コラム記事
長屋の売却相場はいくら?プロがわかりやすく徹底解説
公開日 2026年2月1日
最終更新日 2026年2月1日
越川直之(宅地建物取引士 / 空き家相談士)
代表ブログへ訳アリ不動産1,000件以上の相談実績を持つ、空き家・再建築不可・長屋・共有持分の専門家。株式会社フィリアコーポレーション代表取締役。現場経験に基づき、訳アリ不動産売却の正しい知識を監修しています。
目次
長屋とは
「長屋(連棟式建物)」とは、2戸以上の住宅が壁を共有して一棟に連なっている建物を指します。建築基準法上は「長屋」に分類され、マンションやアパートのような共用のエントランスや階段を持たず、各住戸が直接外に通じる独立した玄関を持っているのが特徴です。いわば「戸建てと集合住宅の中間」のような形態といえます。
このような構造で建てられる最大の理由は、限られた土地を有効活用するためです。日本の法律では、家を建てる際に「道路に2m以上接していること(接道義務)」が求められます。間口が狭く奥行きが深い土地に複数の戸建てを建てるのは困難ですが、一つの建物として連結させる「長屋」形式であれば、条件をクリアしつつ効率的に複数の住戸を配置できるのです。
また、連棟式建物は土地の権利形態によって主に2種類に分けられます。
テラスハウス:土地の所有権が1戸ごとに区分されており、戸建てに近い権利形態。
タウンハウス:マンションのように土地の所有権を住人全員で共有する形態。
特に古い長屋は、こうした権利関係が現代の基準に合わず複雑化しているケースが多く、売却相場にも大きな影響を及ぼします。まずはご自身の物件がどちらの形態に近いのかを把握することが、売却への第一歩となります。
長屋の売却相場
一般的に、長屋の売却相場は通常の一戸建てと比較して「2〜3割減」と言われることが多いです。しかし、1,000件以上の現場を直接見てきた私の経験から申し上げれば、現実はこれほど単純な数字に収まるものではありません。
実際には、立地条件や接続されている住戸数、関係する所有者の人数、そして何より室内の管理状態によって、価格は驚くほど大きく変動します。長屋は構造上の制約から「再建築不可」に近い扱いを受けるため、土地値の計算よりも「今ある建物をどう活かせるか」という実用性が価値を左右するからです。私の感覚では、実際に取引される長屋の8割以上は建物を活かす形になります。そのため、画一的な査定では本当の価値を見落としてしまいます。
このように計算式で簡単にはじき出せない不確定要素があまりに多いため、一般的な不動産会社は査定を誤り、あるいはリスクを恐れて匙を投げてしまうのが実情です。長屋の相場は、机上の計算ではなく、実務の現場を知り尽くしたプロの目利きがあって初めて算出できる。それが、この業界における真実です。
比較的売却しやすい長屋の特徴
長屋は一般的に敬遠されがちな物件ですが、特定の条件を満たしている場合は、比較的スムーズに、かつ好条件で売却できるケースがあります。
まず大きなポイントは、「土地の権利を単独で所有している」ことです。共有持分や借地権ではなく、自分の区画の土地を自分一人の名義で所有していれば、売却時の意思決定がスムーズになり、買主側のローン審査にもプラスに働きます。次に、「建築基準法上の道路に面しており、再建築の可能性がある」点です。将来的に切り離し承諾を得て単独で建て替えができる見込みがある物件は、出口戦略が描きやすいため、資産価値が落ちにくい傾向にあります。
さらに、「立地条件による収益性の高さ」も重要です。特に駅近の物件で、住宅としてだけでなく店舗や事務所としての需要が見込める場合、投資家や事業主からの引き合いが強くなります。長屋特有のレトロな雰囲気を活かしたリノベーション素材としての価値があれば、周辺の相場に左右されず、収益物件として高値で取引されることも珍しくありません。
こうした強みを持つ物件は、長屋の扱いに慣れたプロが適切にアピールすることで、その価値を最大限に引き出すことが可能です。
長屋の売却方法
長屋は一般的な戸建て住宅とは市場性が大きく異なるため、通常のポータルサイトに掲載して一般の買い手を待つだけでは、なかなか成約に至りません。長屋を確実に、かつ納得のいく形で手放すためには、物件の特殊性を理解した上で、以下の3つのいずれかの戦略をとるのが現実的です。
- 隣人に買い取ってもらう
隣家にとっては、購入することで土地が広がり、将来的に単独での建て替えが可能になるという大きなメリットがあります。最も合理的で、条件次第では高値がつきやすい方法です。
