コラム記事
連棟式建物は再建築不可?専門家が分かりやすく解説
公開日 2026年3月1日
最終更新日 2026年3月1日
越川直之(宅地建物取引士 / 空き家相談士)
代表ブログへ訳アリ不動産1,000件以上の相談実績を持つ、空き家・再建築不可・長屋・共有持分の専門家。株式会社フィリアコーポレーション代表取締役。現場経験に基づき、訳アリ不動産売却の正しい知識を監修しています。
連棟式建物とは
連棟式建物とは、2戸以上の住戸が壁(界壁)を共有し、構造的に連結して一棟の建物を形成している住宅形式を指します。古くから「長屋」として親しまれてきたこの形式は、隣家と一つの壁を分け合って立っているため、自分の一存だけで自由に解体したり、建て替えたりすることが難しいという特殊な性質を持っています。
この構造的な繋がりこそが、連棟式建物が「再建築不可」に陥りやすい最大の要因です。建築基準法上、連棟式建物は「全体で一棟の建物」として扱われるため、一部だけを解体して新しく建てるには、隣人の合意を得た上での切り離しや、現行法規に基づいた接道義務のクリア、構造的な自立など、極めて高いハードルが立ちはだかります。これらの条件を一つでも満たせない場合、その住戸は事実上、単独での再建築ができない物件となってしまいます。
一言に連棟式建物と言っても、土地の所有形態や権利関係によって大きく以下の3つのタイプに分類されます。それぞれの違いを正しく理解することが、資産価値や再建築の可能性を見極めるための重要な一歩となります。
- テラスハウス
- タウンハウス(土地共有)
- タウンハウス(敷地分筆)
テラスハウス
テラスハウスとは、敷地の中で各住戸の境界が明確に区分けされている連棟式建物のことを指します。最大の特徴は、一つの大きな土地が「Aさんの敷地」「Bさんの敷地」というように分筆(土地を分割すること)されており、その敷地の上に建てられた建物も、それぞれの所有者が個別に所有している点にあります。
隣家と物理的に壁を共有してはいますが、自分に割り当てられた敷地内であれば、庭や家庭菜園、駐車場などとして自由に活用することが可能です。このため、後述する「タウンハウス」と比較しても、より一戸建てに近い自由度を持って生活できるのが大きな魅力です。また、複数の住宅を一体として建築する構造は、基礎や屋根の一部を共有することで建築費を抑えられるため、一般的な一戸建てよりも安価に取得できるという経済的なメリットもあります。
マンションやアパートといった集合住宅と決定的に違うのは、上下階に別の世帯が住んでいないことです。足音などの騒音トラブルを過度に心配する必要がなく、プライバシーを確保しやすいのも利点です。ただし、いざ「再建築」を検討する段階になると、土地は自分のものであっても、共有している壁の切り離しという連棟式特有の技術的・法的な制約が大きな壁として立ちはだかることになります。
タウンハウス(土地共有)
タウンハウスの中でも「土地共有タイプ」は、連棟式建物でありながら、その権利形態が分譲マンションとほぼ同一であるのが大きな特徴です。各住戸(建物)は個別に区分所有されていますが、その敷地となる土地については、住戸の所有者全員で持ち合う「共有」の形をとっています。
テラスハウスのように「自分の建物の真下の土地は自分のもの」という個別の所有権がないため、土地の利用や処分には共有者全員のルールが適用されます。このため、一見すると独立した住宅に見えても、実態は法的・権利的に「横に繋がったマンション」と考えるのが適切です。
再建築に関しては、連棟式建物の中でも特に厳しい制約を受けます。土地共有タイプのタウンハウスを切り離して建て替えたり、全体を再建築したりする場合には、区分所有法第62条に基づく「建て替え決議」が必要となります。この決議には、区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成という極めて高いハードルをクリアしなければなりません。当然ながら、一人の所有者が独断で自分の住戸だけを切り離して再建築することは法律上認められず、この権利の縛りが「再建築不可」という問題に直結しやすいのが実情です。
タウンハウス(敷地分筆)
一方、タウンハウスの中には、敷地を完全に分筆(土地を分割)しているタイプも存在します。「敷地が分かれているならテラスハウスと同じではないか」と疑問に思われるかもしれませんが、決定的な違いは、地上にある連棟式建物が「区分所有(分譲マンションと同じ権利形態)」となっている点にあります。
テラスハウスが建物も土地も個別に所有する「戸建ての集合体」であるのに対し、このタイプのタウンハウスは、たとえ足元の土地が自分名義であっても、建物自体は一棟の大きな資産を全員で分け合っている状態です。そのため、切り離しや建て替えを検討する際の法律上の取り扱いは、一般的な分譲マンションと同様に非常に厳格なものとなります。
具体的には、区分所有法に基づく「建て替え決議」が必要となり、独断で自分の住戸だけを切り離して再建築することはできません。土地の境界ははっきりしていても、建物の権利が「一棟全体」というルールに縛られているため、再建築へのハードルは非常に高くなります。このように、見た目上の区割りと権利実態が複雑に入り組んでいることが、連棟式建物の「再建築不可」という問題の深さに繋がっているのです。
連棟式建物は再建築不可?
