コラム記事
相続で共有になった実家をどうする?遺産分割と処分の進め方
公開日 2025年9月12日
最終更新日 2025年9月5日
親御様が亡くなり、ご実家を兄弟姉妹と共有名義で相続されたのですね。今後どうすればいいか方針が決められず、お困りではないでしょうか。「兄弟と揉めたくない」「税金の負担だけが増えていく」といった不安は、決してあなた一人だけの悩みではありません。この記事では、共有名義の問題点を整理し、円満に解決するための具体的なステップを、専門家の視点から分かりやすく解説します。
目次
共有名義のままは危険?放置して起こる3つの深刻な問題
この章で解説する3つの深刻な問題は、以下の通りです。
- 兄弟姉妹がさらに相続…!権利者がネズミ算式に増える未来
- 売却もリフォームも全員の同意が必要で何も決められない現実
- 固定資産税や管理費の負担だけがのしかかる負の資産になる可能性
「とりあえず共有名義で」という安易な判断が、後々どれだけ大きな問題に発展するか、ご存じでしょうか。時間が経てば経つほど、権利関係は複雑になり、不動産は身動きが取れない状態に陥ります。そして最終的には、誰も望まないのに経済的な負担だけが子や孫の代までのしかかる「負動産」と化してしまうのです。
まずは、なぜ一刻も早く共有状態を解消すべきなのか、その具体的な理由を詳しく見ていきましょう。
兄弟姉妹がさらに相続…!権利者がネズミ算式に増える未来
共有名義の不動産を放置する最大のリスクは、新たな相続の発生による権利関係の複雑化です。例えば、最初は兄弟3人での共有だったとしても、そのうちの一人が亡くなると、その方の持分は配偶者やお子さんへ引き継がれます。この連鎖が世代を超えて続くと、会ったこともない甥や姪、さらにはその先の親族まで、権利者がネズミ算式に増えていくのです。私たちが実際に扱ったケースでは、当初3人だった共有者が、15年後には10人以上に膨れ上がっていました。こうなると全員の意思をまとめるのは至難の業であり、話し合いの場を設けることすら困難になります。問題を先送りにするほど、解決は絶望的になっていくのです。
売却もリフォームも全員の同意が必要で何も決められない現実
共有名義の不動産は、個人の意思だけでは自由に扱うことができません。法律上、不動産全体を売却したり、家を建て替えたりといった「変更行為」には、共有者全員の同意が必須と定められています。たとえ自分の持分が一番大きかったとしても、たった一人が首を縦に振らなければ、計画は一切進みません。「売りたい」「貸したい」「自分たちが住みたい」など、兄弟間で意見が食い違うのはよくある話です。その結果、誰もが納得する結論が出ないまま時間が過ぎ、結局誰も活用できない「塩漬け不動産」と化してしまいます。いざという時に動かせない不動産は、資産としての価値を十分に発揮できないと言えるでしょう。
固定資産税や管理費の負担だけがのしかかる負の資産になる可能性
誰も住んでいなくても、不動産を所有している限り、固定資産税や都市計画税は毎年必ず課税されます。この納税義務は共有者全員にかかるため、誰も支払わなければ、最終的に誰かが代表して納めるか、最悪の場合は差し押さえに至る可能性もあるでしょう。また、空き家のまま放置すれば、庭の雑草問題で近隣から苦情がきたり、建物の老朽化で修繕費がかさんだりします。活用も売却もできず、利益を生まないどころか、維持費だけがかかり続ける不動産は、もはやプラスの「資産」ではありません。所有しているだけでお金が出ていく、まさしく「負動産」となってしまうのです。
問題を未然に防ぐ!共有状態を解消する3つの遺産分割方法
この章で解説する3つの遺産分割方法は、以下の通りです。
- 【換価分割】不動産を売却して現金を公平に分ける最も確実な方法
- 【代償分割】特定の相続人が不動産を取得し、他の相続人には現金を支払う
- 【現物分割】土地を分筆するなど物理的に分ける(※利用シーンは限定的)
前の章で解説したような深刻な問題を避けるためには、相続が発生した段階で、共有状態そのものを解消するのが最も賢明です。そのための正式な手続きが「遺産分割協議」であり、ここで誰がどのように財産を受け継ぐかを決めます。不動産のように簡単に分けられない財産については、主に3つの分割方法が用いられます。
それぞれの方法にメリット・デメリットがありますので、ご自身の状況に最適なのはどの方法か、考えながら読み進めてみてください。
【換価分割】不動産を売却して現金を公平に分ける最も確実な方法
誰もその不動産を必要としていない場合に、最も公平でトラブルになりにくいのが「換価分割」です。これは、不動産全体を第三者に売却し、得られた現金を相続人間で分け合う方法を指します。不動産のままだと「この査定額は安すぎる」といった評価額に関する争いが起きがちですが、現金であれば1円単位で明確に分割できます。例えば、実家が3,000万円で売れた場合、諸経費を差し引いた残額を法定相続分に応じてきれいに分配可能です。後の禍根を残さず、全員が納得しやすい形で相続を完了させたい場合に、最もおすすめできる方法といえるでしょう。
