宅地建物取引士

概要

宅地建物取引士(たくちたてものとりひきし)とは、宅地建物取引業法に基づき、不動産取引の専門家として、購入者や売主様に対して重要な情報を説明し、公正な取引を担保する国家資格者です。通称「宅建士(たっけんし)」と呼ばれ、不動産の売買や賃貸借契約において、重要事項の説明や契約内容の確認といった専門的な業務を行います。不動産取引における消費者の保護を目的として設置された資格であり、その存在は取引の安全と信頼を確保する上で不可欠です。

宅地建物取引士の役割と業務

宅地建物取引士は、不動産取引において非常に重要な役割を担います。その主な業務は、以下の3点に集約されます。


1.重要事項の説明(35条書面):不動産売買契約や賃貸借契約を締結する前に、その不動産に関する重要な情報(登記情報、法令上の制限、インフラ状況、取引条件など)を、宅地建物取引士が書面(35条書面)を交付し、口頭で説明することが義務付けられています。これは、買主や借主が不動産取引のリスクを十分に理解した上で契約を結ぶための、消費者保護の根幹となる業務です。

2.契約内容の確認・記名押印(37条書面):契約が成立した後、その契約内容を記載した書面(37条書面)に、宅地建物取引士が記名押印することが求められます。これにより、契約内容の正確性が担保され、後々のトラブルを防ぐ役割を果たします。

3.公正な取引の推進:宅地建物取引士は、不動産に関する専門知識と倫理観に基づき、売主様と買主様双方の利益を考慮し、公平な立場で取引が円滑に進むよう努めます。 これらの業務は、宅地建物取引業法によって厳格に定められており、不動産会社は宅地建物取引業を営む事務所ごとに、従業員5名につき1名以上の宅地建物取引士を設置することが義務付けられています。当社フィリアコーポレーションのような不動産買取専門業者においても、適正な取引を行う上で宅地建物取引士の存在は不可欠です。

宅地建物取引士の専門性と当社での重要性

宅地建物取引士の資格は、不動産に関する幅広い知識が求められる難関国家資格です。法律(民法、宅地建物取引業法、都市計画法、建築基準法など)、税金(不動産取得税、固定資産税、譲渡所得税など)、不動産の評価、実務に関する知識など、多岐にわたる分野を網羅しています。

特に、当社フィリアコーポレーションが専門とする再建築不可、共有持分、長屋・連棟、法的・物理的制約を伴う不動産といった「訳アリ不動産」の取引においては、宅地建物取引士の専門知識がより一層重要になります。これらの物件は、通常の不動産とは異なる複雑な法的制約や権利関係が絡むため、一般的な取引以上に詳細な調査と、専門的な知識に基づいた説明が求められます。

例えば、再建築不可物件の場合、建築基準法上の道路に接していないため、建物の建て替えができないといった重要な事実を正確に説明する必要があります。また、共有持分の物件であれば、共有者間の関係性や、将来的な分割・売却の見込みなど、通常の単独所有物件では発生しないリスクや可能性を伝える必要があります。長屋・連棟の場合も、隣家との切り離しや再建築における法的な制約など、専門家でなければ正確に把握・説明が難しい点が多々あります。

当社では、1000件以上の相談・査定実績を通じて、これらの権利関係に課題のある物件に関する実務的な知見を蓄積してきました。宅地建物取引士は、この豊富な経験に基づき、売主様に対して契約不適合責任の免除、残置物の処理不要、隣人交渉不要など、売主様の負担を軽減する具体的な提案を行うことが可能です。机上の理論だけでなく、現場で実際に起きた交渉や契約、解決事例を踏まえた説明ができる点は、売主様にとって大きな安心材料となります。宅地建物取引士は、単に法律や制度を説明するだけでなく、「どんな場面で問題になるのか」「売主様にとっての影響」「どう解決してきたか」という、制度説明+実務+感情の3点セットで情報をお伝えすることで、売主様が安心して不動産取引を進められるようサポートします。

よくある質問

Q

宅地建物取引士の資格を持っていれば、誰でも不動産取引ができますか?

A

宅地建物取引士の資格を持っているだけでは、宅地建物取引業を営むことはできません。宅地建物取引業を営むためには、都道府県知事の宅地建物取引業免許が必要です。宅地建物取引士は、その免許を受けた不動産会社に所属し、その会社の業務として「重要事項の説明」などの専門業務を行うことができます。つまり、宅地建物取引士は、不動産取引における特定の専門業務を独占的に行える「業務独占資格」ではありますが、宅地建物取引業自体は会社の免許がなければ行えません。

Q

宅地建物取引士がいないと不動産の売買契約はできないのですか?

A

厳密には、宅地建物取引業者が媒介(仲介)する不動産取引において、重要事項の説明(35条書面)と契約書への記名押印(37条書面)は、宅地建物取引士が行わなければなりません。これらの業務を宅地建物取引士が行わずに契約を締結した場合、宅地建物取引業法違反となります。個人間で直接取引を行う場合や、宅地建物取引業者が関与しない取引であれば、宅地建物取引士の関与は法的に必須ではありません。しかし、法的なリスクやトラブルを避けるためにも、専門家である宅地建物取引士が関与する不動産会社を通して取引を行うことが強く推奨されます。特に、当社が扱うような複雑な権利関係の物件では、専門知識を持つ宅地建物取引士のサポートが不可欠です。

Q

宅地建物取引士の資格はどのように取得できますか?

A

宅地建物取引士の資格を取得するためには、まず宅地建物取引士資格試験に合格する必要があります。この試験は、例年10月に実施される国家試験で、不動産に関する法律、税金、実務など幅広い分野から出題されます。合格率は例年15~17%程度と、比較的難易度の高い試験です。試験合格後、都道府県知事の登録を受け、宅地建物取引士証の交付を受けることで、正式に宅地建物取引士として業務を行うことができるようになります。試験合格は第一歩であり、実務に役立つ知識や経験は、当社のような現場での経験を通じてさらに深められます。

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