コラム記事

実家を相続放棄するとどうなる?専門家がわかりやすく解説

公開日 2026年6月28日

最終更新日 2026年7月2日

監修者
越川直之

越川直之 (宅地建物取引士 / 空き家相談士)

代表ブログへ

訳アリ不動産1,000件以上の相談実績を持つ、空き家・再建築不可・長屋・共有持分の専門家。株式会社フィリアコーポレーション代表取締役。現場経験に基づき、訳アリ不動産売却の正しい知識を監修しています。

本記事のまとめ

  • 実家を相続放棄した際の流れや、メリット・デメリット、注意すべき管理義務が具体的に分かります
  • 相続放棄以外で、管理が難しい実家を専門業者へ売却するなど賢く手放す方法についても理解できます
  • 相続放棄の手続きや、その後の手放し方で少しでも不安がある方は、フィリアコーポレーションへの相談がおすすめです
  • 提携士業と連携し、相続放棄か売却かでお悩みの遺族様へ法的・税務面も含めた最適な出口戦略を提案します
  • 完全現状渡しに対応しているため、荷物が残ったままでも無料査定のうえ最短1週間で現金化が可能です
  • 引き渡し後の責任を一切問わない契約不適合責任の免除により、売主様の将来的なリスクをゼロにします

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正しく実家を相続放棄する方法|3ヶ月の期限を守る!手続きの流れから必要書類、落とし穴を回避して「管理義務」から解放されるまでの正しい手順。

目次

実家は相続放棄できる

草加市 管理が行き届いておらず草木が生い茂っている
草加市 手入れがされず、草木が多い茂る空き家

「実家を相続したくない」「管理できない実家を引き継ぎたくない」—そう考えている方にとって、相続放棄は有効な選択肢のひとつです。結論から言えば、実家を含む不動産は相続放棄することが可能です。

ただし相続放棄にはいくつかの重要なルールと注意点があり、ケースによって対応が変わります。まずは「実家を相続放棄できるのか」という基本から確認していきましょう。

  • 実家を含む他の不動産も相続放棄できる
  • 共有名義の実家も場合によっては相続放棄できる

実家を含む他の不動産も相続放棄できる

相続とは、亡くなった方(被相続人)の財産を法律に基づいて引き継ぐ行為です。この対象には預貯金や都市部の不動産だけでなく、地方にある実家・農地・山林といった不動産もすべて含まれます。「田舎の家だから放棄できない」「価値がないから対象外」ということはなく、こうした不動産も問題なく相続放棄できます。使い道がなく管理にも困る実家を抱えたくない場合、相続放棄は有力な選択肢のひとつです。

ただし、ここで立ち止まって考えていただきたいことがあります。それは、相続放棄をすると「いらない不動産だけ」を手放すことはできず、預貯金などのプラスの財産もまとめて放棄しなければならないという点です。

実際にフィリアコーポレーションへ相談に来られる方の中にも、「売れそうにない実家を抱えるくらいなら、現金などの財産ごと相続放棄してしまおう」と考えている方が少なくありません。しかし、その判断は少し待ったほうがよいケースもあります。

なぜなら、たとえ売却が難しい不動産でも、専門の買取業者に相談すれば手放せる可能性があるからです。一度しっかり相続したうえで、不動産だけを専門業者に売却・処分できれば、預貯金などのプラスの財産は手元に残せます。一方、相続放棄をすればプラスの財産も含めてすべて失うことになります。

つまり、「相続放棄する」と決める前に、その不動産が本当に処分不可能なのかを確認することが大切です。一度相続して不動産だけを処分するほうが、結果的に有利になるケースは十分にあります。

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共有名義の実家も場合によっては相続放棄できる

共有名義の実家であっても、相続放棄をすることは可能です。共有名義の場合、誰かが相続放棄をすることで持分が他の共有者に移り、結果的に権利が一本化(集約)されやすくなるという側面もあります。

ただし、そもそも実家を共有名義のまま相続することは、できるだけ避けたほうがよい選択です。共有名義の不動産は、売却や大規模な修繕に共有者全員の同意が必要となり、管理や処分が一気に難しくなるためです。

そこで重要になるのが遺産分割協議の進め方です。相続財産を分ける際は、「不動産はすべて均等に分割する」のではなく、「Aさんは不動産、Bさんは現預金」というように、財産の種類ごとに分けて相続することをおすすめします。

不動産を法定相続分どおりに何等分にもして共有名義にしてしまうと、前述の通り後々の管理・売却が困難になり、相続が連鎖するたびに共有者が増えて収拾がつかなくなります。現金は分けやすく、不動産は単独名義にまとめるという方針で協議を進めることが、将来のトラブルを防ぐ鍵となります。

相続放棄も含め、実家をどう分けるかは家族全体に関わる問題です。早めに話し合い、必要に応じて専門家を交えて整理しておくと安心です。

遺産分割協議とは

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実家を相続放棄するとどうなる?

実家を相続放棄すると、その後その実家はどうなるのでしょうか。「自分が放棄すれば、もう実家とは一切関わりがなくなる」と考えている方も多いですが、実際には少し複雑な仕組みになっています。

相続放棄をすると実家の権利は次の人へと移っていき、最終的な行き先も決まっています。放棄後に何が起こるのかを正しく理解しておきましょう。

  • 実家の相続権は他の相続人に移る
  • 全員が相続放棄すると実家は最終的に国の所有になる

実家の相続権は他の相続人に移る

相続放棄をしても、実家そのものが消えてなくなるわけではありません。放棄した人の相続権は、他の相続人へと移っていきます。

相続には法律で定められた順位があります。まず配偶者は常に相続人となり、それに加えて第1順位の子、第2順位の親(直系尊属)、第3順位の兄弟姉妹という順番で相続権が回っていきます。

