建築基準法
概要
建築基準法とは、日本において建築物の安全性や衛生・防火などの最低基準を定める法律です。建物の構造強度や耐震性能、火災予防策から、敷地と道路の接し方(接道義務)や建ぺい率・容積率といった都市計画的な規制まで幅広く規定しています。これらの規定に違反した建物は原則として建築や再建築が認められません。
建築基準法の目的と内容
建築基準法は、簡単に言えば「安心して住み続けられる建物」を実現するためのルールブックです。1950年に制定され、以降も度重なる改正を経て建物の安全性向上に寄与してきました。地震や火災などの災害から命を守り、衛生的で快適な居住環境を確保することがこの法律の目的です。
建築基準法で規定される主なポイントは次のとおりです:
・構造安全:地震・台風に耐える構造強度や耐火性能など、建物の基本的な強度と安全性に関する基準
・防火・避難:延焼を防ぐ防火壁や耐火建材の使用、非常口や避難通路の確保など火災時の安全対策
・衛生環境:換気や採光のための窓の大きさ、トイレやキッチンなど給排水設備の基準、カビ・害虫を防ぐ措置
・敷地条件:建物を建てる敷地と周囲環境に関する制限。特に道路との接続(後述の接道義務)や、敷地内に建ててよい建物のボリューム(建ぺい率・容積率)など
これらのルールは、建物を建築する際に事前に「建築確認申請」を通じて守られているかチェックされます。もし基準を満たさないまま建築すると違法建築となり、使用禁止や除却命令の対象となる場合もあります。また、古い建物で現在の基準を満たしていないもの(既存不適格)も存在しますが、その場合でも増改築や建て替え時には現行の基準に適合させる必要があります。
再建築不可物件と接道義務
不動産取引で耳にする再建築不可物件とは、現在建物が建っていても、いざそれを取り壊して新しく建て直そうとしても建築基準法上で許可が下りない(再建築できない)物件を指します。こうした状態になる最大の要因が接道義務です。建築基準法では建物の敷地と道路との関係が厳格に定められており、これを満たさない土地では原則として新築の許可が得られません。特に都市部の狭い路地に面した古い木造家屋などにこのケースが多く見られます。
接道義務とは、敷地が幅4メートル以上の公道(建築基準法上の道路)に最低2メートル接していなければならないという規定です(建築基準法第43条)。幅4メートル未満の道しか前面にない土地は、この要件を満たさないため基本的に建て替えが認められません。ただし、道路幅が4m未満の場合は、その道路の中心線から2m後退した線を道路境界とみなす決まりがあり、この範囲に建物を建てずに空けておくセットバックを行えば接道義務をクリアできる場合があります。言い換えると、自分の敷地の一部を道路拡幅用地として提供(事実上の敷地縮小)することで、将来的に道路の幅を4mに確保するのです。
一方、敷地がまったく道路に接していない(いわゆる袋地や囲繞地)場合は、建築基準法上の道路に2m以上接することが物理的に不可能なため、通常は再建築不可となります。この場合、再建築を可能にするには、隣接する土地の一部を購入して通路を作るか、他の敷地と合筆(がっぴつ)して一体化するなどで、法定の接道条件を満たす必要があります。しかし現実には、隣地との境界交渉や土地取得は容易ではなく、多くのケースで再建築不可のまま取引されることになります。
再建築不可物件は、事故物件などと同様に訳あり物件の一種として扱われ、市場価値が低く評価されがちです。住宅ローンの利用が難しい場合も多く、購入希望者が限られるため売却にも時間がかかる傾向があります。その反面、現状の建物をリフォームして住み続けたり、賃貸物件として活用したりすれば割安な価格で高利回りの運用ができるというメリットもあります。こうした特性を踏まえ、扱いには専門知識が求められる分野となっています。
フィリアコーポレーションの現場目線:再建築不可物件への対応
当社では、再建築不可物件を含む権利関係が複雑な不動産の取り扱いに豊富な経験があります。実際の現場では、対象物件が建築基準法の要件をどの程度満たしていないかを綿密に調査し、再建築の可能性を多角的に検討します。例えば、前面道路が42条2項道路に該当する場合は必要なセットバック距離を測定し、建替え許可取得のハードルを下げられないか検証します。道路に全く接していないケースでは、隣地所有者への交渉によって通路確保の余地がないか模索するなど、ケースごとに最適な解決策を追求します。
また、当社は各分野の専門家(不動産鑑定士や司法書士、土地家屋調査士など)とも連携し、隣地トラブルや権利関係の調整にも対応しています。売主様にとっては再建築不可という理由で売却をあきらめていた物件でも、現況のまま買取が可能です。不動産のプロとしての視点から適正な査定を行い、法規上の問題点をクリアするための提案を交えながら交渉を進めることで、売主様・購入希望者双方にとって最善となる解決を目指しています。
よくある質問
Q
再建築不可物件とは何ですか?
Q
建築基準法の接道義務とは何ですか?
Q
再建築不可物件でも建て替え(再建築)する方法はありますか?