結論から言えば、多くの連棟式建物(長屋)は、現代の法律に照らし合わせると「再建築不可」という厳しい現実に直面しています。一つの建物を複数の所有者で分け合っているという特殊な構造上、単独での建て替えは物理的にも法的にもハードルが極めて高いからです。
一般的な戸建て住宅であれば、老朽化が進めば取り壊して自由に新築することが可能です。しかし、連棟式建物の場合は「自分の持ち分だけを切り離す」という行為自体が、建物全体の強度や法的な適合性に直結してしまいます。一部を切り離す工事は、建物全体を取り壊すよりも多大な労力や手間がかかることが多く、その複雑さが再建築を阻む大きな要因となります。
市場では「再建築不可物件」として安価に取引されることも多いですが、所有者にとっては資産価値の低下や活用の制限といった深刻な問題です。なぜ連棟式建物はこれほどまでに建て替えが難しいのか。その理由は、単なる「工事の難易度」だけではなく、以下の3つの構造的な欠陥や法的な制約に集約されます。
- 切り離し後に建築基準法の要件を満たせなくなる
- 所有者のみでの解体・再建築が困難である
- 老朽化した建物が多い
切り離し後に建築基準法の要件を満たせなくなる
連棟式建物(長屋)は、建築基準法上「一棟の建物」として建築確認を受けています。そのため、自分の住戸だけを物理的に切り離した瞬間、法的には「独立した一棟の住宅」として現行法に適合させなければなりませんが、これが再建築を阻む最大の罠となります。
最も高いハードルは「接道義務」です。都市計画区域内では、建物の敷地は道路に2メートル以上接していなければなりませんが、中間に位置する住戸を切り離した場合、通路状の土地が規定の幅に満たなかったり、そもそも道路に面していなかったりして、この要件を満たせないケースが後を絶ちません。
さらに、切り離しによって新たに露出した外壁には、現行法に基づいた高度な防火性能が求められます。隣家との境界線からの距離に応じて「延焼のおそれのある部分」としての規制がかかり、これをクリアできなければ建築許可(確認申請)を下ろすことは不可能です。
このように、長屋の一部だけを切り離す行為は、建物全体を取り壊すよりも多大な労力や手間がかかるだけでなく、物理的に切り離した瞬間に「二度と家が建てられない土地」を生み出してしまう法的リスクを孕んでいるのです。
所有者のみでの解体・再建築が困難である
連棟式建物を解体および再建築するには、隣家の許可や承諾が必ず必要になります。一般的な一戸建てとは異なり、隣家と壁や柱を共有しているため、自分一人の判断で勝手に工事を進めることは、権利関係や構造上の理由から認められないケースがほとんどだからです。
物理的な側面においても、連棟式建物は一棟全体を取り壊すよりも、一部分だけを慎重に切り離すほうが多大な労力や手間がかかるという特徴があります。立地条件によって重機が入り込めないような現場では、職人の手作業による「手壊し解体」を余儀なくされることもあり、その分だけ人件費や手間も増大します。
また、解体によって剥き出しになった隣家の断面に対して、防水や構造補強といった適切な補修を行う義務も生じます。これらの補修範囲や費用の負担、責任の所在について、着工前に隣人と明確な合意が取れていなければ、深刻な近隣トラブルや工事の中断を招きかねません。このように、技術的な難易度の高さと対人交渉の負担が重なり合うため、所有者単独の力だけで解体・再建築を完遂させることは極めて困難であるのが実情です。
老朽化した建物が多い
連棟式建物は、昭和の高度経済成長期に多く建築された住宅形態であり、現在では築年数がかなり経過した物件が目立ちます。その多くが現行の耐震基準を満たさない「旧耐震基準」で建てられており、現代の安全基準に適合させるための耐震補強工事には、非常に大きな費用負担が伴うのが現実です。
さらに、古い建物特有の「見えない傷み」が問題を複雑にします。
