コラム記事
【知らないと損する】擁壁付きの土地や再建築不可物件について詳しく解説
公開日 2026年5月18日
最終更新日 2026年5月18日
越川直之(宅地建物取引士 / 空き家相談士)
代表ブログへ訳アリ不動産1,000件以上の相談実績を持つ、空き家・再建築不可・長屋・共有持分の専門家。株式会社フィリアコーポレーション代表取締役。現場経験に基づき、訳アリ不動産売却の正しい知識を監修しています。
目次
擁壁とは
土地を購入・売却する際に「擁壁あり」という記載を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。擁壁は土地の安全性や資産価値に直結する重要な要素であるにもかかわらず、その定義や種類を正確に理解している方は少ないのが現状です。
まずは擁壁の基本的な定義と、種類ごとの特徴を押さえておきましょう。
- 擁壁の定義
- 擁壁の種類と構造ごとの特徴
擁壁の定義
擁壁とは、傾斜地や高低差のある土地において、土砂の崩壊や流出を防ぐために設置される構造物のことです。建築基準法第19条4項では、以下のように定義づけられています。
- 傾斜地や高低差がある土地に新築する場合、擁壁を設置する必要がある
- 敷地内の排水に支障がない場合・防湿の必要がない場合はこの限りではない
- 各地方自治体が定める高さに新築した場合、擁壁を設ける必要がある
簡単にいえば、崖や斜面の土が崩れないように支える「壁」のことです。住宅街でよく見られる、道路と敷地の間にあるコンクリートの壁や石積みの壁がこれにあたります。擁壁は見た目だけでなく、その構造・素材・築年数によって安全性が大きく異なるため、不動産取引においては特に慎重な確認が必要な要素のひとつです。
擁壁の種類と構造ごとの特徴
擁壁にはいくつかの種類があり、使用する素材や構造によって強度・耐久性・法的な扱いが大きく異なります。どの種類の擁壁かによって、建築制限の有無や売却時の評価にも影響が出るため、自分の物件にどの擁壁が使われているかを把握しておくことが重要です。
主な擁壁の種類は以下の4つです。
- 鉄筋コンクリート擁壁(RC擁壁)
- 間知石・間知ブロック擁壁
- 大谷石・空石積み擁壁
- 練積造擁壁
鉄筋コンクリート擁壁(RC擁壁)
鉄筋コンクリート擁壁(RC擁壁)とは、コンクリートの内部に鉄筋を埋め込んで一体化させた擁壁です。現地で型枠を組んで打設する「現場打ち擁壁」と、工場で製造したものを現地で設置する「プレキャスト擁壁」の2種類があります。
鉄筋とコンクリートの組み合わせにより圧縮・引張の両方の力に強く、現在流通している擁壁の中で最も強度と耐久性に優れた種類です。建築基準法でも適法な擁壁として認められており、住宅用地における新設擁壁の主流となっています。
耐用年数は30〜50年程度とされていますが、適切なメンテナンスが行われていれば50年以上の使用実績を持つものも存在します。一方で経年によるひび割れや水抜き穴の詰まりが生じると強度が低下するため、定期的な点検が必要です。
間知石・間知ブロック擁壁
間知石・間知ブロック擁壁とは、五角形や六角形に加工された石やコンクリートブロックを1列ずつ積み上げながら、裏込めコンクリートで一体化させた擁壁です。城の石垣にも用いられてきた歴史ある工法で、傾斜地や造成地でよく見られます。
RC擁壁と比較すると強度・耐久性の面で劣るケースがあり、ハウスメーカーによっては間知ブロック擁壁では建築要件を満たさないと判断するケースもあります。土地購入や建築を検討する際は、事前にハウスメーカーや専門家に確認することが必要です。
耐用年数は20〜30年程度とされており、RC擁壁より短い傾向があります。築年数が経過した間知ブロック擁壁は、ひび割れや目地の劣化、ブロックのずれなどが生じやすくなるため、定期的な点検と早めの補修が重要です。
大谷石・空石積み擁壁
大谷石擁壁とは、栃木県宇都宮市付近で採掘される軽石凝灰岩「大谷石」を積み上げて作られた擁壁です。加工のしやすさから1950〜1960年代に多く使用されており、現在でも昭和時代に建てられた住宅地を中心に数多く残っています。
