市街化調整区域

概要

市街化調整区域とは、都市計画法に基づいて指定される「市街化を抑制すべき区域」のことです。この区域では、無秩序な市街地の拡大を防ぐことを目的とし、原則として建築物の新築や増改築、開発行為が厳しく制限されています。インフラ整備も抑制されるため、農地や森林、自然環境が多く残されており、不動産の売買や活用において、非常に大きな制約を伴う区分となります。

市街化調整区域の目的と特徴

都市計画法は、無秩序な都市の拡大を防ぎ、計画的な街づくりを進めるために、都市計画区域を「市街化区域」と「市街化調整区域」に区分しています。市街化調整区域は、市街化を抑制し、良好な都市環境と自然環境を保全するためのエリアとして位置づけられています。


市街化調整区域の主な目的

無秩序な市街化の防止:都市のスプロール現象(市街地が無秩序に郊外へ拡大すること)を防ぎ、計画的な都市構造を維持します。

優良な農地等の保全:農地や森林など、重要な自然資源や生産基盤を保全し、緑豊かな環境を維持します。

インフラ整備の抑制:道路、上下水道などの公共インフラへの投資を抑制し、効率的な都市運営を図ります。


市街化調整区域の主な特徴

1.建築行為の原則制限:原則として、建物の新築や増改築、宅地造成などの開発行為は許可されません。ただし、例外的に建築が認められるケースもあります(後述)。

2.インフラ整備の抑制:道路や上下水道などの公共インフラ整備が積極的に行われないため、利便性が低い傾向にあります。

3.地価の傾向:建築制限が厳しく、インフラ整備も期待できないため、市街化区域に比べて一般的に地価が低い傾向にあります。

4.自然環境の保持:農地、森林、里山などの自然環境が多く残されており、田園風景や豊かな緑が広がることが多いです。

市街化調整区域における建築制限と例外規定

市街化調整区域は「市街化を抑制すべき区域」であるため、建築行為が厳しく制限されることが最大の特徴です。しかし、一部の例外規定も存在します。


原則的な建築制限

新規の住宅建築は原則不可:一般的な住宅を新たに建てることは、原則としてできません。

開発行為の制限:宅地造成や土地の区画形質の変更を伴う開発行為も原則として許可されません。


例外的に建築が認められるケース(許可が必要)
市街化調整区域内でも、以下のいずれかの要件を満たし、都道府県知事(または政令指定都市の市長)の開発許可や建築許可を得ることで、例外的に建築が認められる場合があります(建築基準法第43条の許可、都市計画法第43条の許可など)。

1.既存の権利者の居住
既存宅地における建築(※原則廃止):かつては、市街化調整区域に指定される以前から宅地であった土地(既存宅地)に建築が認められるケースがありましたが、現在は原則としてこの制度は廃止されています。ただし、自治体によっては、指定前に適法に建築された住宅の建て替えが認められる場合があります。
線引き前建築物:都市計画区域が指定され、市街化区域と市街化調整区域に「線引き」される前から存在していた建物(線引き前建築物)については、一定の範囲内で増改築や建て替えが認められることがあります。
分家住宅:農業や漁業を営む本家から分かれて新たに住居を構える場合など、特定の要件を満たす「分家住宅」の建築が認められることがあります。

2.公共・公益性の高い建築物
◯農林漁業用の施設(農家住宅、農業用倉庫など)
◯病院、学校、社会福祉施設など、地域住民の生活に必要な施設
◯ガソリンスタンド、ドライブインなど、周辺に代替施設がないと認められる沿道サービス施設

2.開発許可制度の適用
◯都市計画法第34条の各号に掲げられている開発行為や建築行為については、例外的に許可が得られる場合があります。これは、主に市街化調整区域の指定目的に反しない範囲で、地域社会に必要不可欠な施設や、既存の集落に限定して建築を認めるものです。


これらの許可を得るためには、複雑な申請手続きと、都市計画法や各自治体の条例に基づく厳格な審査が必要となります。

市街化調整区域の「訳アリ不動産」と売却

当社フィリアコーポレーションが専門とする「訳アリ不動産」の中には、市街化調整区域に位置する物件が非常に多く存在します。市街化調整区域の物件は、前述の建築制限があるため、一般的な不動産市場では売却が極めて困難となります。