- 追加補修のリスク:工事を進める過程で、柱や土台のシロアリ被害、あるいは長年の雨漏りによる構造材の腐食が発覚することが少なくありません。
- 資金計画の変動:こうした劣化が判明すると、当初の予定にはなかった多額の追加費用が発生し、修繕や再建築のハードルを一気に押し上げます。
また、長屋の解体は一般的な住宅よりも労力や手間がかかり、切り離した後の隣家に対する補修工事にも、本体の解体費用と同等、あるいはそれ以上のコストがかかる事例もあります。「老朽化しているからこそ新しくしたい」という願いがあっても、建物自体の脆さと、それに伴う際限のない費用膨張が壁となり、結果として再建築を断念せざるを得ないケースが後を絶ちません。
連棟式建物の再建築を可能にする方法
多くの連棟式建物は、接道義務や構造上の制約から「再建築不可」とされていますが、適切な法的手続きや権利関係の整理を行うことで、建て替えを実現できる可能性があります。しかし、その過程には物理的・金銭的な困難が伴うことを覚悟しなければなりません。
物理的な面では、長屋の一部だけを切り離す工事は、建物全体を一度に解体するよりも多大な労力や手間を要します。費用についても、通常の木造住宅の解体相場より坪単価が高く設定される傾向にあり、解体費用本体とは別に、切り離し後の隣家の壁を整えるための高額な補修工事費用が必要となります。実際の事例では、補修工事だけで高額な費用が発生しているケースも珍しくありません。
こうしたコストや手間のハードルを乗り越えた上で、法的な許可を得るための具体的な解決策として、以下の二つのアプローチが有力です。それぞれの仕組みと、再建築を可能にするためのポイントを詳しく解説します。
連坦建築物設計制度を利用する
連坦建築物設計制度は、隣接する複数の敷地を「一団の土地」とみなして建築規制を適用する制度です。1999年5月に施行されており決して目新しいものではありませんが、不動産業者でもこの制度を正しく理解している人はそれほど多くありません。
これほどまでに認知が低い理由は、制度開始時に当時の建設省住宅局から発せられた運用指針が極めて概念的だったことにあります。その結果、各自治体(特定行政庁)ごとに認定基準がバラバラになり、実務上およそ使いづらいものとなってしまいました。
【制度が普及しない理由と現実】
- 基準の不透明さ:行政ごとに判断が分かれるため、再建築が可能になるかどうかの予見が困難です。
- 実務での稀少性:認定を受けるためのハードルが非常に高く、実際に運用された実例は殆ど見られません。
- コストの不整合:長屋の切り離しは、建物全体を取り壊すよりも労力や手間がかかり、工事費用が高額になる傾向があります。補修費用だけで高額になることもあり、この制度を使ってまで再建築する経済的合理性が見出しにくいのが実情です。
理論上の救済策ではありますが、実務の場では「机上の空論」に近い難易度であり、現実的な解決策とは言い難いのが本音です。
隣接住戸の持分を取得する
連棟式建物の再建築を可能にする最も確実な方法の一つが、隣接する住戸の持分を取得し、建物全体を一つの所有権にまとめることです。連棟式建物は一棟全体で考えれば建築基準法の要件を満たしていることが多いため、他の居住者が所有する部分を買い取り、建物全体として再建築の許可を得る道が開かれます。
この場合、他の居住者との直接的な交渉が必要になりますが、再建築不可の制約がある物件は単独での市場価値が低いため、取引価格が相場よりも安くなる傾向にあります。相手にとっても「活用や売却が難しい資産を整理できる」という利点があるため、双方にとってメリットのある着地点を見つけやすい解決策といえるでしょう。
ただし、連棟式建物の解体は一般的な住宅よりも手間や労力が必要であり、技術的な配慮が欠かせません。また、独断での交渉は感情的な対立を招き、計画が頓挫する恐れもあります。事前にしっかりと相場を調査したうえで、不動産会社などの専門家と協力しながら、慎重に手続きを進めていくことが成功の鍵となります。
