譲渡所得税
概要
譲渡所得税とは、土地や建物などの不動産を売却して得た利益(譲渡所得)に対して課せられる税金の総称です。所得税と住民税、そして復興特別所得税(2037年まで)で構成されます。不動産を売却した金額そのものではなく、売却によって発生した「利益」が課税対象となる点が重要です。この税金は、給与所得など他の所得とは別に計算される「分離課税」方式が採用されています。
譲渡所得税の計算方法
不動産の譲渡所得税を計算するには、まず「譲渡所得」の金額を算出し、その譲渡所得に税率を乗じるという2段階のステップが必要です。
1.譲渡所得の計算
譲渡所得は、以下の計算式で算出されます。
譲渡所得=不動産の売却価格-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
それぞれの項目について解説します。
・不動産の売却価格(収入金額):不動産を売却して得た金額です。買主から受け取った代金(手付金+残代金)や、固定資産税・都市計画税の精算金なども含まれます。
・取得費:売却した不動産を取得したときにかかった費用の合計額です。
◯購入代金:土地や建物の購入価格。
◯購入時の諸費用:仲介手数料、不動産取得税、登録免許税、司法書士報酬など。
◯改良費:取得後にその物件の価値を高めるために行った増改築費用など。
◯建物については減価償却費を控除:建物は時間の経過とともに価値が減少すると考えられるため、購入時から売却時までの減価償却費相当額を差し引いて取得費を計算します。
◯概算取得費:実際の取得費が不明な場合や、実際の取得費が売却価格の5%未満である場合は、売却価格の5%を取得費とみなして計算することができます。これを「概算取得費」といいます。
・譲渡費用:不動産を売却するために直接かかった費用の合計額です。
仲介手数料、印紙税(売買契約書に貼付したもの)、測量費用、建物解体費用(更地で売却する場合)、譲渡のために弁護士に支払った費用など。
・特別控除額:特定の条件を満たす場合に、譲渡所得から差し引くことができる控除額です。代表的なものに、マイホームを売却した場合の3,000万円特別控除などがあります。後述の「譲渡所得税の特例」で詳しく解説します。
2.税額の計算と税率
譲渡所得に対する税金は、給与所得などの他の所得とは合算せず、個別に税額を計算する「分離課税」方式が採用されています。税率は、不動産の所有期間によって異なります。所有期間の判定は、売却した年の1月1日時点で判断します。
・短期譲渡所得:不動産の所有期間が5年以下の場合に適用されます。
◯税率:所得税30%+住民税9%=計39%(復興特別所得税2.1%が別途加算されます)
・長期譲渡所得:不動産の所有期間が5年を超える場合に適用されます。
◯税率:所得税15%+住民税5%=計20%(復興特別所得税2.1%が別途加算されます)
このように、所有期間が5年を超えるかどうかで税率が大きく異なるため、売却時期を検討する上で重要なポイントとなります。
譲渡所得税の特例
不動産の譲渡所得税には、納税者の負担を軽減するための様々な特例が設けられています。主な特例は以下の通りです。
1.マイホームを売却した場合の3,000万円特別控除:自身が居住していた家屋とその敷地(マイホーム)を売却した場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。この特例は、短期譲渡所得・長期譲渡所得のどちらにも適用され、譲渡所得が3,000万円以下であれば、譲渡所得税はかかりません。
2.被相続人の居住用財産(空き家)を売却した場合の3,000万円特別控除:相続した空き家を売却した場合に、一定の要件(昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること、耐震基準を満たすことなど)を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。これは、空き家対策として設けられた特例です。
3.10年超所有軽減税率の特例:マイホームを売却し、売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えている場合、課税譲渡所得6,000万円までの部分について、通常よりも低い軽減税率(所得税10%、住民税4%)が適用されます。
4.公共事業などのために土地や建物を売却した場合の特別控除:公共事業(道路建設、区画整理事業など)のために土地や建物を売却した場合、最高5,000万円の特別控除を受けられる特例があります。
これらの特例の適用を受けるためには、複雑な要件を満たし、確定申告を行う必要があります。譲渡所得税が発生しない場合でも、特例の適用を受けるためには確定申告が必要です。
譲渡所得税と「訳アリ不動産」の現実
当社フィリアコーポレーションが専門とする「訳アリ不動産」は、譲渡所得税を計算する上で特有の課題を抱えることがあります。
例えば、以下のようなケースです。
・取得費が不明なケース:長年相続を繰り返した古い空き家などでは、取得時の売買契約書などが残っておらず、購入価格(取得費)が不明なケースが多々あります。この場合、前述の概算取得費(売却価格の5%)で計算することになり、結果として譲渡所得が大きくなり、納税額が増える可能性があります。
・相続した空き家特例の適用:「被相続人の居住用財産(空き家)を売却した場合の3,000万円特別控除」は非常に有用ですが、適用要件が厳しく、特に「相続開始の直前まで被相続人以外に居住していないこと」や「一定の耐震基準をクリアしていること」などがネックとなり、特例を利用できない場合があります。当社が買い取るような老朽化した空き家は、この耐震基準を満たさないことがよくあります。
・低額売却による損失:再建築不可、共有持分、長屋・連棟など、様々な問題を抱える「訳アリ不動産」は、市場価値が低く、売却価格が取得費を下回る(譲渡損失が出る)ケースも珍しくありません。譲渡損失が出た場合は譲渡所得税は発生しませんが、他の所得との損益通算が認められるケースは限定的です(マイホームの買い替え特例など)。
当社フィリアコーポレーションは、このような譲渡所得税に関する複雑な問題を抱える「訳アリ不動産」の買取を専門としています。私たちは、1,000件以上の相談・査定実績から得た実務に基づいたリアルな知見を活かし、売主様の状況に応じた税金の問題、特に取得費が不明な場合や特例の適用可能性について、税理士などの専門家と連携しながらアドバイスを提供することが可能です。
当社は、契約不適合責任の免除、残置物の処理不要、隣人交渉不要といった形で、売主様の心理的・実務的負担を大幅に軽減することを強みとしています。譲渡所得税やその他税金の問題で売却を諦めていた場合でも、ぜひ当社にご相談ください。机上の理論だけでなく、現場で培った対応力と解決事例に基づいて、他の不動産会社では対応が難しい「訳アリ不動産」の売却をサポートすることが当社の強みです。
よくある質問
Q
譲渡所得税はいつ、どのように支払うのですか?
Q
譲渡所得税の取得費が不明な場合はどうなりますか?
Q
マイホームを売却した場合の3,000万円特別控除の適用要件を教えてください。
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