。さらに、室内に残された家財道具なども、基本的にはそのままの状態で引き取らせていただきます。煩雑な手続きや交渉、片付けの手間から解放され、安心して不動産を手放せること。これこそが、専門業者に売却する最大のメリットなのです。
再建築不可の売却に関するよくある3つの質問(FAQ)
この章で解説する主なポイントは以下のとおりです。
- Q1.買取価格はどれくらいになりますか?
- Q2.売却時にこちらで何か準備することはありますか?
- Q3.他の不動産会社に断られた物件でも大丈夫ですか?
再建築不可物件の売却という選択肢が見えてくると、今度は具体的な疑問が湧いてくることでしょう。ここでは、私たちフィリアコーポレーションがお客様から特によくいただく3つの質問にお答えします。買取価格のこと、売主様にご準備いただくことなど、不安な点を少しでも解消できれば幸いです。
Q
1.買取価格はどれくらいになりますか?
Q
2.売却時にこちらで何か準備することはありますか?
Q
3.他の不動産会社に断られた物件でも大丈夫ですか?
【まとめ】一人で悩まず、まずは専門家と「最善の道」を探ろう
今回は、再建築不可の物件を再建築可能にするための方法と、もう一つの現実的な選択肢である「売却」について解説しました。最後に、本記事の重要なポイントを5つにまとめます。
- 再建築不可の主な原因は「接道義務」違反敷地が「幅員4m以上の建築基準法上の道路」に「2m以上」接していないことが、ほとんどの原因です。
- 再建築を可能にする3つのアプローチがある「セットバック」「隣地の取得」「43条但し書き許可」といった方法で、再建築が可能になるケースがあります。
- しかし、自力での解決は非常に困難どの方法も高額な費用や、隣地所有者とのデリケートな交渉、複雑な行政手続きといった高いハードルが存在します。
- 「再建築不可のまま売却する」という道もある解決が難しい場合でも、専門の買取業者であれば、再建築不可の状態のままで買い取ることが可能です。
- 専門家への売却は売主の負担がゼロに近い契約不適合責任の免除や、残置物の撤去が不要など、売主は余計な手間や心配なく不動産を現金化できます。
「再建築不可」と宣告されても、道は決して一つではありません。大切なのは、一人で抱え込まず、ご自身の状況でどの選択肢が最も現実的でメリットがあるのかを、専門家と一緒に見極めることです。その第一歩が、長年の悩みを解決し、大切な資産を未来へ繋ぐことに繋がります。
監修者

越川直之【宅地建物取引士】【空き家相談士】
代表ブログへ
株式会社フィリアコーポレーション代表取締役の越川直之です。
当社は空き家や再建築不可物件、共有持分など、一般的に売却が難しい不動産の買取・再販を専門とする不動産会社です。
これまでに1000件以上の相談実績があり、複雑な権利関係や法的・物理的制約のある物件にも柔軟に対応してきました。
弊社ホームページでは現場経験に基づいた情報を発信しています。
当社は地域社会の再生や日本の空き家問題の解決にも取り組んでおり、不動産を通じた社会貢献を目指しています。