コラム記事

再建築不可物件の相続放棄はできる?プロが徹底解説

公開日 2026年3月16日

最終更新日 2026年3月16日

監修者
越川直之

越川直之(宅地建物取引士 / 空き家相談士)

代表ブログへ

訳アリ不動産1,000件以上の相談実績を持つ、空き家・再建築不可・長屋・共有持分の専門家。株式会社フィリアコーポレーション代表取締役。現場経験に基づき、訳アリ不動産売却の正しい知識を監修しています。

再建築不可物件の相続放棄は可能?

結論から申し上げますと、再建築不可物件であっても相続放棄は「可能」です。しかし、ここで最も注意しなければならないのは、「負動産だけをピンポイントで捨てることはできない」という、相続制度の厳しい鉄則です。

相続放棄とは、法律上「最初から相続人ではなかった」ことにする手続きです。そのため、対象となるのは親が所有していたすべての財産となります。たとえ「価値のない再建築不可物件」を相続したくないという理由であっても、それを放棄する場合、親が残してくれた預貯金や株式、他の不動産といったプラスの財産もすべて一切合切受け取れなくなってしまいます。

よく「土地だけは引き継いで、ボロボロの建物だけ放棄したい」といったご相談をいただきますが、残念ながらそのような個別の選択は不可能です。相続はパッケージプランのようなもので、中身を自由に選り好みすることはできません。

相続放棄を検討される際は、「手放したい物件のデメリット」と「手放したくない財産のメリット」を天秤にかけ、冷静に判断する必要があります。もしプラスの財産の方が多いのであれば、安易に放棄するのではなく、一度すべてを相続した上で、再建築不可物件だけを専門業者へ売却し、現金化するという道を探るのが最も賢明な判断と言えるでしょう。

再建築不可物件の相続放棄の流れ

再建築不可物件を含む遺産をすべて手放すと決めた場合、その手続きは単なる親族間の合意では終わらず、法律に基づいた厳格なステップを踏む必要があります。最も重要なのは、自分が相続人であることを知った時から「3か月以内」という非常に短い期間内に家庭裁判所へ申し立てを完了させなければならないという点です。

特に再建築不可物件は、放置すると建物の倒壊や特定空き家の指定による増税、近隣トラブルのリスクがあり、保有し続けるだけで精神的・金銭的な負担が発生します。「とりあえず様子見」という選択ができないからこそ、迷っている時間はありません。万が一、手続き中に遺産の一部を勝手に処分したり、期限を過ぎたりしてしまうと、自動的にすべての財産を引き継ぐ「単純承認」とみなされ、二度と放棄できなくなる恐れがあります。

確実かつスムーズに「負の遺産」との連鎖を断ち切るために、まずは基本となる手続きの流れを正確に把握しましょう。ここからは、事前調査から受理に至るまでの5つのステップを具体的に解説していきます。


  • ①遺言書の有無を確認する
  • ②遺産と相続人を明らかにする
  • ③家庭裁判所へ相続放棄の申述書を提出する
  • ④照会書を家庭裁判所に返送する
  • ⑤相続放棄申述受理通知書を受領する

①遺言書の有無を確認する

「遺言書なんてドラマや小説の中だけの話でしょう?」と思われるかもしれませんが、実はそうではありません。これまで数多くの不動産を扱ってきた経験上、相続が発生してから「実は遺言書があった」と判明するケースは驚くほど多いものです。

まずは、故人の自宅の仏壇や棚、机の引き出し、あるいは銀行の貸金庫などを徹底的に探してみましょう。もし自筆の遺言書(自筆証書遺言)が見つかった場合は、絶対にその場で開封してはいけません。家庭裁判所での「検認」という手続きが必要になるためです。

また、最近では以下の公的制度を利用しているケースも増えています。

  • 法務局の「遺言書保管制度」:故人が自筆の遺言書を法務局に預けていないか、全国の法務局で「遺言書保管事実証明書」の交付を請求して確認できます。
  • 公証役場の「遺言検索システム」:公正証書遺言を作成していた場合、全国どこの公証役場からでも有無を照会することが可能です。