例えば、亡くなった方に配偶者と子がいるケースで子の一人が相続放棄をすると、その分は配偶者と残りの子で引き継ぐことになります。さらに子ども全員が相続放棄をした場合、相続権は次の順位である親へと移ります。親もすでに亡くなっている、あるいは放棄した場合は、その次の順位である兄弟姉妹へと権利が移っていきます。

ここで見落とされがちなのが、自分が相続放棄をすると、これまで相続人ではなかった親族に突然相続の権利(と負担)が回っていくという点です。例えば兄弟姉妹に思いがけず実家の管理責任が降りかかり、トラブルに発展するケースもあります。

そのため、相続放棄をする際は自分の判断だけで進めず、次に相続人となる親族にもあらかじめ伝えておくことが、後々のトラブルを防ぐうえで非常に重要です。

全員が相続放棄すると実家は最終的に国の所有になる

すべての相続人が相続放棄をした場合や、そもそも相続人が一人もいない場合、実家を含む遺産は最終的に国のもの(国庫に帰属)となります。ただし、放棄した瞬間に自動的に国の財産になるわけではなく、そこに至るまでには一定の手続きが必要です。

まず、相続人全員が放棄した場合でも、亡くなった方と特別な関係にあった人が財産を受け取れる可能性があります。例えば内縁の配偶者や、生前に介護をしていた人など(特別縁故者)は、家庭裁判所に申し立てを行うことで、財産を受け取れる場合があります。

また、実家が共有名義になっていた場合は少し扱いが異なります。相続の対象となるのは亡くなった方の持分のみで、相続人がいなければ、その持分は国ではなく他の共有者へ移ることになります。

そして、特別縁故者も共有者もいない場合は、家庭裁判所が選任した「相続財産清算人」が財産を管理・整理し、相続人がいないことを正式に確認したうえで、最終的に国へ引き継がれます。

ここで重要なのは、この一連の手続きには時間も費用もかかるという点です。「全員で放棄すれば、あとは勝手に国が処理してくれる」というほど単純ではありません。後述する「保存義務」の問題も関わってくるため、安易に全員で放棄を選ぶ前に、仕組みを正しく理解しておくことが大切です。

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実家を相続放棄するメリット・デメリット

実家の相続放棄を検討する際は、メリットだけでなくデメリットも正しく理解したうえで判断することが重要です。相続放棄は一度成立すると原則として撤回できないため、「放棄して後悔した」とならないよう、両面をしっかり把握しておきましょう。

ここでは実家を相続放棄するメリットとデメリットを、それぞれ4つずつ整理して解説します。

実家を相続放棄するメリットデメリット
  • 実家を相続放棄するメリット:固定資産税や維持管理費の負担を回避できる/老朽化や倒壊によるトラブルリスクを避けられる/将来の売却や処分の手間がなくなる/遺産分割協議に関わらずに済む
  • 実家を相続放棄するデメリット:実家以外の財産も相続できなくなる/相続放棄後も管理義務が残る場合がある/相続財産清算人の選任に手続きや費用がかかる/一度放棄すると原則として撤回できない

実家を相続放棄するメリット

使い道のない実家や、管理が難しい実家を抱えている場合、相続放棄には確かなメリットがあります。「所有することで発生する負担」から完全に解放されることが、相続放棄の最大の利点です。

具体的なメリットを4つの観点から見ていきましょう。

  • 固定資産税や維持管理費の負担を回避できる
  • 老朽化や倒壊によるトラブルリスクを避けられる
  • 将来の売却や処分の手間がなくなる
  • 遺産分割協議に関わらずに済む

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固定資産税や維持管理費の負担を回避できる

実家を相続すると、たとえ誰も住んでいなくても毎年固定資産税が発生します。さらに屋根や外壁の補修・草木の手入れ・防犯対策など、建物を維持するための費用と手間も継続的にかかります。こうした支出は年々積み重なり、長期的には大きな負担となります。相続放棄をすれば、これらの経済的負担から解放されます。

空き家を持っているだけ固定資産税がかかる

特に注意したいのが空き家の場合です。空き家は定期的に管理しなければ、あっという間に老朽化が進みます。放置して傷みがひどくなり、自治体から「特定空き家」に認定されて勧告を受けると、住宅用地の特例が外れて固定資産税が最大6倍に跳ね上がります。使わない実家を持ち続けることは、税負担と管理コストの両方を抱え込むことを意味します。

相続放棄はこうした負担を根本から回避できる方法です。ただし、相続放棄をしても一定の条件下では管理義務(保存義務)が残るケースがある点には注意が必要です(詳しくは後述します)。いずれにしても、使い道のない実家は早めに方針を決めて手放すことが、負担を最小化する鍵となります。

老朽化や倒壊によるトラブルリスクを避けられる

親が住んでいた実家を相続したものの、すでに本人は遠方に住んでいて管理ができない—こうしたケースでは、実家の老朽化が一気に進みやすくなります。

空き家は人の気配がなくなると劣化のスピードが加速します。ハクビシンなどの動物が侵入し、風通しがされないことで湿気がこもって建物が腐敗していきます。シロアリ被害も広がり、最悪の場合は倒壊にまで至ります。万が一建物が倒壊して隣家や通行人に被害を与えれば、所有者が損害賠償責任を負うリスクもあります。相続放棄をすれば、こうした倒壊・トラブルのリスクを根本から避けることができます。

害虫・害獣の発生

ちなみに、適切な管理をするかどうかで建物の状態は大きく変わります。フィリアコーポレーションへ相談に来られた方の中に、空き家期間は5年間あるものの週に一度、窓を開けて風通しをしているという方がいましたが、その物件は驚くほど状態が良好でした。逆に言えば、遠方で管理できない実家は、放置するほど危険な状態へと進んでいきます。

管理できないまま倒壊リスクを抱え続けるよりは、相続放棄や売却によって早めに手放すことが、トラブルを未然に防ぐ確実な方法といえます。

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将来の売却や処分の手間がなくなる

実家を相続すると、いつかは「売る」「貸す」「解体する」といった形で処分しなければなりません。しかし、その処分は思った以上に手間がかかるものです。相続放棄をすれば、こうした将来の売却・処分にまつわる一切の手間から解放されます。