しかし大谷石は間知石・間知ブロックと比較して強度面で劣り、現行の建築基準法では不適格とされているため、現在新たに作られることはありません。既存の大谷石擁壁がある物件で新築住宅を建てる際は、擁壁のつくり直しが必要になります。
既存の擁壁がすぐに危険というわけではありませんが、ひび割れ・膨らみ・排水施設の問題が見られる場合は補修や建て替えが必要です。耐用年数の目安は20〜30年程度と短めであるため、築年数が経過している場合は特に注意が必要です。購入・売却の際はひび割れや傾きがないかを必ず確認してください。
練積造擁壁
練積造擁壁とは、石やブロックをコンクリートで固定しながら積み重ねて作る擁壁です。コンクリートを「練って」固めることから「練積み」と呼ばれており、斜めに設置することでブロックとコンクリートの重さで土を留める構造から「もたれ式擁壁」とも呼ばれています。
使用する素材はコンクリートブロックに限らず、玉石などの自然石を加工したものも使われるため、形状や見た目にバリエーションがあります。間知ブロック積擁壁と混同されることも多いですが、間知ブロックが「ブロックを一列ずつ積み上げる」工法であるのに対し、練積造はコンクリートで一体的に固める点が異なります。
耐用年数は20〜40年程度とされています。経年劣化によりコンクリート部分のひび割れや剥離が生じやすくなるため、定期的な点検が必要です。状態によっては補修や建て替えが必要になるケースもあります。
安全性を保障できない擁壁の例
擁壁は「あれば安全」というわけではありません。種類や築年数だけでなく、施工の質・維持管理の状態・法的な適合性によって、安全性に大きな差が生じます。安全性を保障できない擁壁が存在する土地は、建築制限や売却時の評価に悪影響を及ぼすだけでなく、崩壊した際に所有者が損害賠償責任を負うリスクもあります。
どのような擁壁が安全性を保障できないのか、5つのパターンを解説します。
- 雑な造りで強度が弱い
- 崩壊や倒壊の危険性がある
- 劣化・老朽化が著しい
- 二段擁壁・玉石擁壁などの違法建築である
- 検査済証がなく適法性を証明できない
雑な造りで強度が弱い
高さ2m以下の擁壁は建築確認申請や検査が不要なため、構造計算が行われないまま施工されるケースがあります。これが安全性の落とし穴になっています。
確認申請が不要であることを利用して、以下のようなずさんな施工が行われるケースが実際に存在します。
- 水を多く含んだ低品質なコンクリートを使用し、表面が剥離・劣化しやすくなっている
- 地盤調査を適切に行わず、軟弱地盤の上に擁壁を設置して沈下が生じている
- 鉄筋量を減らしたり規格外のブロックを使用して強度を低下させている
こうした施工で作られた擁壁は外見上は問題なく見えても、内部の強度が著しく低いケースがあります。特に旧来の造成地や、施工記録が残っていない土地では注意が必要です。強度に問題がある擁壁は倒壊リスクがあるため、専門家による調査のうえ早急な造り替えが必要になります。
崩壊や倒壊の危険性がある
擁壁に以下のような症状が見られる場合、崩壊・倒壊のリスクが高まっているサインです。
- ひび割れ(クラック)の発生
- つなぎ目のずれや隙間の発生
- 擁壁全体の傾き
こうした状態の擁壁は、地震による地盤の緩みや台風などの強風被害をきっかけに一気に倒壊するリスクがあります。また設置当初は適法であっても、その後の法改正により現在では不適格な擁壁になっているケースも存在するため注意が必要です。
再建築不可物件においては、建物の老朽化と擁壁の老朽化が同時に進行するため、建物の倒壊リスクと擁壁の倒壊リスクを合わせて管理する必要があります。空き家として放置されている場合は特に問題が深刻で、誰も管理しないまま劣化が進み、気づいたときには擁壁が崩壊寸前という状態になっているケースも少なくありません。危険な状態が確認された場合は、早急に専門家による調査と補修・建て替えを検討してください。
劣化・老朽化が著しい
壁は建物と同様に経年劣化が進みます。設置から長期間が経過した擁壁でコンクリートのひび割れ・石の崩れ・擁壁全体の膨らみといった症状が目に見えて現れている場合、安全性を外見だけで判断することはできません。