連棟式建物を再建築する際の注意点
連棟式建物の再建築は、単に「古いから新しい家にする」という単純な話では済みません。壁一枚、柱一本を隣家と共有しているという特殊な構造ゆえに、一歩間違えれば法的なトラブルや修繕不能な破損を招くリスクを孕んでいます。
実務上、長屋の一部だけを切り離す工事は、建物全体を取り壊すよりも多大な労力や手間がかかります。そのため、解体費用は一般的な木造住宅よりも高額になりやすいです。また、本体の解体だけでなく、切り離した後の隣家の壁を補強・修復する「補修工事費用」が別途発生し、その金額が解体費用を大きく上回るケースも珍しくありません。
こうした経済的な負担に加え、法規の遵守や近隣住民との合意形成といった「見えない壁」を一つずつクリアしていく必要があります。後悔しない再建築を実現するために、工事計画を立てる前に以下の5つの重要ポイントを必ず押さえておきましょう。
- 接道義務を満たす
- 敷地最低面積を把握する
- 建物の強度を維持する
- 合意の証拠は文書として残す
- 住宅ローンに通りにくいことを理解しておく
接道義務を満たす
連棟式建物の再建築において、最も基本的かつ厳格なルールが「接道義務」です。建築基準法では、建物を建てる敷地は道路に2メートル以上接していなければなりません。連棟式建物の建て替えに伴い敷地を分筆する場合、切り離されたすべての住戸がこの義務を個別に満たしている必要があります。
たとえ敷地が明確に分かれていたとしても、個々の敷地が基準法の道路に2メートル以上接していなければ、単独での建築許可は下りません。特に注意すべきは、両隣に挟まれた「中間に位置する住戸」です。分筆後の道路に接する間口が2メートル未満になってしまうと、その土地は法的に「再建築不可」という致命的な制限を受けることになります。
【注意すべきポイント】
- 全住戸の接道確認:自分の区画だけでなく、切り離しに関わるすべての住戸が接道義務をクリアできているか、全体のバランスを考慮した計画が必須です。
- 正確な測量:図面上では足りているように見えても、現況の幅員が不足しているケースがあります。必ず事前に専門家による測量を行い、接道状況を緻密に確認しましょう。
再建築を前提とするならば、この接道要件を100%満たせる確証が得られるまで、安易に切り離しを進めてはいけません。
敷地最低面積を把握する
自治体や地域によっては、良好な住環境を維持するために「敷地面積の最低限度」を定めているケースがあります。たとえ接道義務をクリアしていても、切り離し後の敷地面積がこの基準を下回ってしまうと、やはり再建築は許可されません。
特に連棟式建物(長屋)の場合、一棟を複数に分割して分筆を行う際、一つひとつの区画が非常に狭小になる傾向があります。都市計画法や地域の「地区計画」によって、例えば「80㎡以上」といった制限がある地域では、基準にわずかでも足りなければ「再建築不可」となってしまいます。
長屋の切り離しは、建物全体を取り壊すよりも労力や手間がかかることがあり、その分費用も一般的な木造住宅と比較して割高になるのが一般的です。正確な金額は立地や面積で変わりますが、多額の費用を投じて解体した後に「面積不足で家が建てられない」という事態に陥らないよう、以下の点に注意しましょう。
- 特定行政庁への確認:工事計画を立てる前に、自治体の都市計画課などの窓口で、その地域に最低敷地面積の制限があるかを必ず確認してください。
- 分筆シミュレーション:専門家(土地家屋調査士など)に依頼し、分筆後の正確な面積が基準値を確実に上回るか、余裕を持った計画を立てることが不可欠です。
資産を守るためには、事前の法規制チェックが成功の鍵となります。
建物の強度を維持する
