コラム記事

長屋の区分所有法ガイド|切り離しに必要な同意と手続きの注意点

公開日 2026年4月2日

最終更新日 2026年4月22日

監修者
越川直之

越川直之(宅地建物取引士 / 空き家相談士)

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訳アリ不動産1,000件以上の相談実績を持つ、空き家・再建築不可・長屋・共有持分の専門家。株式会社フィリアコーポレーション代表取締役。現場経験に基づき、訳アリ不動産売却の正しい知識を監修しています。

長屋の区分所有法ガイド|切り離しに必要な同意と手続きの注意点

長屋と区分所有法の関係

長屋(テラスハウス)を所有していると、リフォームや切り離しを検討する際に必ず直面するのが「区分所有法」という法律です。

長屋と区分所有法の最大の違いは、長屋が「横に連なる一戸建て」という物理的な建物の構造を指す言葉であるのに対し、区分所有法は建物内の「専有部分(自分の居住スペース)」「共用部分(壁や屋根など)」の権利関係や管理ルールを定めた法律であるという点です。

一般的な一戸建てであれば、自分の意思だけで解体や修繕が可能ですが、長屋の場合はそうはいきません。隣家と共有している「界壁(仕切り壁)」「屋根」などは、法律上はマンションの廊下やエレベーターと同じ「共用部分」とみなされるケースが多いからです。そのため、たとえ自分の持ち分であっても、勝手に切り離したり大規模な修繕を行ったりすることはできず、隣人の同意や法的な合意形成が必要となります。

「自分だけの家だと思っていたのに、実は法律上のルールに縛られていた」というトラブルを防ぐためにも、まずは区分所有法の基本と、長屋においてどのように適用されるのか、その密接な関係性を正しく理解しましょう。ここからは、法律の定義と具体的な準用ケースについて詳しく解説していきます。

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区分所有法とは

区分所有法(正式名称:建物の区分所有等に関する法律)は、マンションのように一棟の建物を複数の所有者で分かち持つ際のルールを定めた法律です。昭和37年に制定されたこの法律は、長屋を切り離して解体・売却しようとする際、非常に大きな影響力を持ちます。

長屋において特に注意すべき点は以下の3点です。

  • 柱・梁は「共用部分」である法第4条により、建物全体を支える柱や梁は、たとえ自分の敷地内にあっても「共用部分」とみなされます。切り離し工事にはこれらの切断が伴うため、独断で行うことはできません。
  • 工事には「4分の3以上」の合意が必要法第17条に基づき、建物の形状を著しく変えるような共用部分の変更には、区分所有者および議決権の各4分の3以上の賛成が必要です。さらに、切り離される隣人の生活に直接影響が及ぶ場合は、その方の個別の承諾も必須条件となります。
  • 合意は「義務」ではない隣地の所有者には、あなたの提案に合意する義務はありません。条件交渉が難航したり、所有者の特定に時間がかかったりすることも珍しくありません。

希望の時期にスムーズに工事を進めるためには、法律の枠組みを正しく理解し、早い段階から専門家を交えて丁寧な交渉準備を始めることが、トラブル回避の鉄則です。

法律上のルールを理解しても、実際の隣人交渉では感情的な対立が生まれやすく、同意を得るのは容易ではありません。事前にどのようなご近所トラブルが起こり得るのかを把握し、対策を講じておくことが重要です。

 

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長屋に区分所有法が部分的に準用されるケース

長屋の一部を切り離して解体・新築する場合、登記上が「一戸建て」の集まりに見えても、実態として区分所有法が準用されるケースが非常に多いです。この法律を無視して強引に工事を進めると、後に莫大な損害賠償や建物の撤去を命じられるリスクがあるため、以下の厳格なルールを正しく理解しておく必要があります。

  • 共用部分の変更(第17条1項):建物の基礎、屋根、柱、境界壁などは、長屋全体の構造を支える「共用部分」とみなされます。これらを変更・切断するには、全所有者および議決権の4分の3以上の賛成が必要です。
  • 専有部分への特別の影響(第17条2項):切り離しによって隣家の壁がむき出しになり、断熱性能の低下や雨漏りのリスクが生じる場合、その隣人の個別承諾が必須となります。4分の3の多数決が取れていても、直接影響を受ける隣人の首を縦に振らせなければ工事はできません。
  • 建て替えの決議(第62条):切り離した後に新たな建物を建てる「建て替え」には、さらにハードルの高い5分の4以上の同意が求められます。