- 建物全体(一棟)をまとめて売却する
他の所有者全員と協力し、一棟まるごと売却します。まとまった土地として扱えるため、資産価値が最大化され、デベロッパーなどの業者も買い手候補に入ってきます。
- 訳あり物件に対応する買取業者に売却する
隣人との調整が困難な場合や、手間をかけずに即現金化したい場合に最適です。弊社のような専門業者が、複雑な権利関係や老朽化を承知の上で、現状のまま直接買い取ります。
ここからは、それぞれの売却方法における具体的なメリットや注意点について詳しく解説していきます。
隣人に買い取ってもらう
長屋売却において、最も身近で検討しやすい選択肢の一つが「隣人に買い取ってもらう」ことです。隣人は既に同じ長屋の所有者ですから、建物の構造的な制約や近隣環境、修繕の難しさといった「長屋特有の問題点」を身をもって理解しています。外部の買い手のようにゼロからリスクを説明する必要がなく、話が非常にスムーズに進むのが最大のメリットです。
隣人にとっても、この提案は大きなメリットがあります。隣の住戸を買い取ることで、敷地面積が広がり、これまで不可能だった「単独での建て替え」や「自由度の高いリフォーム」が現実のものとなります。自分の持ち家の資産価値を劇的に高めるチャンスであるため、前向きに検討してくれるケースが多いのです。
ただし、現実的な最大のネックは「隣人の資金力」です。いくら購入意欲があっても、手元に十分な現金がなければ話は止まってしまいます。前述した通り、長屋は金融機関の評価が低く、住宅ローンを組むことが極めて困難です。そのため、隣人が融資を受けられずに泣く泣く断念するケースも珍しくありません。また、近隣関係があるがゆえに価格交渉が感情的になりやすく、相場より安く買い叩かれそうになるリスクにも注意が必要です。
建物全体(一棟)をまとめて売却する
長屋が抱える最大の弱点である「単独での建て替え不可」という問題を、一気に解消できるのがこの方法です。棟を構成するすべての住戸を一つの土地としてまとめて売却することで、共有壁や切り離しの制限を一切気にする必要がなくなります。これにより、市場における物件の扱いは「制限の多い長屋」から「再建築可能な優良な土地」へと劇的に変化します。
一棟まるごとであれば、デベロッパーやハウスメーカーがマンションや新築戸建ての用地として検討できるため、市場価格は通常の宅地並み、あるいはそれ以上の最高値での取引が期待できます。バラバラに売却するよりも、一人あたりの受取額が大幅に増えることが最大のメリットです。
しかし、この方法には「所有者全員の完全な合意」という極めて高いハードルが存在します。例えば5戸が連なる長屋であれば、5世帯すべての所有者が「今、この条件で売る」ことに同意しなければなりません。「高齢なので住み続けたい」「相続人が複数いて連絡がつかない」といった個別の事情が一つでもあると、計画は一歩も前に進まなくなります。理論上は最も高値で売れる理想的な解決策ですが、利害関係の調整に膨大な時間と労力がかかるため、現実には実現が非常に困難な手法でもあります。
訳あり物件に対応する買取業者に売却する
長屋の売却において、最も確実でスピーディーな解決策となるのが「専門の買取業者への売却」です。長屋は権利関係や構造上の制約があまりに複雑なため、大手仲介会社や一般的な不動産会社に相談しても、手間やリスクを嫌って門前払いにされたり、形だけ預かって放置されたりすることが少なくありません。
しかし、弊社のような専門業者は、それらの「リスク」を価値に変えるノウハウを持っています。売主様が最も負担に感じる「隣人との交渉」や「境界測量」、さらには「室内の残置物撤去」などは一切不要です。すべてを弊社が引き受ける「現況引渡し」の条件で、即日の売却決定も可能です。
実は弊社、一般のお客様だけでなく、名だたる大手仲介会社から「この物件をフィリアコーポレーションさんで買い取ってくれませんか?」と打診を受けることが非常に多いのです。いわば、「プロが匙を投げた物件を最後に引き受ける、実務の総本山」という立ち位置です。「どこに行っても断られた」「隣人と顔を合わせたくない」といった深刻な状況でも、私たちはプロ中のプロとして責任を持って買い取ります。精神的な負担から解放されるための最短ルートとして、ぜひご活用ください。
長屋の売却が難しい理由