実家の処分が難しくなる要因はさまざまです。例えば、時間が経つほど建物は老朽化し、買い手がつきにくくなります。また共有名義になっている場合は、売却に共有者全員の同意が必要となり、合意形成に多大な労力を要します。

さらに厄介なのは、将来のことは誰にも予測できないという点です。共有者の考えが変わったり、相続が連鎖して権利者が増えたり、建物の状態が想定以上に悪化したり——時間が経つほど不確定要素は増えていきます。「いつか処分すればいい」と先送りにしているうちに、処分そのものが困難になってしまうケースは少なくありません。

相続放棄は、こうした将来の不確実な負担を最初から背負わずに済む選択です。ただし、処分が難しそうな実家でも、専門の買取業者に相談すれば手放せる可能性があるため、放棄を決める前に一度、売却の見込みを確認しておくこともおすすめします。

遺産分割協議に関わらずに済む

相続が発生すると、相続人全員で「誰が何をどれだけ相続するか」を話し合う遺産分割協議を行う必要があります。この協議は相続人全員の合意が必要なため、意見が対立すると長期化し、大きな精神的負担となることがあります。

特に実家のような不動産が絡む場合、「誰が引き継ぐのか」「売却するのか残すのか」「管理は誰がするのか」をめぐって意見がまとまらず、親族間の関係がこじれてしまうケースも少なくありません。お金や不動産が関わると、それまで良好だった家族関係が悪化してしまうことも現実にあります。

相続放棄をすると、その人は最初から相続人ではなかったものとして扱われます。そのため、遺産分割協議に参加する必要がなくなり、面倒な話し合いやトラブルから距離を置くことができます。

「実家はいらないし、相続をめぐる揉め事にも関わりたくない」という方にとって、相続放棄は煩わしい協議から解放される手段にもなります。

ただし、自分が放棄することで他の相続人の負担が増える可能性もあるため、放棄を決める際は他の相続人に事前に伝えておくなど、一定の配慮をしておくと安心です。

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実家を相続放棄するデメリット

相続放棄にはメリットがある一方で、見落としてはいけないデメリットも存在します。「実家がいらないから」という理由だけで安易に放棄を選ぶと、後から「こんなはずではなかった」と後悔することにもなりかねません。

相続放棄を決断する前に、以下の4つのデメリットを必ず確認しておきましょう。

  • 実家以外の財産も相続できなくなる
  • 相続放棄後も管理義務が残る場合がある
  • 相続財産清算人の選任に手続きや費用がかかる
  • 一度放棄すると原則として撤回できない

実家以外の財産も相続できなくなる

相続放棄の最大のデメリットは、「実家だけを放棄する」ことはできず、すべての財産を放棄しなければならないという点です。

相続放棄をすると、その人は法律上「最初から相続人ではなかった」ものとして扱われます。つまり、不要な実家を手放せる代わりに、預貯金・株式・現金といったプラスの財産も一切受け取れなくなります。「マイナスの不動産だけ放棄して、プラスの財産は受け取る」という都合のよい選択はできないのです。

ここで重要なのが、放棄を決める前に「その実家が本当に処分できないのか」を確認することです。売却が難しいと思われる実家でも、専門の買取業者に相談すれば手放せるケースは少なくありません。

仮に費用を払ってでも不動産を専門業者に引き取ってもらえるなら、一度しっかり相続したうえで実家だけを処分し、預貯金などのプラスの財産は手元に残すという選択が可能になります。一方で相続放棄を選べば、手元に残るものはゼロです。

「売れない実家を抱えるくらいなら、全部放棄したほうが楽だ」と即断する前に、プラスの財産と不動産の処分コストを天秤にかけて計算することが大切です。専門家や買取業者に相談したうえで判断することをおすすめします。

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相続放棄後も管理義務が残る場合がある

「相続放棄をすれば、実家に関する責任はすべてなくなる」と考えている方は多いですが、これは正確ではありません確かに原則として、放棄をすれば所有権や管理責任からは解放されます。しかし、例外的に「保存義務」が残るケースがあるのです。

ここで鍵となるのが、2023年4月の民法改正で明確化された「現に占有している」かどうかという基準です。放棄した時点でその実家を実際に占有していた相続人は、次に管理する人が決まるまでの間、建物が傷んだり倒壊したりしないよう、必要最低限の管理(保存義務)を続けなければなりません。

「現に占有している」とは、例えばその家に住み続けている、鍵を持って日常的に出入りしているといった状態を指します。具体的には、亡くなった母と同居していなくても、介護のために頻繁に実家へ通って鍵を管理していたような場合、占有しているとみなされる可能性があります。

逆に、まったく実家に立ち入っておらず、管理にも一切関与していない相続人であれば、相続放棄が認められた時点で基本的に保存義務は生じません。

つまり、放棄後に責任が残るかどうかは「その実家とどう関わっていたか」によって変わります。「放棄すればすべて終わり」と思い込むと、思わぬトラブルに発展しかねないため、自分が占有者に当たるかどうかを正しく把握しておくことが重要です。

⚠相続放棄後も免れない管理義務を怠った場合、空き家放置によって生じる具体的なリスクや罰則について解説しています。

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相続財産清算人の選任に手続きや費用がかかる

相続人全員が実家を相続放棄した場合、その実家は最終的に国のものになります。しかし、「放棄したら自動的に国が引き取ってくれる」わけではない点には注意が必要です。国庫に帰属するまでには所定の手続きが必要で、放置したまま完結することはありません。

この手続きの中心となるのが「相続財産清算人」の選任です。相続人がいなくなった財産を管理・整理する人で、家庭裁判所への申し立てによって選ばれます。選任された清算人が、遺産の調査・債務の清算・財産の処分などを進め、最終的に国へ引き継ぐまでを担当します。