老朽化した擁壁のリスクは、決して他人事ではありません。2025年、東京都杉並区の住宅街で高さ約5メートルの擁壁が崩壊し、擁壁の上に建っていた木造2階建ての住宅も崩れ落ちる事故が発生しました。崩れた擁壁は1968年に建設された鉄筋コンクリート造で、杉並区は1984年に亀裂を把握して以来、所有者に改善指導を繰り返してきましたが、抜本的な対策が取られないまま40年以上が経過し、崩壊に至りました。
専門家によると、擁壁の多くが1970年代に作られ現在50年以上が経過して老朽化しており、寿命を迎えた擁壁が全国に200万カ所以上存在するとされています。「まだ大丈夫だろう」という判断が最も危険です。劣化の兆候が見られる場合は、早めに専門家による調査を受けることが不可欠です。
二段擁壁・玉石擁壁などの違法建築である
擁壁の中には、そもそも違法建築に該当するものが存在します。代表的なのが以下の2つです。
「二段擁壁」は既存の擁壁の上に新たな擁壁を重ねて積み上げたものです。上段の擁壁の重みが下段に集中し、構造的な安全性が著しく低下するため、建築基準法上認められていません。昭和時代に造成された住宅地では、土地を有効活用するために無許可で積み増しされたケースが多く残っています。
「玉石擁壁」は丸みを帯びた玉石を積み上げて作られたもので、石同士の噛み合わせが弱く、地震や大雨の際に崩壊するリスクが高いため、現行の建築基準法では認められていません。
これらの違法擁壁が存在する土地は、そのままでは建築許可が下りず、売却も困難になるケースがほとんどです。ただし擁壁が適法かどうかは専門知識がなければ判断できない場合も多く、自己判断は禁物です。購入・売却の前に必ず専門家による調査を受けることをおすすめします。
検査済証がなく適法性を証明できない
高さ2m以上の擁壁を築造する際は、建築確認申請の提出が法律で義務付けられています。確認申請が提出されていない、または申請していても検査済証などの証明書類が存在しない擁壁は、建築基準法に違反した不適格擁壁とみなされます。
再建築不可物件は昭和時代に建てられた築古物件がほとんどのため、擁壁がある場合もその擁壁自体が古く、検査済証が存在しないケースが非常に多いのが実態です。書類が残っていないだけで実際には適切に施工されていたケースもありますが、証明できなければ適法性を主張することはできません。
売却や購入を検討する際は、まず売主に検査済証の有無を確認してください。売主が所持していない場合でも、役所に過去の確認申請書が保管されていれば適格擁壁と認められるケースもあります。書類の有無が売却の可否や価格に直結するため、早めに役所または専門家に確認することが重要です。
擁壁付きの土地/再建築不可物件はなぜ売れないのか
擁壁付きの土地や再建築不可物件は、一般市場において買い手がつきにくい傾向があります。「擁壁があるだけでなぜ売れないのか」と疑問に思う方も多いですが、擁壁の存在が複数のリスクと制約を生み出し、それが重なることで買い手が敬遠する構造になっています。
売れにくい主な理由は以下の5つです。
- 擁壁関連の制約が多い
- 擁壁崩壊時に損害賠償責任を負うリスクがある
- 建築費用・工事費用が通常より高額になる
- 住宅ローン審査が通りにくい
- 擁壁の有無にかかわらず「がけ」として判断され、建築制限の対象となる
擁壁関連の制約が多い
擁壁に関しては建築基準法・都市計画法・宅地造成等規制法など複数の法律が絡み合っており、擁壁の種別や工事内容によって適用されるルールが異なります。そのため擁壁の再設置や補修工事には専門的な知識と手続きが必要となり、対応できる業者も限られます。
また擁壁は自分の土地だけでなく隣地にも大きな影響を与える構造物です。擁壁が崩壊した際の被害が隣地に及ぶリスクがあることから、擁壁付き物件の査定や仲介を断る不動産会社も少なくありません。
さらに再建築不可物件に擁壁が絡む場合は、再建築不可という制約と擁壁関連の制約が二重に重なるため、売却難易度はより高くなります。たとえ人気エリアに位置する物件であっても、擁壁の存在だけで売却活動がスタートできないケースや、買い手がつかずに売却価格が相場を大きく下回るケースも珍しくありません。こうした複雑な案件こそ、擁壁付き物件の取引実績がある専門業者への相談が不可欠です。
擁壁崩壊時に損害賠償責任を負うリスクがある