長屋の売却活動を始めると、多くの方が「これほどまでに話が進まないものか」と驚かれます。一般的な一戸建て売却のノウハウが全く通用しないのは、長屋が隣家と運命を共にする「連結構造」という特殊な形態だからです。
具体的に売却を阻む要因は、主に以下の6点に集約されます。
- 売却・解体には住民全員の許可が必要のため:独断での処分が法律的・構造的に制限されます。
- 現実問題切り離しが難しいため:物理的な解体が隣家の倒壊リスクに直結します。
- 自由にリフォームできないため:共有部分や柱への配慮が必要で、理想の間取りが実現できません。
- 住宅ローンが通りにくいため:金融機関が担保価値を極めて低く評価します。
- 権利関係が複雑な場合があるため:借地権や共有持分が絡み合い、整理に膨大な時間がかかります。
- 大半が老朽化しているため:長年の放置によるダメージが資産価値を著しく奪っています。
これらの障壁が一つでも存在すると、一般の買主は二の足を踏み、多くの仲介会社も「手に負えない」と積極的な活動を避けるようになります。ここからは、それぞれの理由について、現場の実務者としての視点から詳しく掘り下げていきます。
売却・解体には住民全員の許可が必要のため
長屋が「所有者の運命共同体」と言われる所以は、建物全体を一体として売却や解体を行う際、住人(所有者)全員の完全な同意が不可欠であるという点にあります。例えば、2世帯で構成される小さな連棟式建物であっても、一方が売却に前向きでも、もう一方が反対すれば、建物全体を売却する計画は瞬時に頓挫します。
特に解体については、法律上も構造上も名義人全員の許可なしに進めることはできません。たとえ建物が老朽化し、更地にして再建築したほうが土地の価値を最大限に活かせる条件が揃っていたとしても、自分一人の判断で話を進めることは不可能です。
売主様が「早く手放して現金化したい」と願っても、隣家にとってはそこが「現在進行形の住まい」である場合、合意を得ることは極めて困難です。この「たった一人の反対」によって、本来なら価値のある土地が、誰の手にも負えない「負の不動産」として放置されてしまうのが長屋売却の厳しい現実です。こうした合意形成の難しさが、多くの仲介会社が長屋の取り扱いを敬遠する大きな理由となっています。
現実問題切り離しが難しいため
長屋を切り離して単独の戸建てとして再生するという計画は、実務上、机上の空論に近いものがあります。長屋は隣家と「壁」だけでなく、基礎や屋根の構造自体を共有していることが多いため、自戸だけを物理的に切り離すのは至難の業だからです。
もし切り離しを強行しようとすれば、剥き出しになった隣家の側面に新たな外壁を設置し、構造を補強する大規模な工事が不可欠となります。この工事には激しい騒音や振動が伴い、隣人の生活環境を著しく害します。さらに、最悪のケースでは工事の衝撃や構造の変化によって、残された隣家が倒壊するリスクすら孕んでいます。隣人の立場からすれば、こうした甚大なリスクやストレスを負ってまで切り離しを承諾するメリットは皆無に等しいため、円満な同意を得られることは極めて稀です。
弊社は「プロが頼るプロ」として数多くの長屋を買い取ってきましたが、実務の中で切り離し承諾をスムーズに取得し、実際に切り離し解体まで至った事例はごく僅かです。この「物理的な切り離しの壁」があるからこそ、長屋は土地として正当に評価されず、売却を困難にさせているのです。
自由にリフォームできないため
昨今のリノベーションブームにより、「中古物件を安く買って自分好みに作り替えたい」というニーズが増えていますが、長屋(連棟住宅)に関してはその自由度が著しく制限されます。最大の理由は、隣家と共有している壁が建物全体の荷重を支える「主要構造部」を兼ねているケースが多い点です。
安易に壁を抜いたり、大規模な間取り変更を行ったりすることは、自戸だけでなく棟全体の強度を損ない、最悪の場合は倒壊を招く深刻なリスクを伴います。また、物理的な問題以上に厄介なのが権利関係です。共有壁は文字通り隣人との「共有財産」であるため、法的な観点からも独断で手を加えることは許されません。
買い手にとって、大金を投じて購入するマイホームに「間取りが変えられない」「窓を増やせない」といった制約があることは、購入を断念させる決定的なマイナス要因となります。理想の住まいを追求できない物件は、必然的に買い手のターゲット層を極端に狭めてしまい、結果として売却を一層困難にさせているのが実情です。
住宅ローンが通りにくいため
