容積率
概要
容積率(ようせきりつ)とは、敷地面積に対する建築物の延床面積(各階の床面積の合計)の割合を示す建築基準法上の規制です。都市計画区域内の土地において、建築できる建物の垂直方向の規模の上限を定めており、都市の人口密度を適切に管理し、都市機能の集積と住環境のバランスを保つことを目的としています。この割合は、用途地域や前面道路の幅員によって異なり、特定の条件を満たす場合には緩和されることもあります。
容積率の目的と計算方法
容積率は、都市の適切な発展と快適な住環境の維持のために不可欠な制限です。容積率の制限がなければ、土地いっぱいに高層ビルが乱立し、人口が過度に集中することで、交通渋滞、公共施設の不足、日照不足などの問題が生じる可能性があります。
容積率の目的
・都市の人口密度調整:建築物の延床面積を制限することで、特定の地域に人口や業務が過度に集中するのを防ぎ、都市全体のバランスを保ちます。
・公共施設の負荷軽減:道路、上下水道、学校、公園などの公共インフラへの過度な負荷を抑制し、都市機能が円滑に働くようにします。
・良好な住環境の確保:隣接する建物との距離を適切に保ち、日照、通風、採光を確保することで、居住者の快適な生活環境を維持します。
・都市計画の推進:計画的な建築物の配置と規模制限により、将来を見据えた都市の発展を誘導します。
容積率の計算方法
容積率は、以下の計算式で算出されます。
容積率(%)=建築物の延床面積÷敷地面積×100
・延床面積:建築物の各階の床面積の合計です。駐車場や駐輪場、共同住宅の共用廊下・階段の一部など、特定の用途の床面積は、容積率の計算から除外される特例があります。
・敷地面積:土地の水平投影面積です。ただし、セットバックが必要な土地の場合、セットバック部分は敷地面積に含められません。
例えば、敷地面積が100平方メートルの土地で容積率が200%と定められている場合、延床面積は最大で200平方メートル(100㎡×200%)までとなります。
容積率の制限と緩和条件
容積率の限度(指定容積率)は、都市計画で定められた用途地域によって異なります。一般的に、商業地域など高度な土地利用が求められる地域では容積率が高く(400%~1300%など)、住居系の地域では低く(100%~400%など)設定されています。
また、指定容積率とは別に、前面道路の幅員に応じた制限も存在し、この二つのうち、いずれか低い方がその土地に適用される容積率の上限となります。
前面道路の幅員による制限
敷地が接している前面道路の幅員が12メートル未満の場合、以下の計算式で求められる容積率が上限となることがあります。
・住居系の用途地域:前面道路の幅員×4/10(0.4)
・それ以外の用途地域(商業系、工業系など):前面道路の幅員×6/10(0.6)
例えば、敷地面積100平方メートル、指定容積率300%の土地が、幅員6メートルの前面道路に接している場合、住居系であれば、6m×0.4=2.4(240%)となり、指定容積率300%よりも低い240%が上限となります。この制限があるため、前面道路が狭い土地では、指定容積率が十分に高くても、計画通りの建物を建てられないことがあります。
容積率の緩和条件
特定の条件を満たす敷地や建物では、容積率が緩和されることがあります。
1.特定道路の幅員による緩和:幅員15メートル以上の特定道路に接する土地の場合、容積率が緩和されることがあります。
2.公開空地等による緩和:大規模な建築物において、一般に開放された広場(公開空地)や、地域の貢献に資する施設(地域交流施設、子育て支援施設など)を設けることで、容積率の割増しが認められることがあります。これは、都市再生特別措置法などの特別法に基づく制度でも活用されます。
3.地下室の容積率不算入:地下室の床面積のうち、一定の割合(通常は住宅の延床面積の3分の1まで)は容積率の計算に算入されない特例があります。
これらの緩和措置は、都市の機能向上や防災性の確保に貢献する開発を促進するために設けられています。
容積率オーバーの「訳アリ不動産」
当社フィリアコーポレーションが専門とする「訳アリ不動産」の中には、容積率をオーバーしている物件が少なくありません。これは、建築基準法が施行される以前に建てられた建物や、過去の増改築によって既存の建物が現在の法規制に適合しなくなった「既存不適格建築物」として扱われる場合、あるいは意図的に法律に違反して建てられた「違反建築物」の場合があります。
容積率をオーバーしている物件は、以下のような問題から、一般的な不動産市場では売却が非常に困難となります。
・住宅ローンを組むのが困難:金融機関は、建築基準法に適合しない物件(違反建築物)に対しては、担保評価が著しく低くなるため、住宅ローンや不動産担保ローンの融資をほとんど行いません。これは、買主がローンを組めないため、現金で購入できる層に買い手が限られることを意味します。
・建て替え・増改築ができない:容積率をオーバーしている物件を建て替えたり、大規模な増改築を行ったりする場合、現在の容積率の制限内に収めなければなりません。つまり、現在よりも小さな建物しか建てられないことになり、資産価値が下がってしまう可能性があります。場合によっては、既存の建物の一部を解体して、容積率を適合させる是正措置を求められることもあります。
・行政からの指導・是正命令のリスク:違反建築物の場合、行政(特定行政庁)から建物の是正を指導されたり、最悪の場合、除却命令が出されたりするリスクがあります。違反建築物には時効がないため、所有者が変わっても是正義務は引き継がれます。
・売却価格の大幅な下落:上記のリスクを抱えるため、通常の相場よりも大幅に低い価格でしか売却できないことがほとんどです。
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よくある質問
Q
容積率と建ぺい率の違いは何ですか?
Q
容積率オーバーの物件を購入してしまった場合、どうなりますか?
Q
前面道路の幅員が狭いと容積率が制限されるのはなぜですか?
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