問題は、この申し立てに手間と費用がかかることです。申し立てには戸籍などの必要書類の収集や申立書の作成、裁判所とのやり取りが必要になります。さらに、清算人の報酬などに充てるための「予納金」を裁判所に納めなければならず、ケースによっては数十万円から100万円程度の負担が生じることもあります。

つまり、相続放棄をしても、誰かがこの手続きと費用を負担しなければ実家の問題は片付かないということです。「全員で放棄すれば終わり」と単純に考えていると、思わぬ手続き負担に直面することがあるため、放棄を選ぶ前にこうした仕組みも理解しておくことが大切です。

一度放棄すると原則として撤回できない

相続放棄で特に注意すべきなのが、一度家庭裁判所で受理されると、原則として撤回できないという点です。「やはり実家を相続したい」と後から思っても、取り消すことは認められません。

相続放棄は相続人にとって重大な決断であり、他の相続人や次順位の親族にも影響が及びます。そのため法律上、安易な撤回ができないよう厳格に扱われています。

ここで起こりやすいのが、情報不足のまま放棄してしまい、後で後悔するケースです。例えば、放棄した後になって「実家に思っていた以上の価値があった」「専門業者に相談すれば売却できた」「想定外のプラスの財産があった」と判明しても、すでに放棄が成立していれば取り返しがつきません。

だからこそ、相続放棄は急いで結論を出さないことが大切です。相続放棄には「相続を知った日から3ヶ月以内」という期限がありますが、その期間内であっても、実家の資産価値・処分の可能性・他の財産の状況をしっかり調べたうえで判断すべきです。

「売れないと思っていた実家が、実は買取可能だった」というケースは少なくありません。放棄を決断する前に、専門家や買取業者に一度相談しておくことで、後悔のない判断につながります。

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実家を相続放棄するか判断するポイント

実家を相続放棄すべきかどうかは、状況によって答えが変わります。「いらないから放棄」と短絡的に決めるのではなく、いくつかの観点から総合的に判断することが、後悔しないためのポイントです。

特に相続放棄は一度受理されると撤回できないため、慎重な見極めが欠かせません。以下の4つのポイントを確認したうえで判断しましょう。

相続放棄するか判断するポイント
  • 実家に資産価値があるか
  • 実家以外に多額の借金があるか
  • 将来実家に住む可能性はあるか
  • 実家の相続でトラブルが起こりそうか

実家に資産価値があるか

相続放棄を判断する第一の基準が、実家にどれだけの資産価値があるかです。価値のある実家まで放棄してしまうのは大きな損失ですが、逆に売却の見込みがなく維持費だけがかかる実家であれば、放棄が合理的な選択になります。

まずは実家のおおよその市場価値を調べてみましょう。最近では「市区町村名+坪単価」で検索するだけで、その地域のおおよその相場が把握できます。さらにSUUMO・LIFULLHOME’S・アットホームなどのポータルサイトで、近隣で現在売り出されている物件の価格を確認すれば、より具体的なイメージがつかめます。

その上で、所有し続けた場合のコストも考慮します。固定資産税・火災保険料・修繕費・草刈りや除雪などの維持管理費は、住んでいなくても所有している限りかかり続けます。売れる価値」と「持ち続けるコスト」を天秤にかけることが、判断の軸になります。

ただし注意したいのは、自分で「価値がない」と判断するのは早いということです。再建築不可や老朽化した物件でも、専門の買取業者であれば値段がつくケースは少なくありません。「売れない」と思い込んで放棄する前に、一度専門業者に査定を依頼し、本当に処分できないのかを確認しておくことをおすすめします。

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実家以外に多額の借金があるか

相続で引き継ぐのは、実家や預貯金といったプラスの財産だけではありません。クレジットカードの残債・ローン・未払いの医療費や税金など、マイナスの財産(負債)もすべて引き継ぐことになります。亡くなった方に多額の借金があった場合、相続するとその返済義務まで背負うことになります。

ここで重要なのが、実家の価値と借金などの負債を合わせて、トータルでプラスかマイナスかを判断することです。仮に実家にある程度の価値があっても、それを上回る借金があれば、相続することで結果的に損をしてしまいます。このようなケースでは、相続放棄を選んだほうが合理的です。

判断のためには、まず通帳・請求書・契約書・借入明細などを早めに確認し、亡くなった方の財産と負債の全体像を把握することが欠かせません。相続放棄には「相続を知った日から3ヶ月以内」という期限があるため、できるだけ早く調査に取りかかりましょう。

なお、ここで意識しておきたいのは、相続放棄をすると借金だけでなくプラスの財産もすべて手放すことになるという点です。借金の有無を確認すると同時に、実家が処分可能な資産なのかどうかも見極めることが、損のない判断につながります。

将来実家に住む可能性はあるか

相続放棄を判断するうえで意外と見落とされがちなのが、「将来、自分や家族がその実家に住む可能性はないか」という視点です。

例えば「老後は実家に戻って暮らすことも考えている」「今は遠方にいる子どもが、いずれUターンで戻ってくるかもしれない」といった可能性が少しでもあるなら、相続放棄は慎重に判断すべきです。相続放棄は一度成立すると撤回できないため、後から「やはり住みたい」と思っても実家を取り戻すことはできません。

ここで考慮しておきたいのが、近年の住宅事情です。不動産価格や建築資材の高騰により、新築を購入するハードルは年々上がっています。こうした状況では、すでにある実家をリフォームして活用するという選択肢が、以前より現実的で価値のあるものになっています。「古い実家だから」と切り捨てるのではなく、住まいの選択肢の一つとして捉え直す視点も大切です。