遺言書の内容によっては、特定の相続人に「この再建築不可物件を相続させる」と指定されている場合があります。相続放棄の判断は「自分が相続人であることを知った日から3か月以内」という非常にタイトな期限があるため、まずは遺言の有無を真っ先に確定させることが、後悔しない相続の第一歩となります。

②遺産と相続人を明らかにする

相続放棄をするかどうかの判断は、言わば「全財産が詰まった箱の中身をすべて把握すること」から始まります。放棄は一度手続きをすると原則として取り消しができないため、後から「実は多額の借金があった」あるいは「実は価値のある隠し財産があった」と判明して後悔しないよう、徹底的な調査が必要です。

遺言書の有無を確認した後は「遺産のリスト化」です。故人の通帳や郵便物、さらにはタンスの奥まで確認し、預貯金だけでなく借金などのマイナス財産も漏れなく洗い出します。再建築不可物件などの不動産については、名寄帳や固定資産税の課税明細書を確認し、法務局で正確な登記情報を調べましょう。評価額については、まずは固定資産税の評価額を参考にしますが、再建築不可物件は市場価値が極端に低いことも多いため、必要に応じて専門業者へ査定や鑑定を依頼するのが確実です。

並行して行うのが「相続人の確定」です。故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取り寄せ、誰が法的な相続権を持つのかを家系図のように整理します。配偶者や子は把握しやすいですが、兄弟姉妹やその子が絡むケースでは、本人も知らない相続人が浮上することも珍しくありません。

この「財産と人の調査」は、相続手続きの中で最も時間と労力がかかるフェーズです。少しでも複雑だと感じたら、司法書士などの専門家を頼るのが、3か月という短い期限を守るための賢い近道となります。

③家庭裁判所へ相続放棄の申述書を提出する

相続を放棄する決断ができたら、いよいよ具体的な法的アクションに移ります。ここで覚えておきたい重要なポイントは、相続放棄は「他の相続人との合意が一切不要」であるという点です。

よく「親族に迷惑がかかるから相談しなきゃ」「兄が反対しているからできない」と悩まれる方がいますが、相続放棄はあくまで各相続人が個人の意思で行うものです。たとえ他の相続人と意見が分かれていたとしても、あなた単独の判断で手続きを進めることができます。

ただし、手続き上のルールは非常に厳格です。

  • 個別放棄は不可:「借金や再建築不可物件だけを放棄して、預貯金はもらう」といった選択はできず、プラスもマイナスもすべてセットで手放すことになります。
  • 家庭裁判所への申し立て:口頭で親族に伝えるだけでは不十分です。必ず「相続放棄申述書」を作成し、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ提出(申述)する必要があります。

書類の作成自体はそれほど難しくありませんが、添付する戸籍謄本などの収集に時間がかかる場合があります。「3か月以内」という期限を確実に守るためにも、迷った瞬間に書類の準備を始めるのが、負の連鎖を断ち切るための鉄則です。

④照会書を家庭裁判所に返送する

家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出して一安心…といきたいところですが、手続きはまだ終わりではありません。提出から1〜2週間ほど経つと、裁判所から「相続放棄に関する照会書(回答書)」という書類が郵送されてきます。

これは、裁判所が「本当に自分の意思で放棄しようとしているか?」「すでに遺産を使ってしまっていないか?」を最終確認するための、いわば「確認テスト」のようなものです。主に以下のような質問事項が並んでいます。

  • 相続が開始したことをいつ知りましたか?(3か月期限のチェック)
  • なぜ相続放棄をしたいのですか?(負債が多い、関わりたくない等)
  • 遺産を勝手に売却したり、自分のために使ったりしていませんか?