不動産取引において、買い手のほとんどは住宅ローンを利用します。しかし、金融機関が融資を判断する際、最も重視するのは物件の「担保価値」です。万が一返済が滞った際に、その物件を売却して資金を回収できるかどうかが厳しくチェックされます。
長屋の場合、これまで挙げた通り「単独での再建築が困難」であることや、築古ゆえに「土地の境界が不明確」であるケースが非常に多く、銀行から見れば「出口戦略(売却)が描きにくいリスク物件」と判定されます。その結果、一般的な戸建て住宅に比べて担保評価は著しく低くなり、融資が否決されたり、借入可能額が大幅に減額されたりするのが現実です。
どれほど物件を気に入った買い手が現れても、ローンが通らなければ契約は成立しません。そうなると、購入できるのは「現金一括」で支払える層に限られますが、潤沢な手元資金を持つ人々は、わざわざ将来のトラブルリスクや担保価値の低さを承知で長屋を選ぶでしょうか。投資家層であっても、より出口が明確な物件を優先するため、「ローンは組めず、現金客にも選ばれない」という、資金調達の面から見た深刻な買い手不足に陥るのです。
権利関係が複雑な場合があるため
長屋(連棟式建物)の多くは築年数が古く、その歴史的背景から、土地が第三者の所有である「借地権」の物件であるケースが少なくありません。ただでさえ隣家との壁の共有や構造上の制約により流動性が低い長屋において、この借地権という要素が加わることで、売却の難易度はさらに跳ね上がります。
借地権付きの長屋を売却する際には、建物の所有者だけでなく、地主(底地人)の承諾を得るという高いハードルが立ちはだかります。交渉がスムーズに進めば良いですが、地主との関係性によっては承諾を得るまでに多大な労力と時間を要します。さらに、売却にあたっては「譲渡承諾料(名義書換料)」という多額の費用を地主に支払う慣習があり、これが売主様の金銭的負担となって売却をさらに困難にさせます。
隣人との権利調整に加え、地主との交渉、さらには譲渡費用の発生。こうした二重三重の権利の「縛り」が、長屋を市場から遠ざけている大きな要因です。複雑に絡み合った権利の糸を解きほぐすには高度な専門知識と交渉力が必要とされるため、一般的な不動産会社では対応しきれず、最終的に売れ残ってしまうのが実情です。
大半が老朽化しているため
現在市場に残っている長屋の多くは、昭和中期以前に建てられた築50年を超えるような物件です。物理的な老朽化が進んでいるのはもちろんですが、最大の問題は「1981年以前の旧耐震基準」で建築されている点にあります。現代の基準に照らし合わせると地震への脆弱性は否定できず、安全に住むためには大規模な耐震補強工事が避けられません。この工事だけで数百万円単位のコストがかかることも珍しくなく、これが買い手にとっての大きなブレーキとなります。
また、表面上の古さ以上に深刻なのが、目に見えない箇所のダメージです。長年適切なメンテナンスがなされていない長屋では、屋根からの雨漏りや、湿気によるシロアリ被害が建物の骨組みを蝕んでいるケースが多々あります。さらに、給排水管の腐食や電気配線の劣化といったインフラ部分の不具合も重なれば、修繕費用は青天井に膨れ上がります。
買い手からすれば、「物件価格は安くても、入居するまでに一体いくら追加投資が必要なのか」という不透明さは大きなリスクです。結果として、リフォーム前提の個人や投資家ですら、修繕コストが資産価値を上回る「逆ざや」を恐れて購入を見送ってしまう。これが、老朽化した長屋が市場で敬遠され続ける実態です。
長屋売却をスムーズに進めるポイント
長屋の売却は非常に難易度が高いものですが、戦略的に準備を進めることで、売却の可能性を大きく引き上げることができます。買い手が最も懸念するのは「購入後に自由に扱えないリスク」や「隣人とのトラブル」です。この不安を先回りして取り除くことが、スムーズな取引への近道となります。
具体的に取り組むべきポイントは、以下の3点に集約されます。
- 解体承諾書を交わしておく隣人から将来的な解体の承諾をあらかじめ得ておくことで、買い手の心理的・法的なハードルを劇的に下げ、再建築への道筋を提示できます。
- 境界を明確にしておく築年数が古い長屋ほど境界が曖昧になりがちです。確定測量を行い、権利範囲をはっきりさせることで、購入後のトラブルを未然に防ぎます。
- 大規模リフォームをしない売れやすくするために多額の費用をかけてリフォームするのは禁物です。買い手のニーズとズレが生じやすく、かけた費用を売価に転嫁できないリスクがあるためです。