擁壁の管理責任は土地の所有者にあります。万が一擁壁が崩壊して通行人にケガをさせたり、隣地や車などの財物を損壊させた場合、所有者として損害賠償責任を負うことになります。「前の所有者が建てたものだから自分は関係ない」という主張は法律上通りません。
前述の杉並区の事例でも、1984年から区が改善指導を続けてきたにもかかわらず抜本的な対策が取られないまま2025年に崩壊が発生しました。幸いにも人的被害はありませんでしたが、一歩間違えば多額の損害賠償請求に発展していた可能性があります。老朽化した擁壁を放置することは、時限爆弾を抱えているのと同じ状態といえます。
買い手の立場からすれば、こうした賠償リスクを承知のうえで擁壁付き物件を購入する動機は生まれにくく、これが売却が難しくなる大きな要因のひとつです。擁壁の安全性が確認できない物件は、早めに専門業者へ相談して適切な対応策を検討することが重要です。
建築費用・工事費用が通常より高額になる
擁壁の補修・やり替え工事が高額になりやすい理由は、構造上どうしても手間と資材がかかるためです。掘削・コンクリート打設・排水工事などを伴う大規模な作業となるケースが多く、周辺環境や擁壁の規模によってはさらに費用が膨らみます。
費用の目安として、鉄筋コンクリート擁壁では1㎡あたり約3万〜10万円程度とされています。例えば高さ3m×延長10m(壁面積30㎡)の工事では付帯工事を含めると総額200万〜300万円程度、高さ3m×延長20m(壁面積60㎡)の大規模工事になると約200万〜600万円が相場とされています。
再建築不可物件の場合、接道状況が悪く工事車両や重機が入りにくいケースが多いため、通常の擁壁工事よりもさらに費用が高くなる傾向があります。売却前に擁壁工事を検討する場合は、工事費用と売却価格のバランスを慎重に見極めたうえで判断することが重要です。まずは専門業者に現状のまま査定を依頼することをおすすめします。
住宅ローン審査が通りにくい
擁壁付き土地が金融機関から敬遠されやすい最大の理由は、担保としての評価が低くなりがちである点にあります。金融機関は融資にあたり、その土地に安全に建物が建てられるか・将来的に売却しやすいかを重視します。擁壁の安全性が確認できない土地は建築制限や追加工事のリスクがあるため、担保評価が下がります。
特に検査済証や確認済証がなく現行基準への適合を証明できない場合、融資条件が厳しくなったり、通常より多くの自己資金を求められるケースも少なくありません。
再建築不可物件に擁壁が絡む場合は、再建築不可による融資の壁と擁壁による担保評価の低さが重なり、住宅ローンがほぼ使えない状態になります。現金一括で購入できる買い手に限定されるうえ、擁壁リスクを承知で購入する投資家も少ないため、買い手の母数が極端に絞られます。これが擁壁付き再建築不可物件の売却を特に難しくしている構造的な要因です。
擁壁の有無にかかわらず「がけ」として判断され、建築制限の対象となる
擁壁が設置されていても、都道府県や市区町村の条例によっては、その土地が依然として「がけ」として判断され、建築制限の対象となるケースがあります。いわゆる「がけ条例」と呼ばれるもので、がけの上下一定範囲内への建築を制限または禁止しています。
具体的には、がけの高さの2倍以上の距離を建物から離すよう求められるケースが多く、敷地が狭い再建築不可物件では事実上建物を建てられる範囲がほとんど残らないという状況にもなりかねません。擁壁があることで安全性が担保されていると思っていても、条例上は「がけ」として扱われる限り建築制限は解除されません。
がけ条例の内容は自治体によって異なるため、物件所在地の役所で必ず確認することが必要です。買い手が希望する建物を建てられない可能性がある土地は、それだけで購入を敬遠される大きな要因になります。擁壁付きの再建築不可物件を売却する際は、こうした建築制限の有無を事前に把握したうえで専門業者に相談することをおすすめします。
再建築不可物件の擁壁工事にかかる費用相場
擁壁の工事費用は構造・規模・立地条件によって大きく異なります。再建築不可物件の場合、接道状況が悪く重機や工事車両が入りにくいケースが多いため、通常よりも割高になる傾向があることを念頭に置いておく必要があります。