この照会書に回答し、期限内に返送しない限り、手続きは一歩も前に進みません。「書類を出したから大丈夫」と放置せず、ポストをこまめに確認し、届いたらすぐに記入して返送しましょう。

万が一、回答内容が以前提出した書類や事実と食い違っていると、裁判所から追加の説明を求められたり、最悪の場合は放棄が認められなかったりするリスクもあります。もし書き方に迷う項目があれば、独断で書かずに専門家のアドバイスを受けるのが、確実に「負の連鎖」を断ち切るためのポイントです。

⑤相続放棄申述受理通知書を受領する

照会書を返送し、裁判所での審査が無事に終わると、いよいよ手元に「相続放棄申述受理通知書」が届きます。これが届いた瞬間が、法的に再建築不可物件やその他の遺産から完全に解放された「ゴール」となります。

この通知書は、家庭裁判所があなたの相続放棄を正式に認めたことを証明する唯一の公的な書類です。再建築不可物件の管理責任を問われた際や、亡くなった方の債権者から督促が来た場合に、「私はもう相続人ではありません」と法的に証明するための強力な「免状」になります。

注意点は、この書類は原則として申述人(あなた)本人にしか送られないという点です。また、再発行はできないため、大切に保管してください。万が一紛失して証明が必要になった場合は、別途「相続放棄申述受理証明書」という書類を有料で発行してもらう手間が発生してしまいます。

これで、あなたの肩に乗っていた「負の遺産」の重荷はすべて降ろされたことになります。手続き自体はここで完了ですが、この通知書のコピーを他の相続人や関係者に共有することで、親族間の無用なトラブルを防ぎ、真の意味で相続問題を終結させることができるでしょう。

再建築不可物件を相続するリスク

再建築不可物件を相続することは、時に「負の遺産」を背負うことと同義になる場合があります。一般的な不動産と異なり、出口戦略(売却方法)が限られるため流動性が著しく低く、プロでさえ扱いを慎重にする物件です。そのため、個人で相続した方の多くが「どうしていいか分からない」と解決を先送りにし、結果として放置されてしまうケースが後を絶ちません。

しかし、放置は最も避けるべき選択肢です。再建築不可物件は、所有しているだけでリスクが雪だるま式に膨れ上がる「時限爆弾」のような側面を持っています。適切なメンテナンスを怠れば、建物はまたたく間に老朽化し、倒壊の危険が生じます。そうなれば、隣地からの苦情や自治体からの厳しい指導が入るだけでなく、最悪の場合は法的な賠償責任まで問われ、あなたの平穏な生活を脅かすことになりかねません。

「ただの古い家だから」と楽観視せず、相続した瞬間にどのようなリスクが動き出すのかを、今のうちに正しく把握しておく必要があります。ここからは、相続人が直面する5つの深刻なリスクについて詳しく解説していきます。


  • 建て替えが不可能となる
  • 解体すると固定資産税が増える
  • 買い手が見つかりにくい
  • 維持管理に労力を要する
  • 損害賠償請求を受ける場合がある

建て替えが不可能となる

再建築不可物件を相続する際、最も重くのしかかるのが「現在建っている建物を取り壊してしまったら最後、二度と新しい家を建てられない」という冷酷な事実です。

通常の不動産であれば、古くなれば「更地にして新築」という選択肢が当たり前に存在しますが、この物件にはそのカードがありません。つまり、地震や火災、あるいは深刻な老朽化によって建物が失われた瞬間、その土地は「家を建てるための場所」としての生命を終えてしまいます。あとは駐車場や資材置き場といった、収益性の低い用途でしか活用できなくなってしまうのです。

この制約は、資産価値に以下のような致命的な影響を及ぼします。

  • 既存建物を活かすしかない:法改正による制限(新2号建築物への該当など)がある中で、古い建物を無理やり延命させ続ける「修繕地獄」に陥りやすい。
  • 使用用途が極端に限定される:自分の好みの間取りや最新の設備を備えた「終の棲家」を築くことができない。
  • 出口戦略が描けない:買い手からすれば「将来がない土地」に見えるため、相場より大幅に安く買い叩かれる。

相続した側からすれば、いわば「替えのきかないヴィンテージ(しかしボロボロ)な一点物」を押し付けられたようなものです。建物を維持し続けるコストと、活用できなくなった際のリスクを天秤にかけると、その「不自由さ」こそが最大の負債であることに気づかされます。

解体すると固定資産税が増える

ボロボロの家を相続し、「近隣に迷惑をかけるくらいならいっそ更地にしてしまおう」と考えるのは、一見良心的な判断に思えます。しかし、そこには所有者を苦しめる大きな落とし穴があります。それが、固定資産税の増加です。

