準防火地域

概要

準防火地域とは、都市計画法に基づいて指定される防火地域のうち、比較的火災の危険性が低いと見なされる地域のことです。市街地における火災の発生を抑制し、延焼を防ぐことを目的として、建築物の構造や使用する建材に対し、一定の防火規制が課せられます。防火地域ほど厳しい規制ではありませんが、通常の地域よりも建物の建築費が高くなる傾向があります。

準防火地域の目的と指定の背景

準防火地域は、都市における火災の延焼を防ぎ、地域の安全性を高めるために設けられる地域区分です。特に、市街地の住宅密集地や商業地域周辺などで指定されることが多く、火災が広がるのを防ぐ「延焼遮断帯」の役割も果たします。


準防火地域の目的

火災延焼の抑制:市街地において、一つの建物で発生した火災が周囲に広がるのを防ぎ、被害を最小限に抑えます。

防災性の向上:住民の安全な避難経路を確保し、消防活動を円滑にするための空間を維持します。

都市の安全性の確保:都市全体の防災機能を高め、安心して暮らせる街づくりを推進します。


指定の背景
都市計画法では、火災の危険性が特に高い市街地を「防火地域」、それ以外の火災の危険性がある市街地を「準防火地域」として指定します。これは、都市の建物が密集する中で、万が一火災が発生した場合に大規模な被害につながることを防ぐためです。建築基準法により、これらの地域内で建物を建てる際には、一般的な地域よりも厳しい防火性能が求められることになります。

準防火地域における建築制限と緩和措置

準防火地域に指定された区域では、建築物の構造や使用する建材に対して、特定の防火性能が義務付けられます。


準防火地域内の主な建築制限

耐火建築物または準耐火建築物
◯木造や一般的な鉄骨造の建物は、そのままでは建築できません。主要な構造部(柱、梁、壁、床など)を耐火構造とするか、または準耐火構造としなければなりません。
◯建物の階数や延床面積によって、求められる耐火性能のレベルが異なります。例えば、4階建て以上の建物や延べ床面積1,500平方メートル超の建物は耐火建築物としなければなりません。

開口部の防火措置
◯窓やドアなどの開口部には、防火戸や網入りガラスなど、防火性能の高い建具やガラスを使用することが義務付けられます。これは、火災の延焼を窓から防ぐためです。

隣地境界線からの距離
◯隣地境界線や道路中心線からの距離が一定未満の場合(通常3m以内)、外壁や軒裏を防火構造にすることが義務付けられます。

これらの規制により、準防火地域内の建物は、通常の地域に比べて建築コストが高くなる傾向があります。防火性能を高めるための材料費や施工費が上乗せされるためです。


建ぺい率の緩和措置
準防火地域内では、特定の条件を満たす場合に建ぺい率が10%緩和されることがあります。

耐火建築物等:準防火地域内に建物を耐火建築物または準耐火建築物として建築する場合に適用されます。燃えにくい建物を建てることで、延焼リスクが低減されるため、建ぺい率が緩和されます。

角地緩和との併用:角地緩和と同時に適用される場合もあり、指定建ぺい率に合計で20%が加算されるケースもあります。

準防火地域と「訳アリ不動産」の売却

当社フィリアコーポレーションが専門とする「訳アリ不動産」の中には、準防火地域に位置する物件が少なくありません。これらの物件は、その立地特性ゆえに、以下のような問題から一般的な不動産市場での売却が困難となることがあります。


既存の建物の不適合:準防火地域が指定される以前に建てられた木造家屋や、防火性能が現在の基準を満たさない建物は、「既存不適格建築物」として扱われます。これらの建物を建て替えたり、大規模な増改築を行ったりする場合、現在の準防火地域の規制に適合させなければなりません。これにより、建築費が高額になったり、場合によっては建て替えが事実上困難になったりするケースがあります。

