コラム記事
譲渡所得税の計算と3000万円控除|古い家を売る際の節税法を解説
公開日 2026年1月29日
最終更新日 2026年1月29日
越川直之(宅地建物取引士 / 空き家相談士)
代表ブログへ訳アリ不動産1,000件以上の相談実績を持つ、空き家・再建築不可・長屋・共有持分の専門家。株式会社フィリアコーポレーション代表取締役。現場経験に基づき、訳アリ不動産売却の正しい知識を監修しています。
株式会社フィリアコーポレーション代表取締役の越川直之です。不動産を売却した際、多くの方が不安に思うのが「どれだけ税金を持っていかれるのか」という点です。特に、親から相続した古い家や、権利関係が複雑な物件を売る場合、計算を間違えると手残りが大幅に減ってしまうリスクがあります。
当社は「不動産業界のプロが頼るプロ」として、これまで1000件以上の訳あり物件を扱ってきました。今回は、知っているだけで数百万円の差が出る譲渡所得税の仕組みと、賢い節税法について現場視点で解説します。
譲渡所得税は何%?2000万円・500万円の計算例を詳しく解説
譲渡所得税の税率は、その不動産を「何年持っていたか」で大きく2つに分かれます。売却した年の1月1日時点で判断します。
- 長期譲渡所得(所有期間5年超):税率20.315%
- 短期譲渡所得(所有期間5年以下):税率39.63%
具体的な納税額のイメージ
売却価格から経費を引いた「利益(譲渡所得)」が以下のようになった場合の税額(長期譲渡の場合)を見てみましょう。
- 利益が500万円の場合:500万円×20.315%=約101万円
- 利益が2000万円の場合:2000万円×20.315%=約406万円
このように、利益が大きくなると納税額も無視できない金額になります。いかに「利益」を適正に圧縮するかが、手残りを増やす鍵となります。
3000万円特別控除の要件|譲渡所得50万円控除との違いも紹介
節税の切り札として有名なのが「居住用財産の3000万円特別控除」です。
3000万円特別控除(マイホーム特例)
自分が住んでいた家を売る場合、利益から最大3000万円まで差し引ける制度です。これにより、ほとんどの一般住宅売却では税金がかからなくなります。
相続空き家の3000万円控除の特例
親が住んでいた実家を相続して売却する場合にも、一定の要件を満たせば3000万円の控除が受けられます。主な要件は以下の通りです。
- 昭和56年5月31日以前に建築された(旧耐震基準)戸建てであること
- 相続開始直前まで親が一人で住んでいたこと
- 相続から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 売却代金が1億円以下であること
- 売却までに「耐震リフォーム」を行うか、建物を取り壊して「更地」で渡すこと
よくある誤解:50万円の特別控除
ネットで検索すると「50万円の特別控除」という言葉が出てくることがありますが、これは主に金地金やゴルフ会員権などの「総合課税の譲渡所得」に適用されるものです。不動産の売却には原則としてこの50万円控除は使えません。不動産には不動産専用の特例があるため、専門家への確認が必須です。
譲渡所得税がかからない方法は?節税対策と控除適用のポイント
譲渡所得の基本式は「譲渡所得=売却代金-(取得費+譲渡費用)」です。
1.譲渡費用(経費)を漏れなく計上する
売却のために支払った費用はすべて差し引けます。一般的な目安は以下の通りです。
- 仲介手数料:約105万円(売却価格3000万円の場合の法定上限)
- 測量費:約55万円(確定測量を行う場合)
- 解体費:約200万円(一般的な木造住宅の場合)
- 印紙代:1万円
2.「取得費」の証明が運命を分ける
「購入時の契約書(2000万円で購入)」があるかないかで、税額は劇的に変わります。売却価格3000万円、譲渡費用360万円(仲介・測量・解体)と仮定して比較してみましょう。
ケースA:購入時2000万円の契約書がある場合
- 3000万円(売値)-2000万円(取得費)-360万円(経費)=利益640万円
- 640万円×20.315%=税額約130万円
ケースB:契約書がなく「5%ルール」を適用する場合
- 3000万円(売値)-150万円(売値の5%)-360万円(経費)=利益2490万円
- 2490万円×20.315%=税額約506万円
その差はなんと376万円です。資料がないだけで、本来払わなくて良いはずの多額の税金を納めることになってしまいます。
古い家や長屋の売却も!税金負担を抑えて賢く手放す出口戦略
再建築不可物件や長屋などの訳あり不動産は、購入時よりも安く売却されることが一般的です。そのため、本来であれば「利益が出ていないので税金はゼロ」のはずです。