以下に擁壁工事・解体にかかる費用の目安をまとめました。
■擁壁の新設・やり替え工事費用(1㎡あたり)
| 擁壁の種類 | 費用の目安(1㎡あたり) |
| 鉄筋コンクリート擁壁(RC擁壁) | 約3万〜10万円 |
| 間知ブロック擁壁 | 約2万〜6万円 |
| 練積造擁壁 | 約2万〜5万円 |
■擁壁の解体費用(1㎡あたり)
| 擁壁の種類 | 費用の目安(1㎡あたり) |
| 鉄筋コンクリート造 | 約1.5万〜3.5万円 |
| コンクリート造 | 約1.5万〜3万円 |
| 石造 | 約0.5万〜2万円 |
上記に加えて、以下の付帯費用が別途発生するケースがあります。
- 廃材処分費(コンクリート・鉄筋・石材などの処理費用)
- 地盤補強費(解体後に地盤が不安定になった場合)
- 周辺環境への配慮費(隣地・道路への養生費・防音対策費)
- 建築確認申請費用(やり替え工事の場合)
例えば高さ2m×幅10m(壁面積20㎡)の鉄筋コンクリート擁壁をやり替える場合、建造費だけで200万円前後かかる計算になり、解体費・付帯工事費を含めると総額はさらに膨らみます。自治体によっては擁壁工事に対する補助金制度を設けているケースもあるため、事前に物件所在地の役所に確認することをおすすめします。
擁壁付きの土地/再建築不可物件を売却する前に確認すべきポイント
擁壁付きの土地や再建築不可物件を売却する際、事前に確認すべきポイントを把握しておくことが適正価格での売却につながります。確認が不十分なまま売却活動を始めると、後から問題が発覚して契約が破談になったり、大幅な値引きを求められるリスクがあります。
売却前に必ず確認しておきたいポイントは以下の5つです。
- 検査済証・造成許可書はあるか
- 擁壁の高さは法規制の対象である2mを超えているか
- ひび割れ・傾き・水抜き穴の詰まりはないか
- 地盤の状態はどうなっているか
- 建築可能範囲はどこまでか
検査済証・造成許可書はあるか
高さ2m以上の擁壁を築造する際は、建築確認申請の提出が法律で義務付けられており、工事完了後に検査を受けて「検査済証」が発行されます。この書類が存在しない擁壁は、建築基準法上の不適格擁壁とみなされる可能性があります。
再建築不可物件は築古物件がほとんどのため、当時の書類管理が不十分で検査済証や造成許可書が手元にないケースが非常に多いです。書類がない場合でも、役所に過去の確認申請書が保管されていれば適格擁壁と認められるケースもあります。まず役所の建築指導課に問い合わせて確認することをおすすめします。
売却前にこれらの書類の有無を確認しておくことは非常に重要です。書類がないまま売り出してしまうと、買い手から安全性への不安を指摘されて交渉が難航したり、金融機関の審査が通らず売却が破談になるリスクがあります。書類の有無が売却価格と売却の可否に直結するため、早めに確認しておくことが得策です。
擁壁の高さは法規制の対象である2mを超えているか
擁壁の評価において、「高さが2mを超えているかどうか」は実務上の大きな分岐点となります。建築基準法や宅地造成及び特定盛土等規制法では、高さ2mを超える擁壁は工作物の確認申請や造成許可の対象となっており、設計段階での構造計算と工事完了後の完了検査・検査済証の取得が必要です。
逆にいえば高さ2m以下の擁壁は確認申請が不要なため、前述の通り構造計算が行われないまま施工されているケースも多く、高さ2m以下だからといって安全とは限りません。
不動産査定の際には擁壁の高さ・延長・構造・築年数が必ず確認されます。鉄筋コンクリート擁壁や間知石の練積み擁壁のように基準適合が確認しやすい構造は評価されやすい一方、古いブロック積みや大谷石擁壁は安全性の証明が難しく査定で厳しく見られる傾向があります。売却前に擁壁の高さと構造種別を正確に把握しておくことが、適正な査定額を得るための第一歩です。
ひび割れ・傾き・水抜き穴の詰まりはないか
擁壁の外観を確認する際は、以下のような症状がないかを必ずチェックしてください。
- ひび割れ(クラック)の発生
- 擁壁の膨らみや変形
- 全体的な傾き
- 水抜き穴の詰まりや水抜き穴がそもそもない