現在、建物が建っている土地には「住宅用地の特例」という税制上の優遇措置が適用されています。これは、居住用の建物さえ建っていれば、土地にかかる固定資産税を最大で6分の1、都市計画税を3分の1にまで減額してくれるという非常に強力な制度です。しかし、建物を解体して更地にした瞬間、この特例の対象外となり、翌年からの税負担が跳ね上がってしまうのです。

再建築不可物件の場合、更地にしても新しい家が建てられないため、所有者からすれば「活用もできない土地に対して、これまでの数倍の税金を払い続ける」という最悪の状況に陥ります。これこそが、日本中で危険な空き家が取り壊されずに放置され続けている最大の理由です。

解体費用を自腹で払った挙げ句、毎年の維持費(税金)まで高くなるのでは、所有者が二の足を踏むのも無理はありません。しかし、近年では管理不全の空き家に対して行政が「特定空き家」に指定し、建物を残していても特例を解除するという厳しい運用も始まっています。解体するか放置するか、その判断には極めて慎重なシミュレーションが必要なのです。

買い手が見つかりにくい

再建築不可物件の売却において最大の壁となるのが、驚くほど「買い手の分母が少ない」という現実です。マイホームを探している一般的な層にとって、家は一生に一度の大きな買い物。しかし、「将来、老朽化しても建て替えられない」という致命的な欠陥を抱えた物件は、最初から検討リストから外されてしまいます。わざわざ高いお金を払って「いつか住めなくなるリスク」を買おうとする人は、まずいないのが普通です。

結果として、この種の物件を扱えるのは、法的制約を熟知し、高度なリノベーションや賃貸運営のノウハウを持つ「プロ」や一部の投資家に限定されます。しかし、さらに事態を深刻にさせているのが、一般的な不動産仲介会社の姿勢です。

  • 低すぎる手数料:不動産会社の報酬は売却価格に比例しますが、再建築不可物件は価格が低いため、会社にとっては正直「割に合わない」仕事です。
  • 高すぎる調査・説明リスク:価格は安いのに、境界確認や法的な調査は通常の物件以上に手間がかかります。万が一のトラブルを恐れて、相談しても「うちは扱っていません」と門前払いされるケースが後を絶ちません。

このように、買い手からも業者からも敬遠されるため、放置すればするほど物件は「塩漬け」状態になります。一般の仲介市場で奇跡を待つのではなく、再建築不可物件の価値を正しく評価できる「専門の買取業者」に直接相談することが、早期解決を実現するための唯一にして最善の近道といえるでしょう。

維持管理に労力を要する

再建築不可物件を相続し、空き家のまま維持することを選んだ場合、それは終わりのない「管理作業」という名の重労働の始まりです。

人が住まなくなった家は、驚くほどすぐに傷みます。水道を使わなければ配管は錆びて異臭を放ち、窓を閉め切れば湿気が溜まってカビや腐朽が基礎を蝕みます。状態を維持するためには、最低でも週に一度は現地へ足を運び、全ての窓を開けて風を通し、各蛇口から水を流すといった細やかなケアが欠かせません。

さらに、屋外の管理も深刻です。

  • 庭木の伐採・草むしり:放置すればあっという間にジャングル化し、害虫や害獣の住処となります。
  • 不法投棄の対応:空き家と分かるとゴミを捨てられるリスクが高まり、その処分も所有者の責任です。
  • 近隣トラブル:枝が隣家に侵入したり、瓦が落ちそうになったりすれば、即座に苦情が飛んできます。

これらの作業には、多大な移動時間と労力、そして庭師への依頼費用などがかかり続けます。しかし、どれほど必死に管理しても、再建築不可という性質上、物件の価値が劇的に上がることはありません。いわば「価値が下がるのを食い止めるためだけに、自分の貴重な時間と体力を削り続ける」という状態です。このリターンのない「報われない管理」こそが、所有者を精神的に追い詰める大きな要因となっています。