実際、東京地裁(平成25年)では、無断で切り離し新築した所有者に対し、「建物の撤去」と損害賠償を命じる厳しい判決も出ています。長屋の切り離しは、物理的な工事以上に「法的な合意形成」が成功の鍵を握るシビアな共同作業なのです。

長屋のほかに区分所有法の適用対象になる建物

長屋以外で区分所有法が適用される代表的な建物といえば、何と言っても「分譲マンション」です。各住戸が壁や床で完全に仕切られ、他の住戸を通らずに共用廊下や階段へ出られる「構造上の独立性」と、その区画だけで炊事や入浴など生活が完結する「利用上の独立性」を備えているため、まさにこの法律のメインステージと言えます。

一方で、一般的な一戸建ては、基本的に区分所有法の対象外と考えられます。

  • 内部の繋がり:部屋同士が廊下やリビングで繋がっており、家族が自由に行き来できる。
  • 共用の入り口:家族全員が同じ玄関を使い、プライベートな個室に行く際も共有スペースを通るのが一般的。

このように「一つの建物を一つの権利として所有する」のが自然な構造であれば、わざわざ法律で権利を細分化(区分所有)する必要がないからです。ただし、外観は一戸建てに見えても、玄関が別々で内部の行き来が一切不可能な「完全分離型二世帯住宅」などの場合は、実態に合わせて区分所有法が適用されるケースもあります。

結局のところ、建物の名称よりも「それぞれの区画が独立した不動産として機能しているか」が判断の鍵となります。マンション住まいの方はもちろん、特殊な構造の物件を所有・検討されている方にとっても、この法律は避けて通れない重要なルールなのです。

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区分所有法にて長屋で共用部分とされる範囲

長屋を所有している方の多くが驚かれるのが、「自分の家の壁や屋根なのに、自分だけの判断でいじれない部分がある」という点です。一見すると独立した「家」が並んでいるだけに見える長屋ですが、法律の目を通すと、そこには複雑な共有関係が網の目のように張り巡らされています。

区分所有法において、建物は「専有部分(個人の持ち分)」「共用部分(みんなの持ち分)」の2つに大別されます。マンションであればエントランスやエレベーターが共用部分だと直感的に理解できますが、長屋の場合は少し特殊です。隣家と接している境界壁(界壁)や、一続きになっている屋根、建物全体を支える基礎や柱などは、たとえ自分の部屋の真上や真下にあっても、構造上は一棟の建物を維持するために不可欠な「法定共用部分」とみなされます。

つまり、リフォームや解体の際にこれらの箇所に手を加えることは、自分一人ではなく「建物全体の資産」に手を加える行為となります。どこまでが「自分の好きにできる範囲」で、どこからが「隣人の同意が必要な範囲」なのか。この境界線を正しく認識していないと、良かれと思って始めた工事が不法行為として訴えられるリスクさえ孕んでいます。

トラブルのない円滑な不動産管理や切り離しを実現するために、まずは具体的にどのパーツが共用部分にあたるのか、そしてそれらを変更する際にどのようなルールが課せられているのか、詳しく確認していきましょう。

長屋の共用部分にあたる箇所(柱・梁・外壁など)

長屋において「どこまでが自分の持ち分か」を正しく把握することは、トラブルを未然に防ぐための第一歩です。区分所有法第4条に基づき、長屋の骨組みにあたる部分は「法定共用部分」とされ、個人が独占して所有することはできません。

具体的に「共用部分」とされるのは、主に以下のような箇所です。

  • 柱・梁:建物一棟の自重を支え、耐震性を維持するための基盤です。切り離し工事の際には切断が必要となりますが、これらは自分一人ではなく、隣家をも支える共通の「背骨」であることを忘れてはいけません。
  • 界壁(境界壁):隣家とのプライバシーを隔て、火災時の延焼を防ぐ役割を持つ重要な壁です。
  • 屋根・外壁・基礎:建物全体の防水性能や強度を担保する部分は、構造上一体化しているため、原則として共用部分に該当します。

区分所有法第四条数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。

「自分の部屋にある柱なのだから、好きにしていいはずだ」という考えは、長屋では通用しません。柱一本を切断することが建物全体の倒壊リスクに直結するため、法律によって厳格に保護されているのです。こうした共用部分に手を加えるためには、当然ながら自分以外の所有者たちの承諾が不可欠となります。

共用部分に手を入れる切り離し工事は、隣家への影響を防ぐために慎重な手作業や補修が求められ、通常の解体工事よりも多額の費用がかかります。予期せぬ予算オーバーを防ぐためにも、具体的な費用の内訳を事前に確認しておきましょう。
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共用部分を変更・工事するには各所有者の合意が必要