これらの症状が見られる場合、擁壁の強度が著しく低下している可能性があります。特に水抜き穴の詰まりは見落とされがちですが、非常に重要なポイントです。擁壁の内側に水が溜まると土圧が増大し、崩壊リスクが急激に高まります。前述の杉並区の事故でも、水抜き穴が不十分な状態で大雨による水圧が崩壊を引き起こした可能性が指摘されています。
こうした症状がある擁壁をそのままにして売却活動を始めると、買い手から安全性を問題視されて交渉が難航するだけでなく、売主としての責任も問われかねません。売却前に専門家による目視調査を受け、状態を正確に把握しておくことが重要です。
地盤の状態はどうなっているか
擁壁の安全性は擁壁そのものの状態だけでなく、その下にある地盤の状態にも大きく左右されます。いくら擁壁が適切に施工されていても、地盤が軟弱であれば不同沈下(地盤が不均一に沈み込む現象)が起こり、擁壁の傾きやひび割れにつながります。
地盤の軟弱性が懸念される主なサインは以下の通りです。
- 擁壁に隙間や変形が生じている
- 排水機構が設けられていない、または水抜き穴が詰まっている
- 擁壁の表面が常に湿っている
これらは地盤の状態悪化や水圧による変形が既に始まっているサインである可能性があります。
擁壁付き物件の売却前には、擁壁の外観確認だけでなく地盤調査を実施しておくことが理想的です。費用はかかりますが、地盤の状態を数値で証明できることで買い手の安心感につながり、売却交渉をスムーズに進める材料になります。地盤に問題があるまま売り出してしまうと、後から問題が発覚して契約破談や損害賠償リスクに発展するケースもあるため、事前確認が重要です。
建築可能範囲はどこまでか
擁壁付き土地の売却前に見落としがちなのが、がけ条例による建築可能範囲の制限です。建築基準法第40条を根拠に多くの自治体が独自のがけ条例を設けており、高低差のある土地では建てられる位置と規模が大きく制限されます。
東京都の建築安全条例では、高さ2mを超えるがけがある場合、以下の範囲が建築不可とされています。
- がけ下:がけの高さの2倍(2H)以内
- がけ上:がけの高さの1.5倍(1.5H)以内
例えばがけの高さが3mであれば、がけ下6m・がけ上4.5mの範囲には建物を建てられません。敷地面積が広く見えても、実際に建築できる範囲が大幅に削られるケースは珍しくありません。
さらに既存建物ががけ条例の制限範囲内に建っていても、建て替えの際には現行条例に合わせる必要があります。結果として建て替え後の建物規模が現在より小さくなるケースもあり、これが買い手の購入意欲を下げる要因になります。売却前に建築士や役所へ相談し、建築可能範囲を正確に把握しておくことが重要です。
擁壁付きの土地/再建築不可物件を売却する方法
擁壁付きの土地や再建築不可物件は、一般的な不動産と同じ方法で売却しようとしても買い手がつきにくいのが現実です。しかし適切な方法を選択すれば、売却は十分に可能です。方法によって売却までの期間・費用・手残り額が大きく異なるため、自分の物件の状態と優先順位に合った方法を選ぶことが重要です。
主な売却方法は以下の5つです。
- 擁壁の安全性を調査・診断して売却条件を整える
- 擁壁の補強工事を実施してから売る
- 擁壁を解体して更地にしてから売る
- 空き家買取の専門業者に依頼する
- 擁壁専門業者に依頼する
擁壁の安全性を調査・診断して売却条件を整える
擁壁付き物件が売れにくい最大の理由のひとつは、買い手が「安全かどうかわからない」という不安を持つことです。この不安を解消する有効な手段が、専門家によるインスペクション(建物状況調査・住宅診断)の実施です。
擁壁は原則としてインスペクションの対象外ですが、オプションを付けることで擁壁の状態についても診断を受けることができます。所定の資格を持つ検査員が第三者的な立場から目視・動作確認・聞き取りなどによって現状を調査し、診断結果を書面で発行します。
この診断結果を買い手に開示することで、「専門家が調査済みである」という客観的な証明が得られ、買い手の安心感につながります。特に検査済証や造成許可書が手元にない場合でも、第三者による診断書があることで売却交渉をスムーズに進めやすくなります。費用はかかりますが、売却条件を整えるための投資として検討する価値があります。まずは専門業者に現状を相談したうえで、調査の要否を判断することをおすすめします。