【代償分割】特定の相続人が不動産を取得し、他の相続人には現金を支払う
相続人のうち誰か一人が、「親の思い出が詰まった実家に住み続けたい」など、その不動産の取得を強く希望している場合に有効なのが「代償分割」です。これは、特定の相続人が不動産を単独で相続する代わりに、他の相続人に対して法定相続分に相当する現金(代償金)を支払う方法になります。これにより、不動産を残しつつ、他の相続人との公平性も保つことが可能です。ただし、この方法を選択するには、不動産を取得する側に代償金を支払うだけの十分な資力、つまり預貯金などがなければなりません。資金を準備できない場合は、この方法は選択できない点に注意が必要です。
【現物分割】土地を分筆するなど物理的に分ける(※利用シーンは限定的)
「現物分割」は、文字通り土地を物理的に分けて、それぞれが単独所有の土地として相続する方法です。例えば、広大な土地を相続人の数に合わせて分筆(登記上で土地を分けること)し、「兄はA土地」「弟はB土地」といった形で分割します。一見すると公平に見えますが、一般的な住宅地でこれを行うと、分割後の土地が狭すぎて価値が大きく下がったり、建築基準法上の接道義務を満たせず家が建てられない土地(再建築不可物件)になったりするケースがほとんどです。そのため、都心や郊外の住宅地における実家の相続ではまず用いられません。利用できるのは、地方の広大な土地などに限られる、非常に限定的な方法だとお考えください。
兄弟と揉めずに実家を整理する3つの売却パターン
この章で解説する3つの売却パターンは、以下の通りです。
- パターン①:兄弟全員で協力して不動産全体を高く売却する
- パターン②:話がまとまらないなら自分の持分だけを専門会社に売却する
- パターン③:兄弟間で持分を売買し、単独名義にしてから活用・売却する
遺産分割の方法が決まったら、次はいよいよ実行の段階です。特に不動産を現金化して分け合う「換価分割」は理想的な方法ですが、その進め方にもいくつかの選択肢があります。兄弟間の関係性や、それぞれが置かれた状況によって、ベストな方法は異なります。ここでは、私たちがこれまで数多くの現場で見てきた経験から、実家を円満かつ賢く整理するための、代表的な3つの売却パターンをご紹介します。ご自身の状況ならどれが一番近いか、考えながら読み進めてみてください。
パターン①:兄弟全員で協力して不動産全体を高く売却する
最も理想的で、経済的なメリットが一番大きいのが、兄弟全員で協力して不動産全体を売却するパターンです。共有者全員が売却に同意し、一つの不動産として一般市場で売り出すことで、最も高く売れる可能性が広がります。買主も個人の方やファミリー層など幅広くなるでしょう。この方法を成功させるには、売却を依頼する不動産会社や売出価格、売却のタイミングなどについて、事前に全員でよく話し合い、意思を統一しておくことが重要です。全員の足並みが揃うのであれば、金銭的な利益を最大化できる最善の方法と言えます。
パターン②:話がまとまらないなら自分の持分だけを専門会社に売却する
「自分は売りたいが、他の兄弟が同意してくれない」「話し合いが全く進まない」といった、膠着状態を打開する非常に有効な手段が、ご自身の共有持分だけを売却する方法です。他の共有者の同意は一切不要で、ご自身の意思だけで進めることができます。私たちフィリアコーポレーションのような共有持分を専門に扱う買取会社は、このような複雑な権利関係の不動産を積極的に買い取っています。売却価格は市場価格より下がりますが、面倒な交渉ごとから一切解放され、迅速に現金化できるのが最大のメリットです。人間関係のストレスなく、共有関係から抜け出したい場合に最適な選択肢となります。
パターン③:兄弟間で持分を売買し、単独名義にしてから活用・売却する
兄弟のうちの誰かがその不動産に愛着があり、資金的にも余裕がある場合に有効なのが、兄弟間で持分を売買する方法です。例えば、兄が弟や妹の持分を買い取ることで、不動産の名義を兄一人の単独名義に集約します。これにより、その後の売却や活用(賃貸に出す、リフォームするなど)は、兄一人の意思で自由に行えるようになります。他の相続人にとっても、自分の持分を身内である兄弟に売却するため、話を進めやすいという側面があります。誰か一人に所有権をまとめることで、その後の意思決定が格段にスムーズになるでしょう。
【東京2つの解決事例】共有持分の悩みを乗り越えたケーススタディ
この章でご紹介する2つの解決事例は、以下の通りです。
- ケース1:荒川区の連棟住宅を相続。持分売却で円満解決した事例
- ケース2:足立区の袋地(再建築不可)を相続。トラブルの末、持分売却で解決した事例