長屋の切り離しにおいて、法律が定める「4分の3以上の合意」「特定所有者の承諾」は、実務上極めて高いハードルとなります。教科書的な不動産ノウハウでは「切り離して独立した一戸建てにすれば流動性が高まり、価値が上がる」と説かれますが、これはあくまで売り手側の理論。現実は、そう簡単に事は運びません。

実際の現場では、隣家から合意を得られるケースは「ほとんどない」のが実情です。なぜなら、切り離しは隣人にとってデメリットが多すぎるからです。

  • 断熱・防水性の低下:隣り合っていた壁が外気に晒されることで、結露や雨漏りのリスクが激増します。
  • 構造的な不安:長屋は建物全体で支え合っている構造が多く、一軒を抜くことで耐震強度が揺らぐ懸念を拭えません。
  • 補修費用の負担:露出した外壁の仕上げや補強を誰がどこまで負担するのか、納得感のある着地点を見つけるのは至難の業です。

こうした「隣人の不利益」を解消できない限り、独立化による価値向上というノウハウは、現場を知らない者の「机上の空論」に終わってしまうことが多々あります。

弊社フィリアコーポレーションでは、こうした合意形成の難しさを熟知しています。隣家との泥沼の交渉を売主様に強いるのではなく、長屋としての現状を正しく評価し、そのままの状態で買い取らせていただくことが可能です。「理屈では分かっていても進まない」という長屋特有のジレンマを、実務経験に基づいた確実な方法で解決いたします。

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長屋区分所有法に関するよくある質問

長屋は区分所有建物に該当しますか?

結論から述べますと、一般的な長屋も区分所有法上の「区分所有建物」に該当します。

各住戸が壁を共有しながらも独立した玄関を持ち、他人の住戸を通らずに外へ出られる構造は、マンションと同じく「構造上の独立性」「利用上の独立性」を備えているとみなされるためです。そのため、長屋もマンションと同様に、屋根や基礎、隣家との仕切り壁(界壁)といった「共用部分」については、区分所有者や占有者全員が共同で管理責任を負うことになります。

近年、長屋の一角が空き家となり、その部分の劣化が原因で建物全体の資産価値が下がったり、倒壊のリスクを招いたりするケースが散見されます。建物が繋がっている以上、一部の老朽化は決して他人事ではありません。

建物の健全性を維持するためには、「自分だけの家」という意識を捨て、あらかじめ区分所有者全員で話し合いの場を持つことが不可欠です。長期的な修繕計画を立て、全員で協力しながら適切に維持管理に努めることが、将来的なトラブルを防ぐ唯一の方法といえます。

長屋を切り離すには法律上どのような手続きが必要ですか?

長屋の切り離しは、単なる解体工事ではなく、法律に基づいた厳格なステップが求められます。根拠となるのは「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」です。この法律では、建物全体を支える柱や梁は「共用部分」と定義されており、たとえ自分の敷地内であっても独断で切断することはできません。

具体的な手続きとして、まずは区分所有法第17条に基づき、共用部分の変更に関する決議が必要です。これには、区分所有者および議決権の各「4分の3以上」の多数による合意が必須となります。さらに重要なのが、切り離しによって隣家の壁が露出するなど、相手の専有部分の使用に「特別の影響」を及ぼす場合です。この時は、その隣人個別の承諾を得なければ、法的に工事を進めることはできません。

ここで最大の注意点は、他の所有者には合意する義務が一切ないという点です。合意するかどうかは各個人の裁量に委ねられているため、粘り強い交渉や条件提示が必要となります。所有者の特定や合意形成には多大な時間がかかることが予想されるため、希望の時期に工事を行うには、かなり早い段階から専門家を交えた準備を進めることが不可欠です。

法律上の手続きや同意のハードルが非常に高く、ご自身での解決が難しいと感じた場合でも、決して諦める必要はありません。同意なしで切り離しを強行するリスクや、同意が得られない場合の現実的な打開策について深く知ることで、次の一手が見えてきます。

監修者
越川直之

越川直之(宅地建物取引士 / 空き家相談士)

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株式会社フィリアコーポレーション代表取締役の越川直之です。
当社は空き家や再建築不可物件、共有持分など、一般的に売却が難しい不動産の買取・再販を専門とする不動産会社です。 これまでに1000件以上の相談実績があり、複雑な権利関係や法的・物理的制約のある物件にも柔軟に対応してきました。 弊社ホームページでは現場経験に基づいた情報を発信しています。
当社は地域社会の再生や日本の空き家問題の解決にも取り組んでおり、不動産を通じた社会貢献を目指しています。

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