建ぺい率

概要

建ぺい率(けんぺいりつ)とは、敷地面積に対する建築面積(建物を真上から見たときの面積)の割合を示す建築基準法上の規制です。都市計画区域内の土地において、建築できる建物の水平方向の広さの上限を定めており、日照、通風、防災といった市街地の環境を確保することを目的としています。この割合は、用途地域によって異なり、また特定の条件を満たす場合には緩和されることもあります。

建ぺい率の目的と計算方法

建ぺい率は、都市環境を守り、住みやすい街づくりを進めるための重要な制限です。もし建ぺい率の制限がなければ、敷地いっぱいに建物が建てられ、隣の家との間隔が極端に狭くなったり、日当たりや風通しが悪くなったり、火災発生時の延焼リスクが高まったりする可能性があります。


建ぺい率の目的

日照・通風の確保:敷地に一定の空地を残すことで、隣接する建物への日当たりや風通しを確保し、快適な居住環境を維持します。

防災性の向上:建物と建物の間に空間を設けることで、火災発生時の延焼拡大を防ぎ、避難経路を確保しやすくします。

市街地の環境維持:密集した市街地となることを防ぎ、開放感のある良好な都市景観を保ちます。


建ぺい率の計算方法

建ぺい率は、以下の計算式で算出されます。
建ぺい率(%)=建築面積÷敷地面積×100

建築面積:建築物を真上から見たときの水平投影面積です。一般的には1階部分の面積と認識されがちですが、庇(ひさし)や軒(のき)などが外壁から1メートル以上突き出している場合は、その突き出た部分も建築面積に算入されます。

敷地面積:土地の水平投影面積です。ただし、セットバックが必要な土地の場合、セットバック部分は敷地面積に含められません


例えば、敷地面積が100平方メートルの土地で建ぺい率が60%と定められている場合、建築面積は最大で60平方メートル(100㎡×60%)までとなります。

建ぺい率の制限と緩和条件

建ぺい率の限度(指定建ぺい率)は、用途地域によって都市計画で定められています。用途地域は、住居系、商業系、工業系など13種類に分類され、地域ごとに建ぺい率の許容値が異なります。一般的に、商業地域など土地の高度利用が求められる地域では建ぺい率が高く(80%など)、低層住宅が主体の地域では低く(30%~60%など)設定されています。


建ぺい率の緩和条件
特定の条件を満たす敷地や建物では、指定建ぺい率に10%が加算されるなどの緩和措置が適用されることがあります。

1.角地緩和
・敷地が2つ以上の道路に接している角地である場合や、これに準ずる敷地である場合に適用されます。角地は、避難経路や日照・通風の確保がしやすいと見なされるためです。
・具体的な要件(道路幅員、接道長さ、交わる角度など)は自治体によって異なるため、確認が必要です。

2.防火地域内の耐火建築物等
・都市計画で「防火地域」に指定されているエリア内で、建物を耐火建築物または同等の延焼防止性能を持つ建物(準耐火建築物など)とする場合に適用されます。燃えにくい建物を建てることで、延焼リスクが低減されるため、建ぺい率が緩和されます。
・特に、指定建ぺい率が80%の地域で、かつ防火地域内にある耐火建築物であれば、建ぺい率の制限がなくなる(実質100%まで建築可能となる)特例があります。

3.特定行政庁が指定した両面道路の敷地や公園・広場・河川等に面する敷地:特定の条件を満たす両面道路の敷地や、公園、広場、河川などに接している敷地も、日照・通風・防災上のメリットから、建ぺい率が緩和されることがあります。


これらの緩和条件は、原則として重複適用はできませんが、組み合わさることで最大限の建ぺい率で建物を建築できる場合があります。

建ぺい率オーバーの「訳アリ不動産」

当社フィリアコーポレーションが専門とする「訳アリ不動産」の中には、建ぺい率をオーバーしている物件が少なくありません。これは、建築基準法が施行される以前に建てられた建物や、増改築を繰り返した結果、既存の建物が現在の法規制に適合しなくなった「既存不適格建築物」として扱われる場合や、意図的に法律に違反して建てられた「違反建築物」の場合があります。

建ぺい率をオーバーしている物件は、以下のような問題から、一般的な不動産市場では売却が非常に困難となります。


住宅ローンを組むのが困難:金融機関は、建築基準法に適合しない物件(違反建築物)に対しては、担保評価が著しく低くなるため、住宅ローンや不動産担保ローンの融資をほとんど行いません。これは、買主がローンを組めないため、現金で購入できる層に買い手が限られることを意味します。