「資料がない」だけで税金が発生する罠
しかし、前述した通り「購入時の契約書」がないと、売却額の5%を取得費とするルールが強制適用されます。実際には赤字の売却なのに、帳簿上は大きな利益が出たことになり、譲渡所得税が発生するという理不尽な事態が起こるのです。
フィリアコーポレーションならではの解決策
私たちは、物件の物理的な問題だけでなく、こうした税務上の出口戦略も踏まえてアドバイスを行います。
- 現況買取による経費のシンプル化:弊社が直接買い取ることで仲介手数料をゼロにし、測量や解体などの面倒な手続きも弊社が引き受けます。
- 資料探索のサポート:通帳の記録や抵当権の設定金額など、契約書の代わりになり得る資料の活用をアドバイスします。
- 最適な売却タイミングの提示:特例適用の期限や所有期間を考慮し、最も手残りが多くなる出口戦略を設計します。
訳あり物件こそ、税金を含めたトータルでの解決力が必要です。
【事例】40年前の資料を紛失…「利益ゼロ」のはずが発生した税金の苦悩
東京都内にある再建築不可の物件を売却された売主様の事例です。
相談内容
売主様は相続した実家を売却することにしました。固定資産税評価額は2000万円もありましたが、再建築不可という制約から、実際の売却額は500万円。父が40年前に1200万円で購入したと聞いていましたが、契約書が見当たりません。
発生した問題
売主様は「赤字だから税金はかからない」と確信していました。しかし、資料がないため取得費は売却額の5%である25万円として計算されます。500万円(売値)-25万円(取得費)=475万円の利益が出たとみなされ、約96万円の税金が発生することに。
よくある質問(FAQ)
Q1.売主親から相続した「空き家」を売る場合も3000万円控除は使えますか?
A.売主はい、一定の要件を満たせば「相続空き家の3000万円特別控除」が適用可能です。売主ただし、昭和56年5月31日以前に建てられた家であることや、売却までに耐震リフォームをするか、更地(解体)にする必要があります。また、相続から3年目の年末までに売却するという期限もあるため、早めの検討をお勧めします。弊社では、解体後の更地買取も積極的に行っております。
Q2.売主購入当時の売買契約書がどうしても見つからない場合は、絶対に「5%」で計算されますか?
A.売主原則は5%となりますが、代替資料で認められるケースもあります。売主当時の通帳の引き落とし記録、住宅ローンの金銭消費貸借契約書、不動産会社の領収書、あるいは当時の分譲パンフレットや近隣の地価公示価格などから、合理的に取得費を推計して税務署に認められる可能性があります。資料が見つからない場合も、まずは諦めずに弊社へご相談ください。
Q3.売主相続した不動産の「所有期間」は、親が持っていた期間も含まれますか?
A.売主はい、親御様の所有期間をそのまま引き継ぐことができます。売主例えば、親御様が30年持っていた家を相続してすぐに売却しても、所有期間は「5年超」となり、税率の低い「長期譲渡所得」が適用されます。相続したばかりだからといって、高い税率(短期譲渡)になるわけではないのでご安心ください。
Q4.売主仲介ではなく、御社のような「直接買取」の方が税金面で有利な点はありますか?
A.売主経費計上がシンプルになり、手残りの予測が立てやすくなります。売主仲介の場合、売却が決まるまで仲介手数料や測量費が確定しませんが、直接買取であれば、弊社がそれらのコストを算出した上で買取価格を提示します。また、弊社が買い取る場合は「契約不適合責任」を免除するため、売却後に修繕費用を請求されるリスクがなく、納税資金を確実に確保できるメリットがあります。
Q5.売主譲渡所得税はいつ、どのように支払うのですか?
A.売主不動産を売却した翌年の2月16日〜3月15日の間に確定申告を行い、納税します。売主売却して現金が入ったタイミングですぐに納税するわけではありません。納税額が大きくなる場合、翌年になって慌てないよう、売却資金の中から納税分をあらかじめ分けて保管しておくことが重要です。
越川直之(宅地建物取引士 / 空き家相談士)
代表ブログへ
株式会社フィリアコーポレーション代表取締役の越川直之です。
当社は空き家や再建築不可物件、共有持分など、一般的に売却が難しい不動産の買取・再販を専門とする不動産会社です。
これまでに1000件以上の相談実績があり、複雑な権利関係や法的・物理的制約のある物件にも柔軟に対応してきました。
弊社ホームページでは現場経験に基づいた情報を発信しています。
当社は地域社会の再生や日本の空き家問題の解決にも取り組んでおり、不動産を通じた社会貢献を目指しています。