これまでの説明で、問題を解決するための知識や方法はご理解いただけたかと思います。しかし、理論だけではご自身の状況にどう当てはめれば良いか、分かりづらいかもしれません。そこでこの章では、私たちが実際にサポートさせていただいた東京都内での2つの事例をご紹介します。ご自身の状況に近いケースを参考に、解決への具体的なイメージを掴んでみてください。
ケース1:荒川区の連棟住宅を相続。持分売却で円満解決した事例
ご相談者は50代の姉妹で、荒川区にあるご実家を兄との3人で相続されました。その物件は、切り離しが困難な「連棟住宅」だったため、兄は「売却は難しいだろう」と主張し、物置として利用を続けていました。しかし、遠方に住む姉妹は固定資産税の負担だけが続く状況を解消したい、と切望されていました。そこで私たちは、姉妹の共有持分のみを買い取るご提案をしました。結果、姉妹は希望通り現金化でき、不動産の管理や税金の負担から解放されました。兄も、感情的なしこりのあった姉妹との共有関係が解消され、ホッとされていました。
ケース2:足立区の袋地(再建築不可)を相続。トラブルの末、持分売却で解決した事例
足立区のご実家を兄弟2人で相続したものの、その土地は道路に接していない「袋地」で、家の建て替えができない再建築不可物件でした。弟様は「少しでもお金になれば」と売却を望みましたが、兄様は「親の家を安値で売るのは忍びない」と猛反対。そこから兄弟関係が悪化し、話し合いもできない状態に。お困りになった弟様が、弊社の「共有持分買取」を知りご相談くださいました。すぐに弟様の持分のみを買い取らせていただき、弟様は長年の悩みだった不動産と、兄との直接のやり取りから解放されました。これがきっかけで、膠着状態だった問題が大きく動き出しました。
共有持分の相続に関するよくある3つの質問(FAQ)
この章でお答えする、よくある3つの質問は以下の通りです。
- Q1.遺産分割協議に期限はありますか?
- Q2.連絡が取れない兄弟がいる場合はどうすればいいですか?
- Q3.相続登記は義務なのでしょうか?
不動産の相続には、普段聞き慣れない法律や手続きが関係してきます。いざ自分の身に起きると、「これってどうすればいいの?」と迷う場面も多いでしょう。ここでは、私たちがお客様から特によくいただく3つの質問を取り上げ、プロの視点から分かりやすくお答えします。最後の疑問点をここでスッキリさせておきましょう。
Q
1.遺産分割協議に期限はありますか?
Q
2.連絡が取れない兄弟がいる場合はどうすればいいですか?
Q
3.相続登記は義務なのでしょうか?
まとめ
相続で共有名義となった不動産の問題は、非常に複雑で、感情的な対立にも発展しやすい厄介なテーマです。しかし、問題を正しく理解し、手順を踏んでいけば、必ず円満な解決への道筋は見つかります。
最後に、この記事の重要なポイントを5つにまとめました。
- 共有名義の放置は危険:時間が経つほど権利者は増え、売却も活用もできず、税負担だけが残る「負動産」になるリスクがあります。
- 解決の第一歩は遺産分割協議:相続人全員で話し合い、「換価分割」「代償分割」など、状況に合った分割方法を決定することが不可欠です。
- 売却には3つのパターンがある:全員で協力して売るのが理想ですが、それが難しい場合でも道はあります。
- 「自分の持分だけ売る」選択肢:兄弟と揉めている、話が進まない場合でも、ご自身の持分だけを専門の買取会社に売却し、共有関係から抜け出すことが可能です。
- 専門家への相談が解決の近道:相続登記の義務化など、法律的な手続きは複雑です。迷ったらすぐに専門家へ相談しましょう。
この記事を読み、ご自身の状況を整理できた今が、行動を起こす絶好のタイミングです。大切な資産、そしてご家族との関係を守るためにも、問題の先延ばしは今日で終わりにしましょう。
一人で悩まず、まずは専門家にご相談ください
私たちフィリアコーポレーションは、単なる不動産会社ではありません。これまで1,000件以上の相談実績を持ち、特に今回のような「共有持分」や「再建築不可」「連棟住宅」といった、複雑な権利関係の不動産を専門に扱う買取会社です。
「他の会社に相談しても断られた」「兄弟と話もしたくない」そのような、誰にも相談できずにいたお悩みこそ、ぜひ私たちにお聞かせください。売主様の心の負担を軽くすることを第一に、豊富な経験を持つ代表の越川が、最適な解決策をご提案します。
相談は無料です。以下のページから、お気軽にお問い合わせください。
監修者

越川直之【宅地建物取引士】【空き家相談士】
代表ブログへ
株式会社フィリアコーポレーション代表取締役の越川直之です。
当社は空き家や再建築不可物件、共有持分など、一般的に売却が難しい不動産の買取・再販を専門とする不動産会社です。
これまでに1000件以上の相談実績があり、複雑な権利関係や法的・物理的制約のある物件にも柔軟に対応してきました。
弊社ホームページでは現場経験に基づいた情報を発信しています。
当社は地域社会の再生や日本の空き家問題の解決にも取り組んでおり、不動産を通じた社会貢献を目指しています。