一方で、誰も住む予定がなく、ただ空き家として維持し続けるしかない場合は、管理の手間と費用だけが残り続けます。

将来のライフプランや家族構成を踏まえ、「活用する可能性」と「負担だけが残る可能性」のどちらが現実的かを見極めたうえで判断しましょう。

実家を残したいと思う方は多いようです。撤回できないからこそ、後悔のないよう慎重に判断することが大切です。

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実家の相続でトラブルが起こりそうか

実家の相続では、「揉めそうかどうか」も放棄を判断する一つの材料になります。相続をめぐる人間関係のトラブルは、想像以上に精神的・時間的な負担を生むためです。

特に以下のような状況では、相続後にトラブルが起こりやすくなります。

  • 共有者・相続人が多い:人数が多いほど意見がまとまりにくく、売却や処分に必要な全員の合意を得るのが困難になります
  • 連絡が取れない相続人がいる:行方不明・疎遠などで連絡がつかない相続人がいると、手続きが前に進まなくなります
  • 相続人の配偶者など、周囲に主張の強い人がいる:相続人本人だけでなく、その妻や夫といったパートナーが口を出してくることで、話し合いが複雑化するケースもあります

こうした事情が絡む実家は、相続したことで自分が当事者として面倒な調整やトラブルに巻き込まれるリスクがあります。資産価値の有無だけでなく、「関わることでどれだけの労力やストレスがかかるか」も含めて判断することが大切です。

ただし、相続放棄をすると自分の権利・負担は次順位の相続人へ移るため、放棄が新たなトラブルの火種になることもあります。トラブルが予想される場合こそ、自分だけで判断せず、弁護士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

♦共有者と長期間連絡が取れず放置されていた実家でも、ご自身の共有持分のみを売却してトラブルを解決した実績をご覧ください。

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実家を相続放棄する流れ

実家を相続放棄するには、家庭裁判所で所定の手続きを行う必要があります。最も注意すべきは、相続の開始を知ってから原則3ヶ月以内に手続きを完了させなければならないという点です。この期間を過ぎると、原則として相続放棄は認められなくなります。

相続放棄期限

実家を相続放棄する具体的な流れは以下の5ステップです。

  1. 遺言書の有無を確認する:まず遺言書があるかどうかを確認します
  2. 遺産と相続人を明らかにする:プラスの財産・マイナスの財産の全体像と、誰が相続人になるかを把握します
  3. 家庭裁判所へ相続放棄の申述書を提出する:戸籍謄本・住民票・相続放棄申述書などの必要書類を揃えて申述します
  4. 照会書に回答して返送する:家庭裁判所から届く照会書に必要事項を記入し、返送します
  5. 相続放棄申述受理通知書を受領する:申述が受理されると通知書が届き、手続き完了です

流れ自体はシンプルですが、いくつか重要な注意点があります。

まず、相続放棄を考えている段階で実家の遺品を処分したり、亡くなった方の預金を引き出したりすると、「単純承認」とみなされる恐れがあります。単純承認とは、相続を受け入れたと法律上判断される状態で、一度該当すると相続放棄はできなくなります。

また、提出書類に不備があると家庭裁判所から呼び出されることもあります。3ヶ月という期限は意外と短いため、迷っている時間はあまりありません。確実に手続きを進めるためにも、書類は慎重に準備し、不安があれば早めに専門家へ相談することをおすすめします。

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実家を相続放棄する際の注意点

実家の相続放棄を確実に成立させ、後々のトラブルを防ぐためには、事前に知っておくべき注意点があります。これらを見落とすと、「放棄できなかった」「親族と揉めてしまった」という事態にもなりかねません。

特に重要な3つの注意点を確認しておきましょう。

  • 相続放棄は3ヶ月以内に手続きする
  • 相続放棄前に実家を処分しない
  • 他の相続人に相続放棄を伝える

相続放棄は3ヶ月以内に手続きする

相続放棄で最も重要なのが期限を守ることです。民法では「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に手続きをするよう定められています。この検討のための期間を「熟慮期間」と呼びます。

ポイントは、起算日が「亡くなった日」ではなく「相続が始まったことを自分が知った日」である点です。知ったきっかけによって起算日は変わります。例えば、葬儀の連絡を受けた日、遺産分割協議書が届いて内容を把握した日、あるいは故人宛ての固定資産税の請求書を認識した日などが、それぞれ起算日となり得ます(いずれも被相続人の死亡を知らなかったことが前提です)。

この3ヶ月という期限を過ぎてしまうと、原則として相続放棄はできなくなり、自動的に「単純承認(すべてを相続する)」として扱われます。

そして単純承認になると、引き継ぐのは実家だけではありません。故人の借金やローン・滞納していた税金や保険料・賃貸契約上の債務など、マイナスの財産まですべて背負うことになります。後から多額の負債が判明しても、もう放棄はできません。

3ヶ月は、財産調査や書類準備を考えると決して長い期間ではありません。放棄を少しでも検討しているなら、まず「相続開始を知った日」を明確にし、できるだけ早く動き出すことが肝心です。

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相続放棄前に実家を処分しない

相続放棄を考えているなら、手続きが完了する前に実家やその中の財産に手をつけてはいけませんこれは相続放棄において最も注意すべきポイントのひとつです。

なぜなら、相続財産を処分してしまうと「法定単純承認」が成立し、相続を受け入れたとみなされて、相続放棄ができなくなるからです。法定単純承認とは、相続人が一定の行為をした場合に「相続する意思があった」と法律上自動的に判断される仕組みです。いったんこれに該当すると、プラスの財産だけでなく借金などのマイナスの財産もすべて引き継がざるを得なくなります。

具体的には、以下のような行為が「処分」とみなされる可能性があります。

  • 実家を売却したり、解体したりする
  • 故人の預貯金を引き出して使う
  • 価値のある遺品(貴金属・家財など)を持ち帰る・売却する
  • 賃貸に出すなど実家を活用する

「まだ放棄するか決めていないから、とりあえず片付けておこう」という軽い気持ちの行動が、思わぬ形で法定単純承認を成立させてしまうことがあります。特に注意したいのが、借金があるとは知らずに財産を処分してしまい、後から多額の負債まで背負うことになるケースです。