連棟式建物は、壁や柱、梁などの構造躯体を共有することで、互いに支え合いながら強度を維持しています。そのため、片方を切り離す行為は、残された建物から「支え」を奪うことを意味します。切り離された側は単独での強度を保てなくなるリスクがあり、特に地震発生時の倒壊への不安は無視できません。
こうした構造上の特性から、切り離し後の建物には必ず適切な補強工事が必要となります。一般的な住宅をすべて取り壊すよりも、一部を切り離すほうが労力や手間がかかり、その分費用も高くなる傾向にあります。実際、過去の事例を見ても、解体そのものの費用に加えて、残された建物の安全を守るための「補修・補強工事費用」が総額の大きな割合を占めていることが分かります。
【注意すべきポイント】
- 構造診断の実施:切り離し前に建築士などの専門家による診断を行い、どの部分に補強が必要かを明確にする。
- 補強内容の協議:補強の方法や費用の負担割合について、事前に隣人と誠実に話し合い、納得を得ることが不可欠です。
「ただ壊せばいい」という安易な考えは、隣家の安全を脅かすだけでなく、取り返しのつかないトラブルを招きます。残される建物の強度をどう守るか、プロを交えた綿密な計画が再建築成功の絶対条件となります。
合意の証拠は文書として残す
連棟式建物の切り離しや再建築は、隣人との利害が密接に絡む極めてデリケートな作業です。しかし、「長年の付き合いだから口約束で十分」という考えは非常に危険です。「いちいち書面を作るのは面倒だ」という意見もありますが、現場では文書を残していなかったために「言った・言わない」の泥沼の争いになり、途方に暮れている方を私は数多く見てきました。
特に連棟式建物は、建物全体を取り壊すよりも一部の切り離しに多大な労力や手間を要するため、工事の過程で隣家に予期せぬ影響が出るリスクを常に孕んでいます。工事完了後の壁の補修方法や、将来的なメンテナンスの責任、万が一損害が発生した際の賠償範囲など、曖昧なまま進めると後から取り返しのつかないトラブルに発展します。
【注意すべきポイント】
- 「合意書」や「覚書」の締結:着工前に、具体的な工事内容や補修の仕様、責任の所在を明記した書面を作成し、双方で署名捺印を行いましょう。
- 写真による現状記録:工事前に隣家との共有部分や境界付近の状態を写真で残し、書面と併せて保管することで、万が一の際の客観的な証拠となります。
面倒に感じるひと手間こそが、自分だけでなく隣人を守り、円滑な再建築を実現するための唯一の防波堤となります。
住宅ローンに通りにくいことを理解しておく
連棟式建物は、隣家の合意なしでは建て替えや大規模な修繕が難しく、自分一人の判断だけで土地や建物を自由に活用できないという制約があります。この「権利の不自由さ」こそが、金融機関からの担保評価を著しく下げる最大の要因です。万が一、住宅ローンの返済が滞った際、金融機関は物件を差し押さえて売却し資金を回収しますが、再建築に制限があり流動性の低い連棟式建物は、担保としての価値が極めて低いとみなされてしまいます。
そのため、いざ購入したいという人が現れたとしても、一般的な銀行の住宅ローン審査が通らない事例が後を絶ちません。仮に融資を受けられたとしても、選択肢が金利の高い金融機関やノンバンクに限定されることが多く、買い手にとってのハードルは非常に高くなります。
【注意すべきポイント】
- 売却時の難易度:担保価値が低いということは、将来売却する際「買い手がローンを組めない」可能性が高いことを意味します。
- 出口戦略の策定:現金購入者に絞って売却するのか、あるいは専門の買取業者に依頼するのか。取得や再建築の段階から、将来の手放し方(出口戦略)をセットで考えておくことが極めて重要です。
「家を建てること」だけに集中せず、その不動産が将来にわたってどのような価値を持つのか、客観的な視点で事前に確認しておきましょう。
「連棟式建物再建築不可」に関するよくある質問
再建築不可物件は2025年からどうなりますか?