具体的な課題としては以下の点が挙げられます。


再建築不可リスク:既存の建物を取り壊すと、原則として新しい建物を建てられない「再建築不可」の状態になるため、土地としての価値が著しく低くなります。

買い手が見つからない:一般の個人や不動産会社は、建築制限や将来的な活用が難しい市街化調整区域の物件を敬遠します。特に、住宅を建てたいと考えている買い手には需要がありません。

金融機関の融資困難:建築制限があるため、担保評価が著しく低くなるか、評価されないことがほとんどです。そのため、住宅ローンや不動産担保ローンなどの融資をほとんど受けることができません。

価格の大幅な下落:上記の理由から、通常の相場よりも大幅に低い価格でしか売却できないことがほとんどです。場合によっては、固定資産税評価額よりも低い価格でしか買い手が見つからないこともあります。

既存不適格建築物の問題:市街化調整区域に指定される前から建っていた建物(既存不適格建築物)であっても、増改築や建て替えには厳しい制限がつきまとうため、活用が難しいです。


当社フィリアコーポレーションは、このような市街化調整区域に位置する「訳アリ不動産」の買取を専門としています。私たちは、1,000件以上の相談・査定実績から得た実務に基づいたリアルな知見を活かし、市街化調整区域の物件が抱える複雑な建築制限や許可要件、そしてそれに伴う活用・売却の難しさを理解した上で、売主様の状況に応じた最適な解決策をご提案することが可能です。

当社は、契約不適合責任の免除、残置物の処理不要、隣人交渉不要といった形で、売主様の心理的・実務的負担を大幅に軽減することを強みとしています。市街化調整区域の物件は、「売れない」と諦めてしまうケースが多いですが、当社が直接買い取ることで、売主様は安心して物件を手放すことができます。机上の理論だけでなく、現場で培った対応力と解決事例に基づいて、他の不動産会社では対応が難しい「訳アリ不動産」の売却をサポートすることが当社の強みです。

よくある質問

Q

市街化調整区域の土地に、家を新築することはできますか?

A

原則として、市街化調整区域の土地に一般的な住宅を新築することはできません。市街化調整区域は「市街化を抑制すべき区域」であり、無秩序な開発を防ぐことを目的としているためです。ただし、前述の通り、特定の例外的なケースに限り、都道府県知事(または政令指定都市の市長)の許可を得ることで建築が可能になる場合があります。例えば、線引き前から宅地であった土地に、既存の建物の建て替えを行う場合や、農林漁業を営む世帯の分家住宅、あるいは地域に必要な公共的施設などを建築する場合などです。これらの許可には、都市計画法や各自治体の条例に基づく厳格な審査が必要であり、一般的な住宅を気軽に建てられるわけではないことを理解しておく必要があります。

Q

市街化調整区域の土地は、売却が難しいと聞きましたが本当ですか?

A

はい、市街化調整区域の土地は、一般的に売却が非常に難しいのが現実です。その主な理由は、建築制限が厳しく、原則として新築や建て替えができないため、土地としての利用価値が極めて低いと評価されるからです。多くの買主は、家を建てたり、事業を行ったりすることを目的として土地を探しますが、市街化調整区域の土地ではその目的が達成できないため、需要が極めて限定されます。また、建築ができない土地は担保としての評価も低くなるため、金融機関からの融資もほとんど期待できません。結果として、買い手を見つけるのが困難になり、売却できたとしても市場価格よりも大幅に低い価格になることが多いです。当社フィリアコーポレーションは、このような売却困難な市街化調整区域の物件を専門に買い取っており、売主様のご負担を軽減しながら売却をサポートしています。

Q

市街化調整区域の土地でも、固定資産税はかかりますか?

A

はい、市街化調整区域の土地でも、固定資産税はかかります。固定資産税は、毎年1月1日時点で土地や建物を所有している者に対して課せられる地方税であり、その土地が市街化区域か市街化調整区域かに関わらず発生します。ただし、市街化調整区域の土地は、その利用制限のために市街化区域の土地に比べて固定資産税評価額が低くなる傾向があります。これは、課税の公平性を保つため、土地の利用価値を評価に反映させているためです。そのため、税額自体は市街化区域の同面積の土地に比べて低くなることが多いですが、それでも毎年納税義務は発生します。特に、売却が進まないまま長年所有していると、固定資産税の負担が継続することになるため、早めの対策を検討することが重要です。

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