借地借家法
概要
借地借家法は、土地や建物を貸し借りする際のルールを定めた法律で、賃借人(借地人・借家人)を保護するための様々な規定が設けられています。地主や家主(賃貸人)と借主(賃借人)の力関係の不均衡を是正し、弱い立場になりがちな借主の権利を守ることを目的としています。例えば土地の賃貸借契約(借地契約)では契約期間や更新のルールを定め、正当な理由がなければ契約更新の拒絶ができないようにするなど、借主が安定して土地や建物を利用できるよう配慮されています。
借地借家法の目的と特徴
借地借家法(しゃくちしゃっかほう)は、平成3年(1991年)の制定以来、不動産の賃貸借契約における借主保護を中心とした内容となっています。それまで存在した旧借地法・旧借家法を一本化し、土地賃借権や建物賃貸借契約のルールを総合的に規定しています。民法の特別法として位置づけられ、契約当事者間で本法の規定より借主に不利な特約を結んでも無効となる「強行法規」的性格を持ちます。つまり貸主と借主が自由に決めた契約であっても、借地借家法に反して借主に不利な内容は認められず、借主保護の原則が貫かれます。このように借地借家法は弱者救済の趣旨が強い一方で、近年では保護が手厚すぎて貸主側の不安要因となり不動産の有効活用を阻害する面も指摘され、定期契約制度の導入などバランスを図る改正も行われています。
借地契約(借地権)に関する主な規定
借地借家法における「借地」とは、建物の所有を目的として土地を借りる契約のことです。借地契約では従来から借地期間が長期に設定され、借地人(借り手)は契約満了時に更新ができます。普通借地権と呼ばれる一般的な借地契約では、初回契約期間は30年(存続期間最低30年)で設定され、その後も一定期間ごとに更新が可能です。貸主である地主が契約更新を拒絶するには、自己利用などの正当事由が必要とされ(借地借家法第6条・第16条)、正当事由がない限り契約は更新され継続します。また、契約満了で更新しない場合でも、借地上の建物について借地人は地主に時価で買い取らせる権利(建物買取請求権)を有しており、地主は借地人から建物を買い取らない限り明渡しを求めることができません。これらの規定によって、土地を借りて建物を所有する借地人の地位は強く保障されています。一方で、平成4年の法施行時に新設された定期借地権では、あらかじめ更新しない契約とする代わりに50年などの長期利用を認める制度が導入されました。定期借地権では契約期間満了で確実に借地関係が終了し、更地にして返還する(建物買取請求権も原則なし)ため、地主・借地人双方が期間満了後の処遇を予め織り込んで利用できます。これは長期に土地が戻ってこないリスクを避けたい地主にとって有用であり、昨今は事業用定期借地権など多様なタイプが不動産取引で活用されています。借地権は譲渡や転貸(また貸し)も可能ですが、本来は地主の承諾が必要とされます。ただし借地借家法では、地主が承諾しない場合でも裁判所の許可を得れば譲渡・転貸ができる仕組みも定められ、借地権の流動性にも配慮がなされています。
建物賃貸借(借家)に関する主な規定
「借家」とは建物の賃貸借契約、つまりアパートや貸家など建物を借りる場合の契約です。借地借家法は借家人(借り手)についても強い保護規定を置いており、契約期間満了時の更新や中途解約の制限が定められています。一般的な住宅の賃貸借契約では契約期間は2年程度とされることが多いですが、期間満了時に貸主が契約を更新しない場合でも正当事由が必要とされています。正当事由とは貸主・借主双方の事情や利用状況、借主への補償提供(立退料)の有無などを総合的に判断して認められるもので、単に貸主の都合だけでは退去させられない仕組みです。仮に契約期間が満了しても借主が住み続けていれば、貸主に正当事由がない限り法定更新により契約は自動的に更新されたものとみなされます。また期間の定めのない賃貸借契約の場合も、貸主が解約申し入れをするには正当事由が必要です。こうした強い借家人保護のため、貸主側は一度貸すと容易に明け渡してもらえないリスクを抱えます。そのため貸主の不安を和らげ空室活用を促進する目的で、2000年の法改正により定期建物賃貸借(定期借家権)が導入されました。定期借家契約では公正証書など書面によって契約を交わし、契約期間が満了すれば原則として更新はなく終了となります(貸主に正当事由がなくても退去いただける)。ただし住居の場合は契約期間が1年以上であることや契約終了の通知を事前に行うことなどの要件があります。定期借家権の導入により、例えば貸主が将来自分で住む予定の住宅を一定期間だけ賃貸に出すといった運用もしやすくなりました。以上のように借家契約でも借主の安定した居住の確保と貸主の合理的な運用ニーズとの調和が図られています。なお、借家人には造作買取請求権(借家人が取り付けた造作設備を退去時に貸主に買い取らせる権利)などの保護もあり、住み替え時の経済的保護も用意されています。
訳あり不動産における借地借家法のトラブル事例
借地借家法は理論上の法律関係だけでなく、不動産取引の現場でも様々なトラブルと関わっています。借地権・底地の問題:例えば「借地権付き建物」は典型的な訳あり物件です。建物の所有者が土地を借りているケースで、建物を売買する際には土地所有者(底地権者)との関係調整が不可欠になります。フィリアコーポレーションのように借地権や底地の流動化を扱う業者では、老朽化した借地権付き住宅を地主ごと買い取って権利を一体化したり、借地権者と底地権者の間で地代や更新条件の交渉を行い円満解決を図ることがあります。借地上の建物が古くなって建替えを検討する場合でも、借地契約が継続中であれば勝手に更地にして再建築することはできず、借地契約の更新や条件変更について地主の承諾が必要です。中には接道義務を満たさず再建築不可となっている古い借地物件もあり、こうしたケースでは現状の建物を活かすリノベーション提案や、隣地の買取・道路拡幅による再建築可能化など権利と法規の両面から解決策を探る必要があります。借家人の明け渡し問題:また、訳あり物件には賃借人(借家人)が居住したままの「オーナーチェンジ物件」や、長期間家賃滞納・無断占有されている物件も含まれます。借地借家法の下では借家人を追い出すのは容易ではないため、こうした物件を売買する際には専門的な対応が求められます。フィリアコーポレーションでは、立退き交渉が必要な物件について法的手続きを踏まえた円滑な交渉を行い、借主に適切な立退き料を提供して合意退去してもらうなどの対応例があります。さらに、共有者間で利用状況が異なる共有不動産や、親族間で使用貸借になっている物件(無償で貸している場合は借地借家法は適用されません)など、権利関係が複雑な不動産でも本法の知識が欠かせません。不動産業者の実務では借地借家法に基づく契約書の整備はもちろん、トラブルが起きた場合の調停・訴訟も見据えて適切な助言を行うことが重要です。訳あり不動産の再生を図る現場では、借地借家法の理解と創意工夫をもって権利調整に当たることで、利用者・所有者双方にとって最善の解決策を導き出しています。
よくある質問
Q
借地権付き物件を購入するときの注意点は?
Q
定期借家契約とは何ですか?普通の賃貸借契約と何が違うのでしょうか?