建築費増による買主の敬遠:買主が新しい建物を建てようとしたり、大規模なリフォームを検討したりする場合、準防火地域特有の防火対策費用が上乗せされるため、予算が膨らみがちです。これが、購入を躊躇する大きな要因となります。

老朽化した空き家と解体費用:準防火地域の古い空き家を解体する場合、防火性能の低い建材が使用されていることが多く、その撤去や処分に特別な配慮が必要となる場合があります。これにより、解体費用が通常よりも高額になる可能性があります。

再建築不可物件との複合問題:準防火地域内に接道義務違反の物件(再建築不可物件)が存在する場合、防火規制と建築制限の二重の問題を抱えることになり、さらに売却が困難となります。


当社フィリアコーポレーションは、このような準防火地域の特性と、それに伴う建築・売却の課題を持つ「訳アリ不動産」の買取を専門としています。私たちは、1,000件以上の相談・査定実績から得た実務に基づいたリアルな知見を活かし、準防火地域の規制や建築コスト増のリスクを理解した上で、売主様の状況に応じた最適な解決策をご提案することが可能です。

当社は、契約不適合責任の免除、残置物の処理不要、隣人交渉不要といった形で、売主様の心理的・実務的負担を大幅に軽減することを強みとしています。準防火地域の物件は、「売れない」と諦めてしまうケースが多いですが、当社が直接買い取ることで、売主様は安心して物件を手放すことができます。机上の理論だけでなく、現場で培った対応力と解決事例に基づいて、他の不動産会社では対応が難しい「訳アリ不動産」の売却をサポートすることが当社の強みです。

よくある質問

Q

準防火地域では木造住宅は建てられませんか?

A

いいえ、準防火地域でも木造住宅を建てることは可能です。ただし、建築基準法で定められた「準耐火建築物」または「耐火建築物」の基準に適合させる必要があります。これは、通常の木造住宅よりも防火性能を高めるための構造や建材(防火サイディング、防火構造の屋根、網入りガラスなど)を使用する必要があることを意味します。そのため、一般的な地域で建てる木造住宅に比べて、建築コストは高くなる傾向があります。木造住宅でも、適切な設計と施工を行えば、準防火地域内に建築することは問題ありません。

Q

準防火地域の物件は、普通の地域より高値で売却できますか?

A

一概に高値で売却できるとは限りませんが、準防火地域の物件は、防災性が高いという点で一定の価値を持つと評価されることがあります。しかし、その防火規制による建築コストの増加が、物件価格に上乗せされるため、結果として買主にとっては予算が高くなると感じられ、売却を難しくする要因となる場合もあります。売却価格は、準防火地域であること以上に、立地、築年数、建物の状態、周辺環境、市場の需要と供給など、様々な要因によって決まります。特に、準防火地域内の既存不適格建築物の場合、建て替えや大規模改修に際して現在の防火基準を満たす必要があるため、かえって売却価格が低くなる傾向もあります。ご自身の物件がどのような価値を持つかについては、専門家である不動産会社に査定を依頼することが最も確実です。

Q

準防火地域はどこで確認できますか?

A

準防火地域は、都市計画法に基づいて自治体が指定する地域区分であるため、以下の方法で確認できます。


1.各市区町村の都市計画図(用途地域図):市区町村役場の都市計画課や建築指導課の窓口で閲覧できるほか、多くの自治体ではホームページで公開しています。都市計画図には、用途地域とともに、防火地域や準防火地域が色分けなどで示されています。

2.インターネットの地理情報システム(GIS):一部の自治体では、インターネット上で公開しているGIS(地理情報システム)を使って、住所を入力するだけで用途地域や防火規制地域を確認できるサービスを提供しています。

3.不動産会社:不動産の専門家である不動産会社は、物件調査の際にこれらの情報を確認します。購入や売却を検討している物件がある場合は、不動産会社に問い合わせるのが最も手軽で確実な方法です。

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