損害賠償請求を受ける場合がある

再建築不可物件を相続して放置することは、単に資産価値が下がるだけでなく、ある日突然「加害者」として多額の賠償責任を背負うリスクを孕んでいます。

この種の物件は、古い下町や住宅密集地に位置していることが多く、家と家の間隔が極めて狭いのが特徴です。そのため、管理不十分な状態で放置された建物が一部でも倒壊したり、屋根瓦や外壁が剥がれ落ちたりすれば、被害は容易に隣家や通行人にまで及びます。特に近年の台風の大型化や、いつ起こるかわからない地震などの自然災害が発生した際、老朽化した空き家は真っ先に被害の起点となり得ます。

  • 工作物責任の重圧:民法第717条により、建物の保存に欠陥(瑕疵)があって他人に損害を与えた場合、所有者はたとえ自分に過失がなくても賠償責任を問われる「無過失責任」を負うことがあります。
  • 密集地ゆえの連鎖:万が一、倒壊によって隣家を損壊させたり、火災の火元となって延焼を引き起こしたりすれば、賠償額は個人の手に負える範囲を容易に超えてしまいます。

「自分は住んでいないから関係ない」という言い訳は、法的には一切通用しません。密集地にある再建築不可物件の放置は、近隣住民の命と財産を脅かす「時限爆弾」を抱えているのと同じです。取り返しのつかない事態になる前に、専門業者に売却して管理責任を移転させることが、自分自身の人生を守ることにも繋がります。

再建築不可物件の相続放棄の注意点

再建築不可物件の相続放棄は、管理の負担や固定資産税の支払いから逃れるための有効な手段ですが、実行に移す前にはいくつかの「絶対に外せないルール」を知っておく必要があります。

安易に手続きを始めてしまうと、家族が残した大切な資産を意図せず失ってしまったり、逆に放棄したはずの管理義務が予期せぬ形で残ってしまったりと、後悔するケースが少なくありません。相続放棄は「最初から相続人ではなかった」ことにする非常に強力な手続きであるからこそ、その副作用もまた大きいのです。

特に再建築不可物件は、土地としての活用が難しい一方で、放置すれば建物の崩落や近隣トラブルに発展しやすいという特殊な事情を抱えています。そのため、手続きの不備が許されないのはもちろん、放棄後の法的立場についても慎重な判断が求められます。「負動産」との縁を法的に正しく、そして確実に断ち切るために、必ずチェックしておくべき3つの核心的な注意点を具体的に見ていきましょう。


  • 再建築不可物件を含む遺産すべてを放棄する必要がある
  • 定められた期限内に手続きを済ませる必要がある
  • 家庭裁判所の受理後は相続放棄の手続きを行う必要がある

再建築不可物件を含む遺産すべてを放棄する必要がある

相続放棄を検討する際、多くの方が「管理が大変な再建築不可物件だけを手放して、預貯金や価値のある不動産だけは相続したい」と考えます。しかし、日本の法律上、このような「特定の財産だけを選んで放棄する」ことは一切認められていません。

相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)が残したすべての権利と義務を拒否する手続きです。イメージとしては、プラスの財産もマイナスの財産もすべて入った「一つの箱」を、丸ごと受け取るか、丸ごと捨てるかの二択しかありません。「この中身はいらないけれど、これは欲しい」といった選り好みはできない仕組みになっています。

  • プラスの財産:現金、預貯金、株式、有益な土地・建物など
  • マイナスの財産:借金、未払いの税金、維持費のかかる再建築不可物件など

再建築不可物件を放棄するということは、親が遺してくれた預貯金や思い出の品々もすべて手放すことを意味します。もし、プラスの財産がマイナス(再建築不可物件の維持コストやリスク)を上回る可能性があるのなら、安易に放棄せず、一度すべてを相続した上で「再建築不可物件だけを専門業者に売却して現金化する」という道を探るのが、資産を守るための賢い戦略といえるでしょう。

定められた期限内に手続きを済ませる必要がある

相続放棄を検討する場合、最も気をつけなければならないのが「3か月」という極めて短い期間の制限です。法律上、相続人は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内(熟慮期間)に、以下のいずれかを選択しなければなりません。