建て替え・増改築ができない:建ぺい率をオーバーしている物件を建て替えたり、大規模な増改築を行ったりする場合、現在の建ぺい率の制限内に収めなければなりません。つまり、現在よりも小さな建物しか建てられないことになり、資産価値が下がってしまう可能性があります。場合によっては、既存の建物の一部を解体して、建ぺい率を適合させる是正措置を求められることもあります。

行政からの指導・是正命令のリスク:違反建築物の場合、行政(特定行政庁)から建物の是正を指導されたり、最悪の場合、除却命令が出されたりするリスクがあります。違反建築物には時効がないため、所有者が変わっても是正義務は引き継がれます

売却価格の大幅な下落:上記のリスクを抱えるため、通常の相場よりも大幅に低い価格でしか売却できないことがほとんどです。


当社フィリアコーポレーションは、このような建ぺい率をオーバーしている「訳アリ不動産」の買取を専門としています。私たちは、1,000件以上の相談・査定実績から得た実務に基づいたリアルな知見を活かし、建ぺい率オーバーの物件が抱える複雑な問題を理解した上で、売主様の状況に応じた最適な解決策をご提案することが可能です。

当社は、契約不適合責任の免除、残置物の処理不要、隣人交渉不要など、売主様の心理的・実務的負担を大幅に軽減することを強みとしています。建ぺい率オーバーによって売却が難しくなった不動産であっても、当社が直接買い取ることで、売主様は安心して物件を手放すことができます。机上の理論だけでなく、現場で培った対応力と解決事例に基づいて、他の不動産会社では対応が難しい「訳アリ不動産」の売却をサポートすることが当社の強みです。

よくある質問

Q

建ぺい率と容積率の違いは何ですか?

A

建ぺい率と容積率は、ともに建築物の規模を制限する建築基準法上のルールですが、それぞれ制限する対象が異なります。


建ぺい率:敷地面積に対する建築面積(建物を真上から見たときの面積)の割合です。建物を「水平方向」にどれくらい広く建てられるかを制限し、敷地内の空地を確保して日照や通風、防災性を維持することを目的とします。

容積率:敷地面積に対する延床面積(建物の各階の床面積の合計)の割合です。建物を「垂直方向」にどれくらい大きく建てられるかを制限し、都市全体の建物規模や人口密度をコントロールすることを目的とします。例えば、敷地面積100㎡、建ぺい率60%、容積率200%の土地の場合、建築面積は最大60㎡、延床面積は最大200㎡までとなります。

Q

建ぺい率オーバーの物件を購入してしまった場合、どうなりますか?

A

建ぺい率オーバーの物件を購入してしまった場合、以下のようなデメリットやリスクを抱えることになります。


1.住宅ローンの利用が困難:多くの金融機関は、建ぺい率オーバーの物件に対して融資を行わないか、審査が非常に厳しくなります。

2.建て替え・増改築時の制限:建て替えや大規模な増改築を行う場合、現在の建ぺい率の制限内に収まるようにしなければなりません。そのため、現在より小さな建物しか建てられなくなる可能性があります。

3.行政指導・是正命令のリスク:違反建築物である場合、行政から建物の是正(一部撤去など)を求められたり、最終的には除却命令が出されたりする可能性があります。これらの義務は、新しい所有者にも引き継がれます。

4.売却の困難さ:上記の理由から、将来的に売却しようとしても買い手が見つかりにくく、価格も大幅に下落する傾向にあります。購入前に物件が建ぺい率を遵守しているか、また既存不適格建築物か違反建築物かを不動産会社や建築士にしっかり確認することが重要です。

Q

建ぺい率の緩和を受けるには、どうすればいいですか?

A

建ぺい率の緩和を受けるためには、まずご自身の土地が以下のいずれかの条件を満たしているかを確認する必要があります。


1.角地であるか:道路に二面以上接しているか、それに準ずる敷地であるか。自治体によって認定基準が異なりますので、事前に確認が必要です。

2.防火地域または準防火地域内にあるか:都市計画図で確認できます。その上で、建物を耐火建築物や準耐火建築物として建築する計画があるか。

3.両面道路に接しているか、公園・広場・河川等に面しているか:特定行政庁が指定する条件を満たすか。これらの条件に該当する場合、建築確認申請の際にその旨を申告し、必要書類(公図、測量図、建築計画図など)を提出することで緩和が適用されます。適用されるかどうかは、最終的には特定行政庁(自治体の建築指導課など)が判断しますので、事前に相談することが確実です。当社フィリアコーポレーションは、不動産の法規制に関する知見も豊富ですので、ご不明な点があればご相談ください。

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