これらの準備は、一般の不動産会社ではアドバイスしきれない専門的な領域でもあります。ここからは、なぜこれらのポイントが重要なのか、実務の視点から詳しく解説します。
解体承諾書を交わしておく
解体(切り離し)承諾書を事前に取得できれば売却は一気に有利になりますが、実務上、これを得られるケースは「ごく稀」であるというのが冷徹な現実です。
隣人がその家に住み続けている場合、切り離し工事は騒音や振動を招くだけでなく、共有壁がなくなることによる断熱・防音性能の低下、さらには建物の倒壊リスクすら伴います。隣人にとってはリスクや不利益ばかりが目立ち、協力するメリットが皆無に等しいため、基本的には断られてしまうのが定石です。承諾を得られる可能性があるのは、長年の付き合いで関係性が極めて良好な場合や、隣家も「実はうちも売りたいと思っていた」と売却のタイミングが重なるような、非常に幸運なケースに限られます。
もし運よく承諾を得られる場合は、必ず「地位承継」の文言を盛り込んでください。これは「売主と隣人の約束を、新しい買主にもそのまま引き継ぐ」という条項です。これがないと、買い手が変わった瞬間に承諾の効力が失われ、売却そのものが白紙になったり、後の大きなトラブルに発展したりする危険があります。このように、個人での交渉は精神的にも技術的にもハードルが極めて高いため、無理に進めて隣人関係を悪化させる前に、まずは専門家へ相談することをお勧めします。
境界を明確にしておく
長屋売却において「どこまでが自分の土地か」を明確にする境界確定は、後のトラブルを回避するための生命線です。昭和以前の古い長屋では、隣地との境界が曖昧なまま今日に至っているケースが非常に多く、これが再建築や売却の際に「隣地への越境」として大きな争いの火種になります。買い手はトラブルが予見される物件を最も嫌うため、境界が不明確なままでは、高値で売却することはまず不可能です。
少しでも高く売るためには、専門家に依頼し、隣地所有者立ち会いのもとで境界を確定させるのが理想です。ただし、この調査には数十万円単位の費用がかかる上に、隣人の協力が不可欠というハードルがあります。
特に長屋の場合、境界線が「共有している壁や柱の中心」にあることが多く、実際に建物を建てられる有効面積が想定より狭くなることも珍しくありません。こうした事実は、後出しになると契約解除の要因にもなるため、事前に正確に把握し、買い手に伝える誠実さが求められます。もし「売却前にそんな大金は払いたくない」「隣人と顔を合わせたくない」という場合は、境界未確定のまま現状で買い取れる弊社のような専門業者に相談するのが、最も賢明でコストのかからない選択肢となります。
大規模リフォームをしない
「少しでも高く、綺麗に見せて売りたい」と考えるのは当然ですが、長屋売却において売却前の大規模なリフォームはおすすめしません。結論から言えば、数百万円の費用をかけてリフォームを行うよりも、その分を価格から差し引いて「現況のまま」安く売り出したほうが、結果として売主様の手元に残る利益は多くなり、売却スピードも早まります。
最大の理由は、長屋の買い手には「自分で住む人(実需)」と「家賃収入を狙う人(投資家)」の2パターンがあり、それぞれ求める内装が全く異なるからです。実需層は自分の好みの壁紙やキッチンにこだわりたいと考えますし、投資家層は耐久性とコストパフォーマンスを最重視します。売主様が良かれと思って施したリフォームが、買い手のニーズと合致しなければ、それは単なる「余計なコスト」となり、販売価格に上乗せすることができなくなります。
実際、数百万円をかけてピカピカにしたものの、結局売れずに販売期間だけが延びてしまうという失敗事例を、私も数多く見てきました。リフォームプランを考える時間や工事の期間をかけるよりも、現況のまま市場に出し、用途の選択肢を買い手に委ねるのが、長屋売却における鉄則です。
越川直之(宅地建物取引士 / 空き家相談士)
代表ブログへ
株式会社フィリアコーポレーション代表取締役の越川直之です。
当社は空き家や再建築不可物件、共有持分など、一般的に売却が難しい不動産の買取・再販を専門とする不動産会社です。
これまでに1000件以上の相談実績があり、複雑な権利関係や法的・物理的制約のある物件にも柔軟に対応してきました。
弊社ホームページでは現場経験に基づいた情報を発信しています。
当社は地域社会の再生や日本の空き家問題の解決にも取り組んでおり、不動産を通じた社会貢献を目指しています。