擁壁の補強工事を実施してから売る
擁壁の調査で耐久性に問題があると判明した場合、補強工事を実施してから売却する方法があります。倒壊リスクのある擁壁は自分の敷地だけでなく隣地にも危険を及ぼす可能性があり、万が一崩壊してしまうと隣地所有者から損害賠償を請求されるリスクがあります。そうなってしまうと売却はさらに困難になり、何年も売れない状態が続くケースもあります。
補強工事を行うことで安全性が担保され、買い手の不安を取り除けるため、売却価格の改善や買い手獲得の可能性が高まります。
ただし注意が必要なのが費用対効果です。前述の通り擁壁の補強・やり替え工事は数百万円規模になるケースも多く、再建築不可物件の場合は接道状況が悪く工事費がさらに割高になる傾向があります。工事費用を投じても売却価格への上乗せが限定的になるケースもあるため、補強工事を行う前に専門業者への現状渡し査定と比較検討することをおすすめします。
擁壁を解体して更地にしてから売る
老朽化が著しく安全性の確認が難しい擁壁の場合、解体して更地にしてから売却する方法も選択肢のひとつです。擁壁を撤去することで倒壊リスクがなくなり、買い手が擁壁の補修・解体費用を負担する必要がなくなるため、交渉がスムーズに進みやすくなります。
ただしいくつかの点に注意が必要です。擁壁を解体する際は敷地外への土砂流出を防ぐための適切な処置と整地が必要であり、解体費用に加えて地盤補強費用が発生するケースもあります。
また前述の通り、建物がなくなった更地は「住宅用地の特例」が外れて固定資産税が最大6倍に跳ね上がります。擁壁と建物を同時に解体する場合は特にこの点を事前に試算しておくことが重要です。解体費用・整地費用・固定資産税の増加分を含めたトータルコストと、更地にすることで見込める売却価格の上昇分を冷静に比較したうえで判断することをおすすめします。まずは専門業者に現状渡しでの査定を依頼し、解体の要否を検討するのが賢明です。
空き家買取の専門業者に依頼する
擁壁付きの土地に古家がある場合、最もスピーディーかつ確実な売却方法が専門の買取業者への依頼です。仲介と異なり買取業者が直接買主となるため、買取価格に合意した時点で契約締結に進むことができ、早ければその日のうちに現金化することも可能です。
フィリアコーポレーションが特におすすめする理由は2点あります。
1つ目は現況引き渡しに対応している点です。残置物の撤去・清掃・擁壁の補修工事など、売却前に売主が費用と手間をかける必要は一切ありません。擁壁に問題がある状態のまま、そのままお引き渡しいただけます。
2つ目は契約不適合責任が免除される点です。擁壁付きの築古物件は引き渡し後に設備の不具合やシロアリ被害などが発覚するリスクが高く、仲介での個人間売買では売主が責任を追及されるケースがあります。専門業者への買取であればこうしたリスクを負う必要がありません。
擁壁の状態に不安がある場合でも、まずはフィリアコーポレーションの無料査定をご活用ください。
擁壁専門業者に依頼する
擁壁付き土地や崖地など、一般の買い手が敬遠しやすい物件では、仲介でなかなか買い手が見つからないケースが多くあります。こうした場合の選択肢として、訳あり物件や再建築不可物件を専門に取り扱う買取業者への依頼が有効です。
「擁壁専門」という業者は少ないですが、再建築不可物件や訳あり物件の買取に特化した業者であれば、擁壁がある物件も問題なく対応できるケースがほとんどです。フィリアコーポレーションでも、擁壁のある不動産を含む複雑な条件の物件を数多く買取してきた実績があります。
一般的に買取価格は市場相場の7〜8割程度が目安とされていますが、仲介手数料が不要・現況引き渡し可能・契約不適合責任の免除・最短数日での現金化といったメリットを総合的に考えると、手残り額や精神的な負担の軽さという点で買取のほうが有利になるケースも多くあります。擁壁の状態や物件の条件に不安がある場合は、まず専門業者への無料査定を活用することをおすすめします。
千葉県松戸市の擁壁の上にある再建築不可を購入しています。
再建築不可物件の擁壁に関するよくある質問
擁壁は建築物ですか?