2025年4月、建築基準法が大きく改正され、再建築不可物件を取りまく環境は一変しました。特に注目すべきは、これまで「4号特例」によって確認申請の手続きが簡略化されていた多くの木造住宅が、「新2号建築物」という区分に統合された点です。
【新2号建築物の対象】
- 木造2階建て以上の一戸建て住宅
- 木造平屋建てで延床面積が200㎡を超える建物
この新たな分類により、従来は確認申請なしで行えていた大規模なリフォーム(主要構造部の修繕・模様替え)であっても、最新の耐震基準や省エネルギー性能に関する厳格な審査を受ける必要が生じました。これまでは「建て替えは無理でも、フルリフォームで建物を再生させる」という選択肢がありましたが、今後は最新基準を満たすための多額の費用と複雑な手続きが必須となり、改修のハードルは劇的に上がります。
特に廃墟化が進んでいるような物件では、実質的に建物を再利用することは不可能と言わざるを得ません。築古の再建築不可物件は、空き家のまま放置するほど建物が傷み、加速度的に資産価値を失い続けます。「価値がゼロ」になって処分すら困難になる前に、早めに売却活動を行い、資産を整理することが賢明な判断といえるでしょう。
再建築不可になる条件は何ですか?
再建築不可となる最大の要因は、建築基準法で定められた「接道義務」を果たしていないことです。都市計画区域内では、建物の敷地は「建築基準法上の道路」に2メートル以上接していなければなりませんが、この条件を満たさない場合は、原則として新築や建て替えが認められません。
特に注意が必要なのは、見た目には立派な道路に見えても、法的には道路と認められない「通路」や「路地」にしか接していないケースです。稀にあるのが、幅員が4メートル以上あり、日常的に車が通行しているような道であっても、それが建築基準法上の道路(42条道路など)ではなく、単なる「通路」であるというパターンです。この場合、法律上は「未接道」扱いとなり、再建築は不可能となります。
このように、再建築の可否は見た目の印象だけでは決して判断できません。特に連棟式建物の場合、敷地の奥まった住戸が共有の細い通路のみに依存していることも多く、接道状況の判定は非常にシビアです。ご自身の物件が「建て替えられる土地」なのかどうかを正確に把握するためには、思い込みで判断せず、必ず役所の建築指導課などの窓口で道路の「種別」を詳細に確認することが不可欠です。
連棟建物の切り離しは法律で制限されていますか?
連棟式建物の切り離しそのものを一律に禁止する法律はありません。しかし、実務上は「切り離した後の建物(および残された建物)が建築基準法に違反しないこと」という極めて高いハードルが課せられています。
自分の所有分だからといって、無計画に切り離しを行うことはできません。切り離しによって、以下のような規定に抵触する場合、その行為自体が不法行為(民法上の不法行為)とみなされる恐れがあります。
- 容積率・建ぺい率:一体として計算されていた数値が、切り離しによって基準をオーバーしてしまう。
- 接道要件:切り離した側の敷地が道路に2メートル以上接しなくなる。
- 斜線制限:隣地境界線が変わることで、建物の高さ制限に引っかかる。
特に注意すべきは、自分の住戸だけでなく、切り離されたことで「残された隣家」までもが同時に違法状態(違反建築物)になってしまうリスクです。これにより隣人の資産価値を著しく毀損させ、甚大な悪影響を及ぼすだけでなく、多額の損害賠償請求に発展するケースも珍しくありません。
「自分の家だから自由に壊せる」という理屈は、連棟式建物の法規においては通用しないと考え、事前に専門家による緻密な法適合確認を行うことが不可欠です。
越川直之(宅地建物取引士 / 空き家相談士)
代表ブログへ
株式会社フィリアコーポレーション代表取締役の越川直之です。
当社は空き家や再建築不可物件、共有持分など、一般的に売却が難しい不動産の買取・再販を専門とする不動産会社です。
これまでに1000件以上の相談実績があり、複雑な権利関係や法的・物理的制約のある物件にも柔軟に対応してきました。
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当社は地域社会の再生や日本の空き家問題の解決にも取り組んでおり、不動産を通じた社会貢献を目指しています。
