容積率緩和
概要
容積率緩和とは、建築基準法において定められた容積率の制限を、特定の条件を満たす場合に緩めることができる特例制度のことです。これにより、指定された容積率の上限を超えて、より大きな延床面積の建物を建築することが可能になります。都市の高度利用促進、良好な市街地環境の形成、または特定の機能(駐車場、地下室など)の導入を促すことを目的としています。
容積率緩和の基本的な考え方と目的
容積率は、敷地面積に対する延床面積(建物の各階の床面積の合計)の割合を制限し、都市の人口密度や公共施設の負荷を調整するための重要な規制です。しかし、都市の再活性化や特定のニーズに応えるためには、一律の規制では不都合が生じる場合があります。そこで、「容積率緩和」という制度が設けられています。
容積率緩和の目的
・都市の高度利用の促進:特に、交通の便が良い都心部などにおいて、より大規模なオフィスビルや商業施設、マンションなどを建設できるようにすることで、土地の有効活用と経済活動の活性化を図ります。
・公共的な貢献へのインセンティブ:公開空地(一般に開放された広場)の確保や、地域に貢献する施設(子育て支援施設、地域交流施設など)の設置を促すことで、都市環境全体の質向上に繋げます。
・防災性・利便性の向上:安全性や利便性を高めるための施設(駐車場、地下室、エレベーターシャフトなど)の設置を奨励し、都市機能の強化を図ります。
容積率の緩和は、単に建築面積を増やすだけでなく、建築計画に柔軟性を持たせ、より魅力的な建物の建設を可能にする制度と言えます。
容積率緩和の主な種類と適用条件
容積率緩和には、大きく分けて「延床面積に算入しない特例」と「指定容積率を割り増す特例」の2種類があります。
1.延床面積に算入しない特例(特定の床面積の除外)
建築基準法では、特定の機能を持つ空間については、その床面積を容積率の計算から除外できると定められています。これにより、実質的に許容される延床面積が増えます。
・地下室:住宅や老人ホームなどの地階(地下室)の床面積のうち、住宅の用途部分の床面積の3分の1を限度として、容積率の計算から除外されます。これにより、地下室を設けることで、地上部分の居住空間をより広く確保できるようになります。
・共同住宅の共用廊下・階段:共同住宅(マンションなど)において、入居者が共同で利用する廊下や階段、エレベーターの昇降路部分の床面積は、容積率の計算に算入されません。
・駐車場・駐輪場:建築物の延床面積に対する駐車場や駐輪場の床面積の5分の1を限度として、容積率の計算から除外されます。特に都市部では、駐車場の確保が課題となるため、この緩和措置は駐車施設の設置を促します。
・その他の免除項目:近年では、防災のために設ける備蓄倉庫(延床面積の1/100まで)、蓄電池(延床面積の1/50まで)、貯水槽(延床面積の1/50まで)、宅配ボックス(延床面積の1/100まで)なども容積率の計算から除外されることがあります。
・バルコニー・出窓など:バルコニー、ベランダ、庇などの外壁から突き出した部分のうち、1メートル以内であれば容積率の計算に含めなくても良いという緩和条件があります。また、床面から高さ30cm以上、外壁から50cm以内、かつ窓部分が1/2以上を占める出窓も床面積に算入されません。
・ロフト・屋根裏収納:ロフトや屋根裏収納は、その直下の床面積に対して1/2以内であり、かつ天井高が1.4メートル以下などの条件を満たせば、延床面積の計算に含めなくても良いとされています。
2.指定容積率を割り増す特例(公開空地などによる容積率割増し)
敷地内に公共性の高い空間や施設を設けることで、もともと定められた指定容積率を割り増すことができる制度です。
・総合設計制度:敷地内に一定割合以上の空地(公開空地)を確保し、市街地の環境改善に貢献すると認められる建築計画に対して、容積率の制限を緩和する制度です。
・特定街区制度:市街地の整備改善を図るため、良好な環境と健全な形態を有する建築物の建築と合わせて有効な空地を確保するものについて、容積率等の緩和を行います。
・都市再生特別措置法による特例(都市再生特別地区など):都市の国際競争力強化や都市機能高度化のため、国が指定する「都市再生緊急整備地域」内において、公開空地や地域貢献施設(子育て支援施設、交流施設など)を整備することで、指定容積率を大幅に緩和し、より高層・大規模な建築物を建てられるようになります。
これらの緩和措置を適用するためには、所管の特定行政庁(自治体の建築指導課など)への詳細な計画書の提出や、審査・許可が必要となります。
容積率緩和と「訳アリ不動産」の解決
当社フィリアコーポレーションが専門とする「訳アリ不動産」の中には、容積率緩和の恩恵を受けにくい、あるいは緩和措置を適用しても根本的な問題が解決しない物件が少なくありません。
例えば、以下のようなケースです。
・老朽化した空き家と建築基準法:容積率緩和は、新たな建築や大規模な増改築を前提とした制度です。長年放置された老朽化した空き家の場合、そもそも建物の状態が悪く、緩和措置を適用してまで大規模な再建を考えるほどの価値が見いだせない、あるいは、現存する建物が既存不適格建築物であり、緩和を受けても現在の建物より小さくなるなどの問題があります。
・再建築不可物件:建築基準法上の道路に接していないなどの理由で「再建築不可」とされている物件は、容積率の緩和を受けても、そもそも新しい建物を建てることができないため、そのメリットを享受できません。これは、土地が持つ「再建築可能」という前提が崩れているためです。
・狭小地や不整形地:容積率緩和を受けても、敷地自体が極端に狭かったり、不整形であったりする場合、建築可能な延床面積が増えても、現実的に効率の良い建物を設計・建築することが難しいことがあります。
・共有持分物件:複数人が共有する不動産の場合、容積率緩和を適用した大規模な建築計画を進めるには、全ての共有者の合意が必要となります。権利関係が複雑な物件では、この合意形成が非常に困難です。
当社フィリアコーポレーションは、このような容積率緩和の恩恵が活かせない、あるいは緩和措置を適用しても市場での売却が困難な「訳アリ不動産」の買取を専門としています。私たちは、1,000件以上の相談・査定実績から得た実務に基づいたリアルな知見を活かし、容積率緩和の可能性と、それが物件に与える影響を理解した上で、売主様の状況に応じた最適な解決策をご提案することが可能です。
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よくある質問
Q
容積率緩和によって、建ぺい率も緩和されますか?
Q
地下室を造ると容積率の計算から除外されるのはなぜですか?
Q
容積率緩和の適用を受けるには、どのような手続きが必要ですか?
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