  • 単純承認:すべての財産(プラスもマイナスも)を無制限に引き継ぐ
  • 相続放棄:すべての財産を一切引き継がない
  • 限定承認:相続したプラスの財産の範囲内で借金を返済する

もし、この期間内に家庭裁判所へ申述を行わず、何の手続きもしなかった場合は、自動的に「単純承認」したものとみなされます。そうなれば、たとえ後から再建築不可物件の深刻なリスクや隠れた借金が判明したとしても、もはや放棄することは不可能です。

再建築不可物件は、市場価値の調査や法的な制限の確認など、判断材料を集めるだけでもかなりの時間を要します。「まだ心の整理がつかないから」と先送りにしていると、あっという間に期限は過ぎてしまいます。負の遺産を確実に断ち切るためには、相続が発生した直後から迅速にプロの査定や法的助言を受け、冷静な決断を下すことが不可欠です。

家庭裁判所の受理後は相続放棄の事実を伝える必要がある

家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届いた時点で、手続きは法的に完了します。ここで最も肝に銘じておくべきは、「一度受理された相続放棄は、原則として撤回できない」という極めて重い事実です。

後から「実は床下から多額の現金が見つかった」「再建築不可だと思っていた土地が、隣地との合筆で高値売却できることが判明した」と状況が変わっても、一度手放した権利を取り戻すことは不可能です。この不可逆性があるからこそ、事前の調査には万全を期す必要があります。

そして、受理された後は速やかに関係各所へその「事実」を伝える責任が生じます。

  • 次順位の相続人への連絡:あなたが放棄したことで、相続権は次の順位の方(親や兄弟姉妹など)へ自動的に移ります。何も伝えないまま放置すると、お相手が「自分が相続人になったこと」を知らぬまま、再建築不可物件の管理責任や借金を突然背負わされることになり、深刻な親族間トラブルに発展しかねません。
  • 債権者や管理自治体への通知:故人に借金があった場合や、空き家の管理について役所から督促が来ている場合は、受理通知書のコピーを提示して「自分はもう相続人ではない」ことを明確に示しましょう。

裁判所の手続きは書類の受理で終わりますが、周囲との人間関係や社会的な責任を整理するためには、この「事実の伝達」こそが、負動産トラブルを完全に終結させるための重要な最終ステップとなります。

再建築不可物件の相続放棄以外の対処法

再建築不可物件という言葉を聞くと、「価値がない」「持っているだけで損」というイメージが先行し、つい相続放棄を唯一の解決策と考えてしまいがちです。しかし、「手続きが面倒だから」「どうせ売れないから」という理由だけで安易に放棄を選択するのは、あまりにももったいない話です。

再建築不可物件は、いわば「磨けば光る可能性を秘めた不動産」です。一般的な市場では扱いが難しいだけで、正しい知識と戦略を持って対処すれば、まとまった売却益を得られたり、安定した収益を生む資産へと生まれ変わったりするケースが多々あります。放棄してすべてをゼロにするのではなく、一度「相続」というステップを踏み、その上でプロの知恵を借りて賢く出口戦略を立ててみませんか?

本来手にできるはずだった利益を捨ててしまうのは、非常に大きな損失です。せっかく引き継いだ資産を「負動産」で終わらせないために、相続放棄という究極の選択肢を選ぶ前にぜひ検討していただきたい、具体的な3つの対処法を詳しく解説していきます。


  • 再建築できる状態へ改善後に売却する
  • 再建築不可のまま専門業者へ売却する
  • 駐車場や賃貸として運用する

再建築できる状態へ改善後に売却する

再建築不可という「呪縛」を解き、再び家を建てられる状態に改善できれば、その資産価値は数倍に跳ね上がります。いわば、未完成のパズルのピースを埋めて、正規の「宅地」として復活させる作業です。その具体的な手法には、以下のようなものが挙げられます。

  • 物理的な改善:隣地の一部を買い取る、あるいは旗竿地であれば隣地と「等価交換」を行い、道路に接する間口を2メートル以上に広げる。または、建築確認時のみ隣地を借りる交渉を行う。
  • 道路・法規の改善:敷地を後退させる「セットバック」で道路幅員を確保する、自治体から「43条2項2号許可」を得る、あるいは私道を「位置指定道路」として申請する。