相続放棄を少しでも検討しているなら、手続きが正式に受理されるまでは実家や遺産に手をつけないことを徹底しましょう。判断に迷う行為がある場合は、事前に専門家へ確認することをおすすめします。

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他の相続人に相続放棄を伝える

相続放棄は一人ひとりが個別に行う手続きですが、その影響は他の相続人にも及びます。だからこそ、放棄したことは関係者に伝えておくことが大切です。

なぜ周知が必要なのか。理由は、相続放棄をすると、その人が引き継ぐはずだった権利と負担が、他の相続人や次順位の親族に移るからです。

例えば3人兄弟のうち1人が相続放棄をすると、残り2人の相続分が増えます。それが実家のような不動産であれば、名義変更の手続きや固定資産税・維持費の負担が他の2人に重くのしかかります。さらに兄弟全員が放棄した場合は、これまで相続人ではなかった親や兄弟姉妹といった次順位の親族に、突然相続の権利と負担が回っていくことになります。

ここで起こりやすいのが、「自分が放棄したことを誰にも伝えていなかったために、後でトラブルになる」というケースです。次に相続人となった親族が、自分が相続人になったことを知らないまま3ヶ月の期限を過ぎてしまい、望まない相続を背負わされてしまう——suchな事態も実際に起こり得ます。

こうしたトラブルを防ぐため、相続放棄が受理されたら、他の相続人や次順位の親族、さらに把握している債権者などの関係者に、速やかにその旨を伝えておくことが重要です。一言の連絡が、親族間の無用な争いを防ぐことにつながります。

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実家を相続放棄した後の保存義務

「相続放棄をすれば、実家に関する責任からは完全に解放される」と考えている方は少なくありません。しかし実際には、放棄後も一定の条件下で「保存義務」を負うケースがあるため注意が必要です。

この保存義務は、2023年4月の民法改正によってルールが見直され、これまでより内容が明確になりました。誰が・いつまで・どのような義務を負うのかを正しく理解しておくことが、放棄後のトラブルを防ぐ鍵となります。

  • 保存義務を負う条件
  • 保存義務を負う期間
  • 保存義務を免れる方法

保存義務を負う条件

相続放棄をした後に保存義務を負うかどうかは、2023年4月施行の民法改正(民法940条)で「現に占有しているかどうか」という基準に整理されました。難しく聞こえますが、ポイントはシンプルです。

保存義務が発生するのは、以下の3つの条件をすべて満たす場合です。

  1. その人が相続人であること
  2. 実家が相続財産であること
  3. 相続放棄をした時点で、その実家を実際に占有していたこと

最も重要なのが3つ目です。わかりやすく言えば、放棄した時点でその家に住んでいたり、日常的に出入りして使っていたかということです。

【保存義務が発生する例】
母親と同居していた長男が、母親名義の自宅を相続放棄するケース。長男はその家に住んでいた(=占有していた)ため、放棄しても保存義務を負います。

【保存義務が発生しない例】
遠方に住んでいて、実家にはほとんど立ち入らず管理にも関わっていなかった子どもが相続放棄するケース。占有していないため、放棄が認められた時点で保存義務は生じません。

なお、保存義務を負う場合でも、求められるのは「自分の財産に対するのと同じ程度の注意」で足ります。プロのような高度な管理までは要求されません。とはいえ、他の相続人や相続財産清算人にその実家を引き渡すまでは、傷んだり危険な状態にならないよう最低限の管理を続ける必要があります。

この「占有していなければ義務を負わない」というルールは、改正で明確になった部分です。改正前は遠方の実家でも管理義務が残るとされていましたが、改正により関わっていない人にまで過度な負担が及ばないよう整理されたのです。

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保存義務を負う期間

相続放棄後の保存義務は、永遠に続くものではありません。民法940条では、保存義務を負うのは「相続人または相続財産清算人に、その財産を引き渡すまでの間」と定められています。つまり、実家を引き継ぐ人に確実に引き渡せば、その時点で義務から解放されます。

具体的には、以下のいずれかのタイミングで保存義務は終了します。

  • 他の相続人(放棄によって新たに相続人となった人を含む)に実家を引き渡した時点
  • 相続財産清算人に実家を引き渡した時点

ポイントは、「引き渡す相手が存在する」ことが前提だという点です。次に相続人となる人がいて、その人に引き渡せれば問題なく義務は終わります。

ただし実務上は、引き渡す相手が見つからない・受け取りを拒まれというケースもあります。例えば、次順位の相続人も全員放棄していて引き継ぐ人がいない場合や、相手が受領を拒否した場合です。こうしたときは、法律上「供託」という手続きによって引き渡し義務を果たし、保存義務を終了させる方法も認められています(金銭以外の財産で供託に適さない場合は、裁判所の許可を得て競売にかけ、その代金を供託する方法もあります)。

いずれにしても、「放棄したのに、いつまで管理しなければならないのか」と不安を抱える必要はありません。適切に引き渡し、あるいは相続財産清算人の選任といった手続きを踏めば、保存義務からは解放されます。手続きの進め方に不安がある場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

詳細はこちら:【法務省】財産管理制度の見直し(相続の放棄をした者の義務)

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保存義務を免れる方法

相続放棄をした時点で実家を占有していて保存義務を負ってしまった場合でも、その義務から解放される方法はあります。「放棄したのに、ずっと実家を管理し続けなければならないのか」と心配する必要はありません。

保存義務を免れるには、実家を「次に管理する人」に引き渡すことが基本となります。引き渡す相手には主に2つのパターンがあります。

  • 他の相続人に保存義務を引き継ぐ
  • 相続財産清算人を選任する

他の相続人に保存義務を引き継ぐ

保存義務を免れる最もシンプルな方法が、次に相続人となる人に実家を引き継いでもらうことです。

自分が相続放棄をすると、相続権は次の順位の相続人へと移ります。その人が実家を相続して管理を引き受けてくれれば、実家を引き渡した時点であなたの保存義務は終了します。これが最も自然でスムーズな解決パターンです。