擁壁は建築物ではなく、「工作物」に分類されます。建築基準法では、高低差のある傾斜地や崖地において土砂の崩壊・流出を防ぐために造られる構造物を擁壁(工作物)と定義しています。
建築物と工作物では適用される法律や確認申請の手続きが異なります。擁壁は建築基準法第88条の規定により工作物として扱われ、高さ2mを超える擁壁を築造する場合は確認申請の提出が義務付けられています。建物本体の建築確認申請とは別の手続きであるため、両方の申請が適切に行われているかを個別に確認する必要があります。
擁壁の再建築費用はいくらですか?
擁壁の工事費用は種類・規模・立地条件によって異なりますが、目安として以下の通りです。
やり直し・新設工事:3〜13万円/㎡程度擁壁を新たに作り直す場合の費用相場です。これに加えて既存擁壁の解体費用・土の運搬費用・地盤補強費用などが別途かかるケースがあります。
補修工事:1〜2万円/㎡程度ひび割れの充填など既存の擁壁を活用できる場合は、やり直し工事より費用を抑えられる傾向があります。
ただし実際の費用は現地調査を行わなければ正確に算出できません。地盤が軟弱な場合の盛り土工事や、土砂流入リスクが高い場所での擁壁の高さ増設など、現地の状況によって費用が大きく変動します。
まずは複数の業者に見積もりを依頼して適正価格を把握することが重要です。また擁壁工事を行う前に、フィリアコーポレーションのような専門買取業者への現状渡し査定と費用対効果を比較検討することもおすすめします。
擁壁のある物件はなぜ買ってはいけないといわれるのですか?
擁壁のある土地が「買ってはいけない」といわれる主な理由は、倒壊・土砂崩れのリスク・管理責任による損害賠償リスク・やり替え時の高額な工事費用・建築制限による活用の難しさなど、複数のデメリットが重なるためです。これらのリスクが買い手を敬遠させ、将来的な売却も難しくなるという悪循環が生じます。
ただし「絶対に買ってはいけない」というわけではありません。
一般的な買い手が敬遠するということは、価格が相場より安くなりやすいということでもあります。事前に擁壁の状態・地盤・建築可能範囲をしっかり確認し、リスクを正確に把握したうえで購入判断ができる方にとっては、利回りの高い投資対象になるケースもあります。皆が欲しがらない物件は価格が下がりやすく、その分だけ収益性が高くなる可能性があるからです。
リスクを理解したうえで戦略的に検討できる方には、擁壁付き物件は魅力的な選択肢になり得ます。判断に迷う場合はフィリアコーポレーションへお気軽にご相談ください。
擁壁が崩れたら誰の責任ですか?
擁壁が崩壊した場合、民法717条1項(土地工作物責任)に基づき、原則としてその土地の占有者(賃借人など)が損害賠償責任を負います。ただし占有者に管理上の過失がなかった場合は、所有者に過失がなくても所有者が責任を負うことになります。
具体的には、崩落した土砂により隣地の建物を損壊させた場合の補修費用、道路の斜面崩落により通行人にケガを負わせた場合や死亡事故が発生した場合の損害賠償が対象となります。死亡事故に発展した場合の損害賠償額は8,000万円前後に上るケースもあります。
前述の杉並区の事例でも、区が1984年から40年以上にわたって改善指導を続けてきたにもかかわらず抜本的な対策が取られなかった結果、住宅が全壊するという事態に発展しました。幸い人的被害はありませんでしたが、一歩間違えば巨額の損害賠償責任が生じていたケースです。
擁壁の管理を怠ることは、財産だけでなく人命に関わるリスクを抱えることと同義です。少しでも不安を感じたら、早めに専門家へ相談することを強くおすすめします。
越川直之(宅地建物取引士 / 空き家相談士)
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株式会社フィリアコーポレーション代表取締役の越川直之です。
当社は空き家や再建築不可物件、共有持分など、一般的に売却が難しい不動産の買取・再販を専門とする不動産会社です。
これまでに1000件以上の相談実績があり、複雑な権利関係や法的・物理的制約のある物件にも柔軟に対応してきました。
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当社は地域社会の再生や日本の空き家問題の解決にも取り組んでおり、不動産を通じた社会貢献を目指しています。