しかし、これらはあくまで「理論上の正攻法」に過ぎません。現実には、隣人が交渉に応じてくれなかったり、測量や行政への申請に多額の費用と数ヶ月以上の時間がかかったりすることも珍しくありません。せっかく高額な投資をしても、最終的に許可が下りないという「ギャンブル」のような側面も持っています。

個人がこれらの手間とリスクをすべて背負うのは、現実的な選択肢とは言えません。もし、あなたが早期かつ確実な解決を望むのであれば、次にご紹介するように、こうした複雑な課題を「現状のまま」丸ごと引き受けてくれる専門の買取業者に相談するのが、最も賢明で手残りの多い方法となります。

再建築不可のまま専門業者へ売却する

再建築不可物件という「出口の見えない負動産」を、確実に、かつ手元に残る現金を最大化して処分したいのであれば、専門業者への売却がベストな選択です。一般的な仲介市場では「いつ売れるか分からない」という不安が付きまといますが、プロの買取であればその悩みは一瞬で解決します。

ここで、弊社フィリアコーポレーションの強みをご紹介します。弊社では、物件を「現況のまま」引き取らせていただく買取に特化しています。これは、売主様にとって非常に大きなメリットとなります。

  • 手間を一切排除:大掛かりな片付けや不用品の処分、壊れた箇所の修繕などは一切不要です。ゴミ屋敷のような状態や、家具が残ったままでも、私たちがまるごと引き受けます。
  • 心理的負担の解消:「契約不適合責任」を免除する契約が可能なため、引き渡し後に雨漏りやシロアリ被害が発覚しても、売主様が責任を問われることはありません。
  • スピード現金化:買い手を探す期間が不要なため、最短距離で資産を現金化し、相続トラブルや維持管理の重圧から解放されます。

「ボロボロだから売れない」と諦める前に、まずは弊社にご相談ください。他社で断られた物件でも、私たちはその「隠れた価値」を見出し、売主様の手間を最小限に抑えた最適な売却プランをご提案いたします。

駐車場や賃貸として運用する

再建築不可物件は、単に手放すだけでなく、収益を生む「利回り資産」として活用する道もあります。特に物件が都市部や閑静な住宅街、あるいは大学や大型商業施設の徒歩圏内に位置している場合、賃貸ニーズは非常に高く、安定した家賃収入が期待できます。もともとの土地評価額が低く抑えられている分、うまく運用できれば、一般的な投資物件を凌ぐほどの高利回りを実現できる可能性を秘めています。

しかし、この選択には相応のリスクとコストが伴うことを忘れてはいけません。再建築不可物件は建物が古いケースが大半であるため、賃貸に出すためには多額のリフォーム費用やハウスクリーニング費用が先行投資として必要になります。さらに、入居者の募集や日々のトラブル対応、建物の維持管理を外注すれば、管理会社へ支払う月々の管理費用も発生します。

もし立地調査や需要予測を誤り、空室が続いて収益化できなければ、改修コストを回収できないばかりか、固定資産税を含めた維持費だけが膨らむ「赤字資産」になりかねません。また、オーナーとしての運用には一定の手間もかかります。安易に投資を始める前に、まずはその立地で本当にリターンが見込めるのか、専門家の視点でシビアなシミュレーションを行うことが不可欠です。

監修者
越川直之

越川直之(宅地建物取引士 / 空き家相談士)

代表ブログへ

株式会社フィリアコーポレーション代表取締役の越川直之です。
当社は空き家や再建築不可物件、共有持分など、一般的に売却が難しい不動産の買取・再販を専門とする不動産会社です。 これまでに1000件以上の相談実績があり、複雑な権利関係や法的・物理的制約のある物件にも柔軟に対応してきました。 弊社ホームページでは現場経験に基づいた情報を発信しています。
当社は地域社会の再生や日本の空き家問題の解決にも取り組んでおり、不動産を通じた社会貢献を目指しています。

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