ただし注意したいのが、次順位の相続人も相続放棄してしまうケースです。例えば、自分が放棄したあと、次に相続人となった親族も「いらない」と放棄した場合、引き継ぐ相手がいなくなってしまいます。

この場合、実家を占有していたあなたの保存義務は、そのまま残り続けます。「自分は放棄したのだから関係ない」とはならず、引き継ぐ相手が現れるまで管理を続けなければならないのです。

このように、関係者全員が次々と相続放棄をすると、最後まで占有していた人が義務を抱え込んでしまう事態が起こり得ます。こうしたケースで義務から解放されるには、次に説明する「相続財産清算人の選任」という手続きが必要になります。

相続財産清算人を選任する

次順位の相続人もいない、あるいは全員が放棄してしまった場合、占有していた人の保存義務はそのままでは終わりません。このようなケースで義務から解放される方法が、家庭裁判所に「相続財産清算人」の選任を申し立てることです。

相続財産清算人とは、相続人がいなくなった財産を管理・整理する人のことです。亡くなった方の借金などを清算し、残った財産を最終的に国へ引き継ぐ役割を担います。実家であれば、まず売却などの処分を検討し、それが難しければ国庫へ帰属させる手続きを進めます。

この相続財産清算人に実家を引き渡せば、占有していた相続放棄者であっても、保存義務から解放されます。

ただし、この手続きには手間と費用がかかる点に注意が必要です。申し立てには戸籍謄本など多くの書類が必要で、さらに清算人の報酬などに充てる「予納金」として、ケースによって20万円〜100万円程度を裁判所に納める必要があります。

なお、申し立ての際に清算人の候補者を立てることもできますが、実際には弁護士や司法書士などの専門家が選ばれるのが一般的です。手続きが複雑なため相続財産清算人の選任を検討する場合は、最初から専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

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相続放棄以外で実家を手放す方法

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ここまで相続放棄について解説してきましたが、実家を手放す方法は相続放棄だけではありませんむしろ相続放棄はすべての財産を失う・手続きに期限があるなど制約が大きいため、まずは他の方法で実家を処分できないかを検討する価値があります。

特に「実家はいらないが、預貯金などのプラスの財産は受け取りたい」という方は、一度相続したうえで実家だけを手放す方法を選ぶことで、損のない形で問題を解決できます。代表的な3つの方法を紹介します。

  • 専門の買取業者に売却する
  • 自治体やNPO団体に寄付する
  • 相続土地国庫帰属制度を利用する

専門の買取業者に売却する

「実家を相続したものの、誰も住まないし売れそうにない」—そう思って相続放棄を検討する方は少なくありません。しかし、売れないと思っていた実家でも、専門の買取業者なら手放せるケースは数多くあります。

フィリアコーポレーションへも、こうしたご相談が日々多く寄せられます。実際に、複数の不動産会社に相談しても売却の目処が立たず、「売り先に困る実家を相続するくらいなら、現金などの財産も含めて相続放棄しよう」と考えていた方がいました。

しかし、ここで立ち止まって考えていただきたいことがあります。相続放棄をすると、実家だけでなく預貯金などのプラスの財産もすべて失うことになります。一方で、もし実家を専門業者に処分できるのであれば、一度しっかり相続したうえで実家だけを手放し、プラスの財産は手元に残すことができます。

仮に処分に多少の費用がかかったとしても、相続放棄をして手元にゼロ円しか残らないより、財産を相続できる分だけ有利になるケースは少なくありません。「相続放棄か、相続して処分か」は、必ず手元に残る金額を計算したうえで判断することが大切です。

フィリアコーポレーションは、再建築不可・長屋連棟・共有持分など、他の不動産会社に「売れない」と言われた物件を専門に買い取っています。「もう手放せない」と諦める前に、まずは一度ご相談ください。査定・相談は無料です。

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💡実家を放棄せずに売却したい方へ、空き家を少しでも高く売るための具体的な手順と税金対策のコツをプロが指南します。

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自治体やNPO団体に寄付する

「使わない実家なら、寄付して有効活用してもらえば」と考える方は多いですが、実際に寄付を受け入れてくれる自治体やNPO団体はごく限られているのが現実です。

受け入れてもらえない主な理由は以下の通りです。

  • 老朽化していると修繕費用の負担が大きい
  • 解体・登記・税金など、所有することで責任や費用が発生する
  • 受け入れた側に管理義務が生じ、リスクを背負うことになる

一方で、寄付の受け入れが検討されるのは、公共施設や地域活性化に転用できる好立地である、活動拠点を探しているNPOや福祉法人がある、自治体の空き家活用事業の対象になっている、といった限られた条件を満たす場合に限られます。

つまり、「いらないからもらってほしい」という理由だけで寄付を受けてもらえるケースはほとんどありません。寄付を検討する場合は、事前に自治体や地域団体へ相談し、使途・条件・契約形態を確認する必要があります。

現実的な視点で言えば、寄付の受け入れ先を探すよりも、売れる実家はまず売却して現金化するほうが確実です。「寄付しかない」と思い込む前に、専門の買取業者に売却できないかを先に確認することをおすすめします。

相続土地国庫帰属制度を利用する

相続土地国庫帰属制度とは、相続した不要な土地を、国に引き取ってもらえる制度です。2023年4月から始まった比較的新しい制度です。

これまでは、いらない土地や家であっても、いったん相続したら誰かが持ち続けるしかありませんでした。しかしこの制度ができたことで、「不要な土地を国に手放す」という選択肢が生まれました。相続放棄と違って、預貯金などの財産は受け取りつつ、不要な土地だけを手放せる点が大きなメリットです。

ただし、利用する前に知っておくべき注意点があります。

  • 手続きに費用と時間がかかる:審査があり、すぐに引き取ってもらえるわけではありません
  • 対象は「土地のみ」:建物があると利用できないため、実家を解体して更地にする必要があり、その解体費用は自己負担です
  • 国に「負担金」を納める必要がある:引き取ってもらう代わりに、一定の費用を支払わなければなりません

特に実家の場合、建物の解体費用と国への負担金がかかるため、トータルで見ると相応の出費になります。「タダで国が引き取ってくれる」わけではない点に注意が必要です。

実家を手放す方法としては、まず解体せずそのまま買い取ってもらえないかを専門業者に相談し、それが難しい場合にこの制度を検討するという順番がおすすめです。

💡国に土地を引き取ってもらう国庫帰属制度の利用条件や、相続人がいない場合の具体的な処分手続きについてまとめています。

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実家の相続放棄に関するよくある質問

相続放棄したら実家はどうなりますか?

相続放棄をしても実家がなくなるわけではなく、その権利は他の人へと移っていきます。

まず、放棄した人の相続分は他の相続人に引き継がれます。例えば配偶者と子がいるケースで子の一人が放棄すると、その分は配偶者と残りの子で引き継ぎます。そして子ども全員が放棄した場合は、相続権が次の順位である親へ、親もいなければさらに兄弟姉妹へと移っていきます。

問題は、相続人が誰もいなくなった場合です。次順位の親族も含めて全員が相続放棄をした、あるいはそもそも相続人がいないというケースでは、実家は最終的に国のもの(国庫に帰属)になります。

ただし、放棄したら自動的に国が引き取ってくれるわけではありません。国庫に帰属するまでには、家庭裁判所に「相続財産清算人」を選任してもらい、清算手続きを進める必要があります。この手続きには費用と時間がかかります。

また注意点として、放棄した時点で実家を占有していた人には、次の管理者へ引き渡すまでの間「保存義務」が残る場合があります。「放棄すればすべて終わり」とは限らないため、放棄後の流れも理解しておくことが大切です。

相続放棄した実家の解体費用は誰が払いますか?

結論から言うと、相続放棄が受理されており、その実家を占有していなければ、解体費用を負担しなくてよい可能性が高いです。

判断のポイントは、民法940条で定められた「現に占有しているか」という基準です。以下のような状態であれば、占有していたとはいえず、解体費用を当然に負担する立場にはなりません。

  • 実家を出て長年別居していた
  • 鍵を持っておらず、出入りや管理をしていない
  • 相続開始後に家財を処分していない
  • 定期的な管理をしていない

遠方に住んでいて実家の管理に関わっていなかった人が、「ただの親族だから」という理由だけで解体費用を負担させられることは、実務上ありません。

ここで注意したいのが、自治体から連絡が来ても、慌てて自分で解体業者と契約しないことです。相続放棄をした人が解体を契約してしまうと、費用を負担する立場になってしまうだけでなく、「相続財産に関与した」とみなされて相続放棄自体が無効になるリスクもあります。

行政から連絡が来た場合は、まず「自分が占有者に当たるのか」「相続放棄が正しく受理されているか」を確認することが先決です。費用を払う前に、自分の立場を整理することが重要です。判断に迷う場合は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

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相続放棄した実家が倒壊した場合の責任は誰にありますか?

相続放棄した実家が倒壊して他人に被害を与えた場合、責任を負うかどうかは「放棄した時点でその実家を占有していたか」によって変わります。

民法940条により、相続放棄をした人が保存義務を負うのは、放棄した時点でその実家を現に占有していた場合に限られます。つまり、実家に住んでいた・鍵を持って管理していたような人は、次の管理者へ引き渡すまでの間、建物が傷んだり倒壊したりしないよう保存する義務があり、これを怠って倒壊させ被害を与えれば責任を問われる可能性があります。

一方で、遠方に住んでいて実家にまったく関わっていなかった人は、占有していたとはいえないため、放棄が受理された時点で保存義務はなく、倒壊しても基本的に責任を負いません。

ただし注意が必要なのは、相続人全員が放棄して引き継ぐ人がいない場合です。占有していた人の保存義務は、次の管理者(他の相続人や相続財産清算人)に引き渡すまで続きます。引き渡す相手がいないまま放置して倒壊させれば、責任を問われるおそれがあります。

こうしたリスクを避けるためにも、占有していた実家を放棄した場合は、早めに相続財産清算人の選任などの手続きを進め、管理責任を正式に手放しておくことが重要です。

実家を相続放棄した後はいつまで住めますか?

相続放棄をすると、その人は「最初から相続人ではなかった」ものとして扱われ、原則として実家に住む権利を失います。放棄後も住み続けたり自分のものとして使ったりすると、「相続を承認した」とみなされ相続放棄が無効になるおそれがあるため注意が必要です。

ただし例外が「配偶者」のケースです。亡くなった方の配偶者が、相続開始時にその実家(被相続人名義の建物)に無償で住んでいた場合配偶者短期居住権」が認められます。この権利は配偶者が相続放棄をしても消滅しないため、放棄後も一定期間は住み続けられます。期間は最低でも相続開始から6ヶ月間は保障されます。

つまり、配偶者以外は放棄後に住めなくなる一方、配偶者は短期居住権によって当面の住まいが確保されるということです。住み続けたい希望がある場合は、相続放棄ではなく実家を相続して活用する方向も検討することをおすすめします。

当コンテンツの運営、執筆は株式会社フィリアコーポレーションが行っています。 詳細は、コンテンツ制作ポリシープライバシーポリシーを参照ください。

監修者
越川直之

越川直之 (宅地建物取引士 / 空き家相談士)

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訳アリ不動産1,000件以上の相談実績を持つ、空き家・再建築不可・長屋・共有持分の専門家。株式会社フィリアコーポレーション代表取締役。現場経験に基づき、訳アリ不動産売却の正しい知識を監修しています。

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